カラダは究極の資本であり、投資先である。そう断言する堀江貴文氏が、最先端の医療と美容情報を惜しげもなく伝授する本連載。第31回は「予防医療」。堀江氏が「防げる病気は防ぎたい」との思いで有志と2016年に立ち上げた予防医療普及協会。協会の顧問でつくば消化器・内視鏡クリニック院長である医師、鈴木英雄先生と活動のなかで実感した課題や今後の取り組みについて語り合った。■連載「金を使うならカラダに使え!」とは……
エセ科学は好きなのに内視鏡やワクチンは嫌う
堀江貴文(以下堀江) 先日、僕と予防医療普及協会で『金を使うならカラダに使え。』という書籍を出版したのですが、予防医療普及協会は、2016年9月に医師、経営者、社会起業家、クリエイターなどの有志により発足しました。僕は理事として、鈴木先生は顧問として関わってくださり、もうすぐ8年になります。予防医療の正しい知識の普及のため、医師や専門家に取材をしたりセミナーやイベントを行ったり、さまざまな活動をしています。
鈴木英雄(以下鈴木) 私たちの活動のきっかけは「防げるがんがある」ことの啓発でした。細菌とウイルスが原因のがんなら、それらに感染しなければ、ほぼがんにはなりません。例えば胃がんの99%にピロリ菌が関係していますし、子宮頸がんはHPVというウイルスが原因。協会設立当時、こういう事実が、一般の方にはまだまだ知られていませんでした。
堀江 僕も胃がんの原因がピロリ菌の感染とは知らなくて。医師にとっては常識で、しかも重要な情報が世間にはほとんど広がっていないことに驚きました。知ってさえいれば防げることがある。それを広めようと8年近く活動を続けてきたのですが、今も“課題”しかありません。
ずっと強く感じているのは、そもそも皆さんは、予防医療にあまり興味がないということ。そのくせ、エセ科学が異様に好きな人が多い。「野菜を食べて健康になる」ことは好きなのに、「胃がんの検診で胃カメラを飲む」とか「ワクチン接種する」ことを嫌う人がたくさんいる。
僕にはその感覚がわからないから、不思議です。赤ちゃんの頃からワクチン接種とかで予防医療が行われているのに、大人になって自由になった途端にやらなくなるのも不思議。予防医療はある程度強制でないと、広がらないのかもしれない。鈴木先生はどう思われますか?
鈴木 僕はメディアの責任もけっこうあると思っています。医師からすると明らかに常識から外れていることや科学的でないことを、大々的に伝えたりする。それに対して間違いだと発言しても、まともすぎて面白くないのか取り上げてくれない。予防医療普及協会は、我々医師がメディアに対して声を上げ、間違った情報を修正する場でもあるんです。
日本人は予防医療に興味がないんだと思う
堀江 先日、知人のアラフォー女性が、「初めて健康診断でバリウムを飲んだ」と言っていて。いまだにバリウム? アラフォーで初めて胃の検診? と驚きました。世の中の平均はそんなものなんだ、と愕然としたというか。個人の予防意識が高まれば予防医療も変わるという考えもあるけど、人間の意識ってそうそう変わらないんですよ。
例えば糖尿病とか歯周病みたいな、痛みがないまま進行していく病はサイレントキラーで、誰も早期に病院や検査に行かないんです。とはいえ先生、ピロリ菌が胃がんの原因という認知がだいぶ広まったおかげで、胃がん患者は確実に減っているんですよね?
鈴木 そうです。胃がんの死亡者数は過去30年にわたり、毎年5万人台だったのですが、ピロリ菌の除菌が保険対応になり、胃がんも早期で発見されるようになったことで、最近は4万5千人を下回っています。国の予想をはるかに上回るスピードです。若年層はそもそもピロリ菌保菌者が少ないので、20〜30年後には胃がん患者がぐっと減るでしょう。その一方で大腸がんとか糖尿病は、いまだに増えています。
堀江 大腸がんも糖尿病もサイレントキラーですね。症状が出てから病院に行くのではなく、予防せざるを得ない状況にどう持っていくか、がやはり課題ですね。
鈴木 そうですね。予防医療に興味のない人にどうやってリーチしていくか、予防医療普及協会が注力しているところでもあります。
堀江 予防意識が変わらないなら、やり方はふたつあると思います。北風と太陽とか、アメとムチのような「懲罰」と「インセンティブ」の“両にらみ”。検査に行かないことに対しては保険料のペナルティ、ちゃんと予防した人はお得になるインセンティブを与えるとか。それをどう設計して社会に実装していくか。ムチのほうは政府が動かないといけないですね。
鈴木 韓国では、従業員に定期検査を受けさせない会社にはペナルティが課せられると聞いています。
堀江 日本にも、会社が従業員に検査を受けさせる仕組みはありますが、問題なのは自営業、フリーター、退職後の人、主婦とか、会社で働いていない人たち。そうした人たちも、能動的に検診に行くようになる仕組みですよね。正攻法では絶対に無理だから。「検診を受けたほうがいいんだよ」と言ったところで、まったく響かない。だから僕たちは、この2024年秋に「YOBO万博」というイベントを開催します!
鈴木 協会では、参加者がその場で簡単な検査を受けられる小規模なイベントは前からやっていましたし、コロナ禍も明けたし、仲間も増えた。いいタイミングですよね。
堀江 会場は有明の東京ビッグサイトを押さえています。本当に健康にいいものをつくっている出展企業を募って、一大イベントにしたいと考えているんですよね。例えばフード系なら、僕が関わっているタンパク質豊富で低糖質の美味しいおからを使った「オカラテクノロジズ」のお菓子とかパンとか。会場も大きいですし、けっこうバズる気がするんですよね。
GOETHEさんにも、オフィシャルメディア的な立場で、「予防GOETHE」という雑誌を作るとかで参加してほしい。日程は2024年の9月14日なので、読者の皆さんも遊びにきて、楽しんで、健康になっていってください。
堀江貴文/Takafumi Horie
1972年福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジン開発や、アプリのプロデュース、会員制オンラインサロン運営など、さまざまな分野で活動する。予防医療普及協会理事。著書に『堀江貴文のChatGPT大全』ほか。本連載をまとめた書籍が好評発売中。
もっと詳しく知りたい人は書籍をチェック!
ホリエモンと一流医師が本気で考えた健康投資・決定版
■連載「金を使うならカラダに使え!」とは……
カラダは究極の資本であり、投資先である。そう断言する堀江貴文氏が、最先端の医療と美容情報を惜しげもなく伝授する連載。