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2024.02.01

売れっ子放送作家・鈴木おさむは、なぜ32年間続けてきた仕事を今辞めるのか

『SMAP×SMAP』『めちゃ²イケてるッ!』など数々のテレビ、ラジオ番組を手掛けてきた放送作家の鈴木おさむが、放送作家業と脚本業を辞めると発表した。30代後半、40代になると、仕事に対して新たな不安や戸惑い、疑念が出てくる。32年間続けてきた仕事をなぜ、今辞めるのか。インタビュー前編。

辞めるという選択肢

2023年10月に放送作家を辞めると発表して以来、その最後の日となる2024年3月31日に向けて全速力で突っ走ってきた。

「最後なんでとことん自分を追い詰めようと思っていたんですけど、ちょっと追い詰めすぎました(笑)。通常の仕事をやりながら、単行本を3冊と映画を3本。もう何十万字書いたんだろうっていう感じです。

正月に実家に帰ったんですけど、27時間くらいぶっ続けで同じポジションで仕事をしていたら、母や姉が『こんなに大変な仕事をしているんだ』って驚いていました。最後にその姿を見せられたのはよかったかなと思っています」

鈴木おさむが「地獄の日々」と振り返るこの数ヵ月の間に書かれた単行本のうちの1冊が2024年1月に発売された『仕事の辞め方』だ。本人いわく「ビジネスパーソンのために書いた、初めてのビジネス書」だ。

「これまでもビジネス書を書きませんかという話はたくさんあったんですけど、おもしろいと思える企画がなかなか見つからなくて。でもいざ自分が放送作家を辞めるとなったら、このことをテーマに書けるんじゃないかと思ったんです。

最近でこそ転職するのも普通になりましたけど、現在40代、50代のビジネスパーソンは新卒で入った会社に定年まで勤め続けるのが当たり前という時代に就職しているわけじゃないですか。そういう人が会社に在籍し続けて、気持ちが前向きになれない日々を過ごしているのであれば、辞めるという選択肢があるんじゃないかということを伝えたかった。

マイナス面、不安はもちろんあるだろうけど、いったんそこは考えず、辞めるということを考える。辞めることのプラスを考えてみて、そっちのほうがワクワクするなら辞める道を選んでみてもいいんじゃないでしょうか」

「まず離婚するところから始めないと、新しい恋に向かえない」

本書では、19歳で放送作家となり、『SMAP×SMAP』など鈴木が担当してきた数々の番組のエピソードを交えながら、〈常に入っていた120%の力が入らないときも出てきてしまった〉ことを夫婦のセックスレスにたとえ、鈴木自身の辞めるまでの心の流れをつぶさに語っている。

僕は若手の頃から、まず目の前の人に褒められたいと思ってやってきました。

(中略)だけど、僕が今、仕事をしている状況は、以前のように大きな緊張感を持って、この人にいらないと思われたくない! この人にめちゃくちゃ褒められたい! という状況がかなり減ってしまっている。

エクスタシーを感じる状況が減っていて、仮に大きな結果が出たとしてもそれはあくまでも結果であって、自分は緊張感ある過程の中でそのエクスタシーを生み出していたのだなと気づきました。

だからきっとそれが僕のビジネスセックスレスなのでしょう。

自分を求めてくれる人がいたとしても、きっとこれは「終わるべきサイン」なのだと思います

『仕事の辞め方』

鈴木おさむは会社勤めをしているわけではない。放送作家という仕事を続けながら、あるいは少しずつ減らしながら、次の道に進むこともできたのではないだろうか?

「たぶん、僕が副業的に新しい仕事を始めたとしたら、みんな僕に真剣に向き合ってくれないと思うんですよ。やっぱり緩やかに次の道に進むのではなく、ガツンと辞めて、向かっていったほうがいいだろうなと。

僕が次にやりたいことにおいては、放送作家という“枠”が邪魔になる。その枠を超えて活動をしていきたいんです。結婚したまま『あなたが好きだ』と言っても相手にしてもらえないでしょ。まず離婚するところから始めないと、新しい恋に向かえないじゃないですか(笑)」

これまで築き上げてきたものを手放し、鈴木おさむが目指す“新しい場所”とは? 後編では2024年4月以降の自らの活動について語る。

鈴木おさむ/Osamu Suzuki
1972年千葉県生まれ。大学生のときから放送作家として活動開始。数々のテレビ、ラジオ番組で活躍。『奪い愛、冬』『M 愛すべき人がいて』など人気ドラマの脚本を手掛ける。2023年10月、2024年3月31日で放送作家を辞めることを発表。現在、最後の脚本作となる地上波連続ドラマ『離婚しない男 ―サレ夫と悪嫁の騙し愛―』が放送中。

TEXT=川上康介

PHOTOGRAPH=倭田宏樹

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