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2023.01.04

天才プロデューサー・くりぃむ有田哲平の仕事術【まとめ】

高校の同級生だった上田晋也とコンビを結成して31年。シュールな笑いと独特なボケで人気を博し、コンビだけでなくピンでも多数のレギュラー番組を抱える芸人・有田哲平。お笑い業界最高の実力者のひとりと称されているが、近年、制作者としても高く評価されている。とくに、『全力!脱力タイムズ』では、MCに加え、総合演出という肩書きを持ち、企画や演出で腕を振るう。企業に例えるなら経営トップとも言えるプロデューサーとしての有田哲平の魅力に迫った連載「天才・有田哲平という男」から有田哲平の仕事術を振り返る。※2022年9月公開記事を再編。

有田哲平の仕事術。

仕事術1:“あおり”がピークみたいな見せ方は壊したい

有田哲平扮するアリタ哲平がメインキャスターを務め、岸博幸氏や齋藤孝氏、出口保行氏といった学者、有識者が“全力解説員”に名を連ね、芸人などがゲストで参加する『全力!脱力タイムズ』。毎回、「世の中のニュースを、各界の有識者たちが大まじめに解説。ところが、次第に話が脱線していき、思わず脱力してしまうような予期せぬ展開が起こるという、報道番組スタイルをとったバラエティ番組だ。2015年にスタートして7年余り、視聴者だけでなく、業界にもファンが多いこの番組で、有田哲平は現在、総合演出をも務めている。

「今のバラエティって、『あの誰々が登場!?』といった“あおり”がピークだったりするじゃないですか。視聴者としては、そこだけ観れば十分みたいな。(番組の見所である)ハイライトやあおりシーンをしょっちゅう流すことで、視聴者にチャンネルを変えさせないようにするという意図はわかります。でも、番組を根っから愛してくれる人は、そんなことをしなくても観てくれるし、それだけの信頼関係が築けていると思っています。だからこそ、『脱力』は、告知だけ観ればだいたいわかるような番組ではなくて、ちゃんと最後まで観ないとわからない番組にしたい。最後まで観てくれれば、もっと面白いことするよ、驚かせるよって。プロレスと同じですね。エンタメで必要なことは、すべてプロレスから学んだので(笑)」

仕事術2:エンタメで必要なことはプロレスから学んだ

「人がどんな時に驚き、どんなシーンに喜び、どんな展開に感動するのか、すべてプロレスから学びましたね。40年前に観た試合で、あのレスラーが一瞬サプライズで出てきて、すぐ退場したけど、あれにはめちゃくちゃ興奮したなとか、今でも強烈に覚えているんですよ。『脱力』(『全力!脱力タイムズ』)でも、あれをやらなきゃダメだなって。アンタッチャブル復活の回(詳細はこちら)にしても、事前に告知していたら、あの盛り上がり、歓喜はなかったんじゃないかな」

有田いわく、「プロレスの面白さは、まずは、マッチメイクにある」。

「対戦カードが組まれた瞬間、ファンはワクワクドキドキするんですよ。『寝技系の選手と打撃系選手だから、こんな展開になるんじゃないか』とか、『この選手とこの選手を戦わせたら、きっといい試合になるだろう』と、予想すること自体が、まず楽しい。『脱力』でいえば、『このゲストにはこの企画を』という部分ですね。だから、企画に関しては、その芸人さんの力量とか特徴を考えて、この“無茶ぶり”なら、しんどいだろうけどなんとか避けられるだろう、でも、ここまでやったらつぶれちゃうなって、ものすごく考え、スタッフと話し合います。勝手に呼んでおいて、『何か面白いことしろよ』と、その芸人さんに丸投げするのは嫌いなんです」

魅力的なマッチメイクでワクワクドキドキした後、試合を観て興奮し、終わった後は感想を言い合って、また盛り上がる。それをすべてひっくるめて、「プロレスは総合エンタテイメントだと思います」とも。

「そこそこのファンなら、対戦カードを見ただけで、『きっとこっちが勝つよ』って予想できるし、けっこうその通りになったりするんですよ。でも、その予想が裏切られたら、ものすごいサプライズになり、衝撃を受ける。その結果、『何が起こるかわからないんだから、やっぱり最後まで試合を観ないとダメだよな』と、なるんですよ。

テレビの世界も、視聴者の目が肥えてきたこともあって、『きっとこういう展開になる』と予想しやすくなっています。『この後、ものすごいことが起こる!』と煽っても、視聴者は、『いやいや、起こらないよね』という感じで。そうしたことも、テレビ離れにつながっている気がするんですよ。だから、『脱力』は、最後まで観ないとわからない番組にしたい。そうすることで、もともとテレビが大好きだったのに離れてしまった人たちが、もう一度戻ってきてくれるんじゃないかって」

仕事術3:真摯な姿勢と人への優しさが、周囲を動かす

有識者たちが、キャリアを投げうって(!?)番組に協力してくれるのは、「有田さんは天才! そして、バケモノ! 人に対する優しさや愛もあるから、『この人のためなら!』という気持ちにさせられます」という経済学者・岸博幸氏の言葉通り、有田の人望によるところが大きい。

「この番組での有田さんの立ち位置は、会社に例えるなら経営者のようなもの。現場の企画を頭から否定するようなことはせず、自由に伸び伸びとやらせているので、スタッフは安心して、どんどんチャレンジができる。イノベーションが起こりやすい組織をつくっているんですよね。しかも、現場が暴走した時は、ちゃんと入って調整してくれる。経営者としてもすごく優秀で、正しいことをしていると思います。僕は、毎回収録が楽しみでしかたがない。真似しようと思っても真似できない唯一無二の番組になっているのも、有田さんが優秀な経営者である証拠でしょう」(岸氏)

仕事術4:オフにしたはずのスイッチが、いつのまにかオンに

スイッチをオフにしたはずなのに、いつのまにかオンになっている。常に頭の中に“お笑い”のことがある有田にとって、「仕事」とはなんだろう。

「うーん……。若い頃、バイトしていた時は、お金をもらうためにはしんどいこともしなくちゃいけない。それが仕事だと思っていました。でも今は、『仕事行ってくるわ』みたいに、ワードとして“仕事”を使ってはいますけど、気持ちとしては、毎日、遠足や運動会、学芸会に行くみたいな感覚なんですよ。ワクワク、楽しみでしかたがないというか。

『脱力』にしても、最初のオファー通り、ニュースのVTRを観ながら、面白いことを言うだけの方が、時間もかからないし、ラクだと思います。だけど、『こうしたら、もっと面白くなるんじゃないか』『もっと楽しくできるのでは?』って、動かずにはいられない。だから、月に1回くらい自分に言い聞かせるんですよ。『有田、お前お金をもらって、これをやっているんだぞ。仕事なんだぞ』って。そうしないと、楽しくしようという気持ちが、膨れ上がって、歯止めがきかなくなりそうで(笑)」

演者として、そして、制作者として、ただひたすら“笑い”を考え、追求する有田哲平。彼がつくる唯一無二の笑いに、これからも注目したい。

連載記事の全文はこちら

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有田哲平/Teppei Arita
1971年熊本県生まれ。’91年、高校の同級生・上田晋也とお笑いコンビ「海砂利水魚」を結成。2001年、コンビ名を「くりぃむしちゅー」に改名。現在、『しゃべくり007』『くりぃむクイズ ミラクル9』『今夜はナゾトレ』『世界一受けたい授業』などレギュラーを多数持ち、ピンでも『全力!脱力タイムズ』等に出演。俳優のほか、YouTubeチャンネル『有田哲平のプロレス噺【オマエ有田だろ!!】』も好評。

TEXT=村上早苗

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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