作り手である時計師やコンセプターの顔が見え、彼らが理想とする時計製作に真摯に向き合う。今、熱心な時計コレクターの視線は、独創性が際立つ独立系小規模メゾンに向けられている。今回は、「ヨウスケ・セキグチ」を紹介する。【特集 人生を豊かにするLUXURY WATCH】

独立時計師。2004年明治大学卒業後、渡仏し独学でフランスの国家時計技師資格(CAP)を2007年に取得。ラ・ジュー・ペレを経て、クリストフ・クラーレ在職中の2016年にル・ロックルに工房を構え、凄腕の修復士として名を馳せる。2020年から自らの時計製作に着手する。
アンティークに学んだ、手仕事の美学
ブランドを含む、スイスの時計関連企業で働く日本人技術者は珍しい。関口陽介氏も、そのひとりだった。2008年にムーブメント会社ラ・ジュー・ペレに入社。2011年からは、複雑機構を得意とするクリストフ・クラーレで経験を積んだ。そして同社に勤めたままアンティーク時計の修復を請け負うようになり、2020年に独立。翌年に初作「プリムヴェール」のプロトタイプが完成した。
「実はコンピュータは使わないし、CG図面も作らない。最初のムーブメントは、目見当で地板やブリッジを糸ノコで切りだし、修復で余った古い歯車を測定して形を真似て手作りし、それらを組み立てながら修正してようやく完成にこぎつけました」
そのムーブメントを基に図面を起こすことで、パーツ製作を外注できるようになった現在のモデルでも、すべて自身の手で念入りに仕上げ直しを行う。ネジも自ら焼き入れしてブラウンバイオレットに発色させている。手本は工房を置くル・ロックルで18世紀につくられた懐中時計。それらの修復で多くを学び、先人に負けない美を追求する。
ヨウスケ・セキグチ|プリムヴェール 2026
質感豊かなダイヤルは、インデックスやインダイヤルを残して彫り下げたなかに釉薬を注し高温焼成するシャンルベエナメル製。18世紀のル・ロックル製懐中時計に範を採るムーブメントの造形も、目を見張るほど美しい。

この記事はGOETHE 2026年8月号「総力特集:人生を豊かにするLUXURY WATCH」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら

