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2026.03.16

時計師とともに最愛の1本を作る。独立系マイクロメゾン3選

最上ブランドの頂点にして、世界に唯一無二。トップランナーのために仕立て、創造されるスペシャルワンなクルマと時計。走りと時が交差する、超絶美を纏ったマスターピースを追う。今回は、独立系マイクロメゾンのオーダーウォッチを紹介する。【特集 最幸の贅沢】

アクリヴィア、ビバー、フィリップ・ディフォーの時計

ユーザーと作り手との距離が近い独立系のマイクロメゾン

神に祈りをささげる時間を正確に把握するために、教会の塔時計として開発された機械式時計。その後の技術革新によって小型化され、携帯できるようになると、時計は人々のステータスアイテムとなる。さらに懐中時計のカバーに家系の紋章を彫りこんだり自画像を描いたりしたのは、自分らしさを表現するためだった。

オーダーウォッチの魅力とは注文者と製作者、そして完成した時計という3つの物語が融合するところにある。それは既製品にはない唯一無二の物語だ。

そのため富裕層の時計愛好家にとっては、自分好みの時計をオーダーするのは比較的普通のこと。むしろ既製品を買うほうがまれであり、時計を手に入れる=予算も納期もない贅沢な遊びであった。

しかしそういった文化は、大手の時計ブランドからは残念ながらほとんど消えている。巨大化した時計ブランドでは、生産計画が綿密に管理されており、そういった“遊び”が入りこむ余地はほとんどないのだ。

しかし独立独歩で作品を作っているマイクロメゾンであれば話は別だ。年間生産本数が極めて少ないため、一本一本に向かう時間は長い。さらにはブランドの創業者が時計製造の現場に立っていることが多いため、時計には作り手の手触りが見えてくる。こういった味わいは、大手ブランドでは味わえない。

もちろんマイクロメゾンだからといって、何でもかんでも自由に作れるわけではない。時計というのは、作り手の創造性や挑戦心に惚れて手に入れるもの。それを毀損するような時計を作ることができないのは、大手ブランドであろうとマイクロメゾンであろうと違いはない。

違うのは、ユーザーと作り手との距離感だ。ここに紹介するマイクロメゾンの人々は、日本への訪問も多く、時計愛好家と直接顔を合わせて話をすることを好む。それはすなわち顧客と作り手が対話(be spoken)しながら製品を作り上げていく“ビスポークの世界”を楽しめるということであり、古の時計愛好家が、時計師と対話をしながらオーダーウォッチを作っていった歴史とも重なる。

マイクロメゾンの時計の魅力は、顔が見える時計師たちとともに、最愛の1本を作るということ。それ自体が特別な物語となるだけでなく、時計を通じてブランドを育てていくという一種のパトロネージという満足感も味わえる。それも魅力だ。

1.アクリヴィア|若き天才時計師による世界が注目するブランド

独立時計師、レジェップ・レジェピ氏によって、2012年に創業したアクリヴィア。もともとは複雑機構を好んでいたが、時計の本質を極めたスモールセコンドを搭載したシンプルな3針の時計「RRCC Ⅰ」で、2018年度のGPHG(ジュネーブ・ウォッチ・メイキング・グランプリ)にてメンズウォッチ賞を受賞する。時計師としての自信と誇りを表現するように、ムーブメントのプレートにも自身の名前「REXHEP REXHEPI」を入れる。生産本数は少ないが、手のこんだ仕上げは一見の価値がある。

アクリヴィア「RRCC Ⅱ」
2022年に発表された「RRCC Ⅱ」。手巻き、18KRGケース、径38mm。価格は要問い合わせ(アワーグラス銀座 TEL:03-5537-7888)
レジェップ・レジェピ氏

レジェップ・レジェピ
1987年に旧ユーゴスラビアのコソボで生まれる。12歳の時に父が働くジュネーブに移住し、時計に魅せられる。15歳でパテック フィリップの研修生となり、BNBコンセプトなどを経て2012年に独立。

2.ビバー|時計界の大物が最後に選んだ旅路

幾多の時計ブランドを再興し、時計グループのトップも務めた時計業界の大物経営者ジャン-クロード・ビバー氏。時計を知り尽くした彼は、キャリアの集大成として自身の名を冠したブランド、ビバーを2023年にスタートさせた。ブランド規模は敢えて息子のピエール氏を右腕としたファミリービジネス。深い関係を築いてきたサプライヤーと組んで、圧巻の複雑機構モデルをリリースする。写真モデルは3対のハンマー&ゴングを持つカリヨン機構を搭載するトゥールビヨン&ミニッツリピーター。

ビバー「キャリオン・トゥールビヨン・マザーオブパール」
「キャリオン・トゥールビヨン・マザーオブパール」世界限定1本。自動巻き、Tiケース、径42mm。¥99,690,000(アワーグラス銀座 TEL:03-5537-7888)
ジャン-クロード・ビバー氏

ジャン-クロード・ビバー
1949年ルクセンブルク生まれ。ブランパン、オメガ、ウブロといったブランドを躍進させ、LVMHグループの時計部門のトップも務めた。2018年に勇退したが、’23年にビバーという名のブランドを立ち上げた。

3.フィリップ・デュフォー|独立時計師の神は時計産業の守護者

時計愛好家たちからは、もはや現人神のごとく慕われているフィリップ・デュフォー氏。シンプルなドレスウォッチから複雑機構まで素晴らしい時計を作っているだけでなく、後進の育成や文化の継承に力を入れていることも、彼が評価される理由だ。親日家であり、日本の時計文化や愛好家にも愛情を注ぐ。神戸の名門時計店「カミネ」の上根亨氏とは深い信頼関係で結ばれており、2006年に同社が100周年を迎えた際には、ダイヤルに特別なプレートが入ったユニークピースの「シンプリシティ」を製作している。

フィリップ・デュフォー「シンプリシティ」
カミネ創業100周年を記念した「シンプリシティ」。シンプルながら細部まで美しい時計。手巻き、PTケース、径37mm。非売品。
フィリップ・デュフォー氏

フィリップ・デュフォー
1948年スイスのル・サンティエ生まれ。地元の名門ジャガー・ルクルトを経て、1978年に独立。自身の名を冠した時計ブランドを始動。独立時計師協会の活動を通じて、後進の育成などにも力を入れる。

【特集 最幸の贅沢】

この記事はGOETHE 2026年4月号「総力特集:人生を変えるモノ&コト 最幸の贅沢」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら

TEXT=篠田哲生

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