「有田さんは“お姫様”。どんなに大変なことがあっても、お姫様の笑顔が見られれば、幸せな気持ちになります」という、『全力!脱力タイムズ』企画の狩野雄太氏。そこまで言わせる有田哲平の魅力とは!?
まずはダミーの企画書でオファー
「『全力!脱力タイムズ』は、僕が編成部に異動になり、『何かひとつ、好きな企画を出していい』と言われて提案したものです。そんなゆるい感じで始まった番組を、まさか7年以上続けることができるとは、自分でも驚いています」と、フジテレビ・狩野雄太氏。
もっとも、有田にオファーする際に持参した企画書は、「海外の衝撃映像を見て、出演者が解説する」といった内容だったという。現在の形式とは、少々違うようだが。
「それだと、有田さんは面白がってくれないだろうと思い、(名城)ラリータさんたちと、『この企画のことはいったん忘れ、一緒にイチからつくりませんか』とお願いしたんです」
有田を含め、その場でいろいろ話し合って出たのが、報道番組のパロディという設定。映像を見ながら出演者がまじめな顔で解説しつつ、だんだんと脱線し、ミニコントが入るというものだった。回を重ねるうちに、有田から「毎回映像見なくてもいいんじゃないか」という提案があり、ゲストの芸人にスポットを当てる現在のスタイルになったという。
「有田さんと仕事をするのは、この番組が初めて。ぱっと見、寡黙な人なので、最初はなんとなく怖かったんですよ。でも今は、こんなに頭がいい人、他にいないなと。会議で構成を話しながら、頭の中ではすでに仕上がりのイメージが描かれていて、 “つかみ”が面白くて、起承転結がしっかりあるだけでなく、その展開で視聴者がどんな気持ちになるかまで考えて、構成しているんだと思います。僕はドラマの仕事も担当していますが、有田さんは脚本家としても、優秀。
それに、いつもふざけているように見えて、実はロジカルで、分析力もすごい。雑談の中でも、『あの時、あの人がこう言ったのは、こういう背景があって、こういう流れに持ちこみたかったからだ』なんて会話がしょっちゅう出てきます。芸人さんやタレントさんの才能や個性を的確に見抜き、それを引きだす能力が突出していると思います。
この番組での有田さんは、自分にスポットが当たるかどうかなんて、まったく気にしていないんですよ。自分が“おいしく”ならなくても、番組に来てくださったゲストが大きな笑いをとれれば、それが一番って。そんな人、なかなかいないです」
無茶ぶりされても笑顔がみたい。有田さんは”お姫様“
最近のバラエティ番組は、展開が細かく、早い。視聴者に最初から最後まで見続けてもらうべく、前振りの後にすぐにオチがくるという展開を、コンパクトに詰め込むスタイルが主流と言ってもいい。
「有田さんは、そうではなく、階段を上がっていくみたいに、ていねいにつくりこんだ笑いが好き。だから、この番組では、ひたすら前振りが延々と続くこともあります。アンタッチャブル復活の回(ゲストの柴田英嗣に伏せ、相方の山崎弘也が本番で登場。約10年ぶりに漫才を披露した)も、あの前に、偽物の山崎さんが登場するという回を何度か放送するという、壮大な前振りがあったから、サプライズ感がより増したんだと思います。でもサプライズのために、別の現場で有田さん自らキャスティングの交渉をしてくださったりと、繊細さと大胆さ、有田さんはその両方を持っているんですよね」
有田が求める笑いのレベルが高いだけに、調整役である狩野氏にかかる負担は大きい。
「正直、大変なことは山のようにあります。無茶ぶりされることも多いので、僕からすると、有田さんはワガママなお姫様(苦笑)。でも、どういうわけか、ワガママを言われると、『絶対やってやる!』という気持ちになる。有田さんはいつも一生懸命だし、いくつになっても無邪気に笑いを追求する、ピュアな人。だから、周りも、自然と必死になっちゃうんでしょうね。
それに、現場で有田さんが笑っている姿をみると、幸せな気持ちになるんですよ。その瞬間、辛さや苦労は吹き飛びます。僕は、有田さんのことがめっちゃ好きなんだろうな(笑)。この先、少しでも長く一緒に仕事ができたら幸せですね」