2024年4月12日(金)から14日(日)にかけて、千葉県の幕張メッセにてクルマ文化の祭典「AUTOMOBILE COUNCIL 2024」が開催された。筆者が気になった車両を写真とともに紹介したい。 ■連載「クルマの最旬学」とは
ポルシェより同時代のメルセデスが狙い目?
「AUTOMOBILE COUNCIL」は、ヘリテージカーを中心としたクルマ文化の祭典で、車両の展示や販売のほかに音楽ライブや現代アートなどを幅広く楽しむことができる。9回目となる今回の来場者数は3万9807人と過去最高、出展社数の113社も過去最多と、このイベントが日本のクルマ好きの間ですっかり根付いたことがわかる。
会場に一歩足を踏み入れた瞬間にハートを鷲掴みにされたのは、この3月に亡くなった自動車デザインの巨匠、マルチェロ・ガンディーニの代表作が展示されていたからだ。『In Memory of Marcello Gandini』と銘打たれた追悼展にはランボルギーニ・カウンタックやランチア・ストラスなどの5台が並び、多くの方が熱心にカメラを向けていた。
ガンディーニのデザインに共通するのは、どのモデルも夢と希望にあふれていることで、眺めているだけでワクワクしてくる。改めて、偉大な自動車デザイナーであったことを噛み締めた。
冒頭で記したように、「AUTOMOBILE COUNCIL」はヘリテージカーを中心にした“クルマ文化祭”であるけれど、スペースの関係もあるので、ここでは気になったモデルを紹介していきたい。
ドイツ車で注目すべきは、空冷エンジンを搭載するポルシェ911の人気が衰えないこと。ちなみに、空冷エンジンのポルシェ911は1998年まで生産されている。
いっぽう、同年代のメルセデス・ベンツのスポーツモデルはポルシェ911に比べると手が届きそうな価格帯。新車当時の評価は甲乙付け難かったわけだから、実は90’sのメルセデスが狙い目かもしれない。
もうひとつおもしろかったのは、2代目のフォルクスワーゲン・ゴルフがかなりの価格で販売されていること。しかもスポーツタイプのGTIではなく、ごくふつうのグレードなのだ。スポーツカーやスーパーカーではなく、実用車のゴルフにしっかりとした価値が残っているというのは、このクルマがいかに愛されているかの証左だろう。
手が届く価格だった“走る宝石”
日本車の展示車両で最大の驚きは、1990年型の“Barn find”の日産マーチR NISMOが660万円で売りに出されていたこと。“Barn find”とは納屋やガレージの奥に保管されていた車両を意味する。
ほかに、イベント会社が保有していた走行距離2190kmの日産スカイラインGTS-Rにも、1800万円の値札が付いていた。凡人はつい、親戚宅の納屋に埃まみれのお宝が埋もれていないか、と妄想してしまう。 “箱スカ”と呼ばれる1968年から1972年まで生産された日産スカイラインのスポーティ仕様、GT-Rが高額で取引されているのはご存知の通り。価格を見てため息をついてしまう自分と、日本の古いクルマの文化的価値が認められていることに納得する自分のふたりがいる。
イタリア車、イギリス車、そしてフランス車のブースでは、ホットになってしまった金銭感覚がクールダウンできた。「ちょっと欲しいかも」と思えたり、実際には買えないまでも夢を見ることができる価格帯の車両が並んでいるからだ。
なかでもイチオシは、ピニンファリーナが手がけた美しいボディをまとったプジョー406クーペ。いま、ゴツいクルマが増えた都内でこれに乗っていたら、なかなかエレガントだろう。
というわけで、値段にびっくりしたりため息をついたり、目が点になったりハートになったり、2024年も「AUTOMOBILE COUNCIL」を満喫したのだった。
サトータケシ/Takeshi Sato
1966年生まれ。自動車文化誌『NAVI』で副編集長を務めた後に独立。現在はフリーランスのライター、編集者として活動している。
■連載「クルマの最旬学」とは……
話題の新車や自動運転、カーシェアリングの隆盛、世界のクルマ市場など、自動車ジャーナリスト・サトータケシが、クルマ好きなら知っておくべき自動車トレンドの最前線を追いかける連載。