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2024.01.01

有名小学校合格者多数「こぐま会」代表が語る、子どもの賢さをつくる4つの要素

幼児に読み・書き・計算はまだ早い。そう唱えるのは、入塾希望者が殺到する名門幼児教室「こぐま会」の代表・久野泰可氏だ。世界で採用されているオリジナルの教育「KUNOメソッド」を考案した久野氏が考える、子どもの賢さのベースとなるものとは一体? 『子どもが賢くなる75の方法』(2014年刊)の一部を再編集してお届けする。

『子どもが賢くなる75の方法』
Unsplash/Annie Spratt ※写真はイメージ

「賢さ」のベースになるもの①──自立

子育ての最終目標、それは将来子どもがきちんと自立して生きていくことです。人に迷惑をかけることなく、社会の役に立つような人物になることは、1人の自立した人間であることが大前提といえます。

1人では食事さえできない乳児期や何かにつけて親を頼り、甘えてくる幼児期は「自立」から遠い存在といえます。年齢によってはできることもかぎられているため、片時も目が離せずつきっきりで世話を焼いているという家庭も少なくありません。1人でできることが少ない上、親を頼ってくるこの時期は、思い切り甘えさせてやりたいという親心はよく理解できます。しかし、子どもが甘えたいと思う気持ちを受け止めるのと、甘やかすのではまったく意味が違います。

たとえば外出するとき、玄関で子どもが靴を履くのに手間取っていたとします。こんなとき、さっと履かせて靴ひもをきちんと結んであげてはいないでしょうか。しかも、「自分でやるの!」と言っているのに、「時間がないから」「今だけは」などと理由をつけながらやってしまう方が多いように思えます。

子どもが誰かの力を借りず、自分で何かをしようとしているとき、頭はフルに回転しています。どうすれば上手にやり遂げることができるかを一生懸命考え、ちょっと手こずっても踏ん張り、たとえ失敗してももう一度挑戦する…。「自分でやろう」と思ったとき、子どもの頭は大いに発達します。これこそが、子どもが賢くなる瞬間なのです。「ちょっと貸してごらんなさい」「やってあげる」と手を出してしまうのは、子どもが自ら賢くなるチャンスを奪い取っているようなもの。決してやってはなりません。

もし途中で投げ出しそうになったり、「ママやって〜」と泣きついてきたとしても、「もう一回がんばってみようか!」と励ましてあげてください。そして、見事やり遂げたときは、思い切りほめてあげてください。その積み重ねで子どもは自信を持ち、どんどん賢くなっていくのです。

「賢さ」のベースになるもの②──問題解決力

平穏な毎日を過ごしていても、何かしら“困りごと”に出合うものです。たとえば料理をしているとき、使おうと思っていた材料や調味料がなかったとします。この小さな危機を乗り越えるには、さまざまな方法があることでしょう。急いで買いに行くのもいいし、別のもので代用するのもいい。または献立を替えてしまうという方法もあります。このように何か問題が起きたとき「どうすれば解決できるか」を考えることは、頭を鍛えてくれるものです。

もちろん、子どもも同様です。

お絵描きをしていたら、使いたいクレヨンがなかった。セットになっていたおもちゃが1つなくなっていた。一緒に遊ぼうと思っていたお友達が出かけてしまっていなかった…。いかがでしょう。いくつかお子さんに起きた出来事もあったのではないでしょうか。

子どもが幼いうちは、思い通りにならないとき、かんしゃくを起こしがちです。

しかし、それが許されるのは年少組くらいまで。ある程度大きくなったら、少しずつ「では、どうしようか」と考える習慣を身につけていきたいものです。

もちろん、最初からうまくいくわけではありませんから、最初のうちは親が「じゃあ、こうしてみない?」と導いてやることが必要です。そして、うまくいったときは大いに喜んであげてください。すると、「問題が起きたとき、他の方法を考えて、それがうまくいったときは嬉しい」と、達成の喜びを味わうようになります。こうした体験を積み重ねることで、「何か問題が起きても、一生懸命考えれば解決の方法が見つかる」という自信が持てるようになります。 

どんな問題が起きようとも、方法を考えて解決に導ける力は、数々の試練で諦めずに取り組む力の源です。ちょっと面倒だと思うと「もういいや」と投げ出したくなるのは、大人も子どもも同じです。だからこそ、「どうすればいいか」を考える力が重要なのです。

「賢さ」のベースになるもの③──試行錯誤と作業能力

何か困難なことに出合ったとき、どうすれば回避できるのかを考え、クリアする力を「問題解決力(もんだいかいけつりょく)」と名づけました。では、どうすれば問題解決力は身につくのでしょうか。

大人でも同様ですが、問題をなんとか解決しようとしたとき、すぐに正解にたどり着けるとは限りません。解決法をひらめいたとしても、実際に試したところ想像通りにいかず、失敗に終わってしまうことはよくあることです。

こうしたとき、すぐに諦めてしまうのは、問題に出合ったときに「これでは仕方ない」と放り出してしまうことと、あまり差がありません。最初に試した方法がうまくいかなくても、「では、こうしたらどうだろう」と次の方法を考え、試してみるという具合に、少しずつ改良を加えながら新しい方法を思いつき、試すことは、頭を活性化させます。それだけでなく、難問に取り組むときに欠かせない集中力と根気強さをも養ってくれるのです。

このように「試行錯誤(しこうさくご)」をくり返すことができる子どもは、賢くなり、勉強もできるようになる可能性がとても高いといえます。

最初とは違った方法を考え、試してみることが「試行錯誤」ですが、どのように作業を進めればよいかを考え、自分が思いついた作業を実際に進めることができる手先の器用さや、作業の段取りを考える計画性も重要です。

これらの力は、特別なことをするというよりも毎日の遊びの中で身につけることができます。たとえば積み木で遊んでいるとき、真剣な表情で作っては壊しをくり返していることがあるでしょう。そんなとき、子どもは自分の中で「作りたいものの完成図」ができ上がっていて、なんとかしてそれを現実に作ろうと試行錯誤をくり返しているのです。そんな姿を目にしたら、口出しは不要です。黙って見守ってあげてください。真剣に考える姿こそ、賢くなっている姿なのですから。

「賢さ」のベースになるもの④──視点を変える柔軟性

ここまで「賢いとはどういうことか」について考えてきました。

特に親は子どもが学校のテストでよい点数を取ってくることや、よい成績を修めること、受験に成功してよい学校に入れることを期待しがちです。

しかし、勉強がよくできて常にトップクラスの成績を修めることが「賢さ」ではありません。

ここまで述べてきたように、「賢さ」とは日常的なものです。さまざまな問題を自分で考えて解決していくこと、つまずいても諦めずに解決の道を探せること、試行錯誤をくり返せること。これらの積み重ねが頭をよく刺激し、賢さへと導いてくれるのです。

そして、もう1つ大切なことがあります。それは、臨機応変に視点を変えられる柔軟性があることに他なりません。

何かに取り組んでいるとき、一生懸命になればなるほど1つの見方しかできなくなることがあります。ちょっと視点を変えればすんなりと解決できるのに、自分が思いついた方法に固執することで他が見えなくなってしまうのです。

これは学習面だけの問題ではありません。人間関係でも起こりがちなことです。たとえば1つしかないおもちゃで遊んでいるとき、お友達の立場になって考え、ある程度遊んだら代わってあげるという、小さな心遣いも「視点を変える」訓練になりますし、賢さのベースとなる「柔軟性」を育んでくれます。これは小学校に上がったとき、「小1プロブレム(編集部注:小学校に入学したばかりの1年生の児童が起こす問題のこと)」を起こさない力作りにも役立つことでしょう。

特に幼児期は、遊びを通して「同じものでも、別の角度から見ると形も大きさも違って見える」という経験をたくさん積むことをおすすめします。こうしたことで、「ものの見方は1つではない」「自分と違う場所からは、違う風景が見えている」ことを学び、人への接し方も学んでいくのです。

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久野泰可/Yasuyoshi Kuno
1948年静岡生まれ。横浜国立大学教育学科卒業。1972年現代教育科学研究所に勤務。1983年幼児教育実践研究所「こぐま会」の室長を経て、1986年代表に就任。教育者として常に現場に身を置きながら、国内外で講演を行う。約50年に及ぶ教室での実践を通して「ひとりでとっくん」100冊シリーズや、多くの具体物教材・教具を開発。幼児の発達段階をふまえた独自のカリキュラム「KUNOメソッド」は、中国、韓国、ベトナム、シンガポールなど、海外の幼稚園・教室でも導入されている。2012年「KUNOメソッド」を更に広めるべく、幻冬舎と共同でブランド「100てんキッズ」を立ち上げ、商品を開発。著書に『間違いだらけのお受験』『3歳からの「考える力」教育』(ともに講談社)、『「考える力」を伸ばすAI時代に活きる幼児教育』(集英社)など。

TEXT=久野泰可

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