PERSON

2024.05.09

草彅剛が今思うこと。「人生は睡眠と筋肉」「お金も体力も出し惜しみしない」「生きているだけで最高」

草彅剛は、大ベテランといっていいキャリアと年齢なのに、なぜ彼はこんなにも少年のような瑞々しさとポテンシャルを感じさせるのだろうか。それは、彼の演技にお決まりのパターンや、固定のスタイルがないからかもしれない。2024年5月17日(金)に公開の主演映画『碁盤斬り』でも、草彅は新境地を開拓している。作品ごとに新しい表現を見せてくれる草彅剛の、仕事と人生に向き合う秘訣を聞いた。インタビュー後編。 #前編

草彅剛

自分で自分を褒める

取材部屋に現れた草彅は、少しおどけたような声色で「お願いしますー」と挨拶し、空気を一気に和らげつつテンションを少し上げた。

さすが、第一線で37年間走り続けてきた大スターである。こうして取材を受ける草彅は少年のような気配を残しているが、今年、2024年7月に50の大台に乗る。

「疲れますよね(笑)。『碁盤斬り』の最後の山のシーンなんて、1時間ぐらいかけて登って、カメラ回してるのは7分ぐらいだったりするわけです。しかも映ってるのは後ろ姿だけ。

お芝居というより(重要なのは)筋肉じゃん、みたいな(笑)。役作りに必要なものも、まずは睡眠と筋肉だなと思います。今撮影中の『新幹線大爆破』(Netflix世界配信予定)も、台詞をちゃんと言っていて。『剛くんえらい!』と思ってます(笑)」

俳優業のほか、レギュラーの仕事やYouTube、SNSなども頻繁に更新中。その露出は多く、多忙かつ大充実の日々を送っている。

「いつまでできるのかなと思ったりはします。『疲れたなー』と途方に暮れることもあります。でも、みんなそうなるんだからそれを楽しんでいかないとな、と。一線で活躍されている先輩方の背中を見ながら、自分の年齢や老いに楽しみながら抗っていく。それが僕のテーマです。

今、役者という職業を飛び越えて、『人生は睡眠と筋肉だ』と実感します。トレーニングは、スクワットとHIIT(ヒット)をもう10年以上、毎日やっています。朝から『今日も剛くんイケてるね。元気だから、スクワット20回やっちゃおうか』と自分を褒めてます(笑)」

草彅剛
草彅剛/Tsuyoshi Kusanagi
1974年7月9日生まれ。1991年SMAPとしてCDデビュー。俳優としての主な出演映画は、『黄泉がえり』(2003年/塩田明彦監督)、『日本沈没』(2006年/樋口真嗣監督)、『あなたへ』(2012年/降旗康男監督)、『まく子』(2019年/鶴岡慧子監督)、『台風家族』(2019年/市井昌秀監督)、『サバカン SABAKAN』(2022年/金沢知樹監督)など。『ミッドナイトスワン』(2020年/内田英治監督)では、第44回日本アカデミー賞最優秀作品賞・最優秀主演男優賞などを受賞した。テレビドラマは『任侠ヘルパー』(2009年)、大河ドラマ『青天を衝け』(2021年)、朝の連続テレビ小説『ブギウギ』(2023〜2024年)などに出演。新しい地図YouTubeInstagramX

「出し惜しみしない」スタンス

このインタビュー中に何度か、草彅は自分で自分を冗談めかして褒めていた。彼は他者にも優しいが、頑張った自分にも優しいのだ。

「褒められると気持ちが上がって、ネガティブなことを考えなくなるんです。誰も褒めてくれないですしね(笑)。でもそこで『褒められないのは自分がダメだからだ』と考えず、自分で自分を褒めるといいですよ」

自分へのご褒美購入も日常茶飯事、「毎日が誕生日でクリスマスです」と実に楽しそうな表情を見せる。映画『碁盤斬り』にちなむわけではないが、宵越しの銭を持たない江戸っ子気質なのかもしれない。

「お金はあの世に持っていけないので、使っちゃいます。健康だったら盛り返せるから! だから、欲しい物ややりたいことのためにどんどん使った方がいいという考え方です」

この「出し惜しみしない」スタンスは、彼の仕事に対するそれと通じるものがある。『ブギウギ』の最終週、草彅は肝となる長回しのシーンの撮影現場で、「何度でも全力でやります」と、その熱意を言葉にしてプロデューサーに伝えていたという。彼は良いものを作るために、エネルギーの出し惜しみをしないのだ。

「その時その時の全力を出すというのは、楽しいからそうしているし、後悔したくないからというのもあるかもしれません。

体力が余っていたら夜眠れないし、その1日がもったいない。貯金があっても死んだら使えないのと一緒です(笑)。これって普通なことだと思うんだけどなあ」

そう言って笑う草彅に、多岐にわたる活動で一番楽しい瞬間を聞くと、実に彼らしい返答があった。

「生きていることが楽しいです。『この瞬間を生きている』という実感があれば、特別な何かをしていなくても楽しくて。僕ってすごく楽しそうじゃないですか?(笑)

今日こうしてたくさん取材を受けるのも、この近くにあるスーパーマーケットでアメーラトマトを買うのも楽しみで、昨日は修学旅行の前の晩みたいにワクワクした気分で寝ました。

大人になると、何か大きなきっかけがないと『楽しい』と言えなくなりがちだから、こういうことで楽しい気分になれる自分はラッキーなのかもしれないですね。

でもみんなも実は、普通に過ごしていても楽しいと思っているはず。もっと『楽しい』って口にした方がいいと思いますよ。

だって、極論を言うとみんな死んじゃうんだから、『今、生きているだけで最高でしょ』と。僕は本当にそう思っています。

これは年齢を重ねたことで、時間というものが有限で、永遠じゃないと知ったからこそ得られる楽しさですよね。その一方で、興味が尽きないこともたくさんあって、いい意味で子供に戻ってきている気がします。赤ちゃん返りしてるのかな(笑)」

草彅剛

「僕はだいぶ子供ですけど、この姿勢だけは大人」

現在進行形で最も興味が尽きないことは「ギターを上手く弾くこと」。「それこそ死ぬまで追求しきれない世界観が6弦と24フレットのなかにあるので、それを楽しんでいます」草彅は言う。

趣味で始めたギターに夢中になったことで、仕事でもある「歌の楽しさがわかってきた」というあたり、仕事とプライベートはいい相乗効果を生み出しているようだ。

「そう思います。ずっと休みだとメリハリがないし、仕事があるから休みが楽しくなる。自分の気持ちのバランスをとるためにも、生きていくためにも、仕事は必要不可欠なことだと思います」

いい仕事をするために準備しているものは前述した「睡眠と筋肉」だが、マインド面で心がけていることを聞いてみた。

「一生懸命にやることと、素直でいること。人を嫌な気持ちにさせないように、人のことを考える。自分がやったことは、良いことも悪いことも100%自分に返ってくるという考え方なので、常に自分の行動に気をつけて、人を傷つけないことと人に優しくすることを心がけています。

僕はだいぶ子供ですけど、この姿勢だけは大人だなって思います。これで誤解されてしまったらそれはもう仕方がない。寝て回復します(笑)」

▶︎▶︎インタビュー前編

TEXT=須永貴子

PHOTOGRAPH=倭田宏樹

STYLING=細見佳代(ZEN creative)

HAIR&MAKE-UP=荒川英亮

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