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GOLF

2024.06.30

意外に知らないゴルフルール。”プレーヤーは自分のスタート時間より早くスタートしてはならない”

今回の表題は名言ではなく、ルールの条文そのものだが、意外に正しく理解されていないことなので取り上げてみた。特に、最後の「早くスタートしてはならない」というカッコ書きには、「早くスタートして何が悪いのだ?」と首をかしげるゴルファーも多いのではないだろうか。

早くスタートするのがダメなのはなぜか?

ゴルフでは、通常はOUTコース・9時00分というように、事前に予約したスタート時間が決まっているものだ。メンバーが集まったら順次スタートする、という優雅なゴルフ場もあるが、それは極めてまれだ。

 

予約でスタート時間が決まっている場合は、その10分前にはティイングエリア周辺にスタンバイしていることがコースからも求められている。順次スムーズにスタートしていくことが、円滑なラウンドやPLAY FASTの第一歩だからだ。

どこかの組がモタモタしていると、順繰りに遅れが出て、スタート時間どおりにティーオフできないということがよく起こる。安い料金で、多くの予約を受け付ける薄利多売型のコースなどは、慢性的に遅れが出るものだが、それでも自分のスタート時間の10分前には、進行状況を確認しにティイングエリアの様子を見に行くことは必要だろう。

通常は、このように遅れが出ていることがほとんどだが、キャディさん付きプレーが主体で、円滑にスタートしていくコースでは、トップの組が予定時間より早くスタートしたりすることもあって、自分のスタート時間より早くティーショットが打てる状況になることもある。

そういう場合、通常のラウンドでは、前の組に追随してスタート時間より早くティーオフし、ラウンドをスタートするものだが、もちろんそれで何の問題もない。むしろ、PLAY FASTの観点からは、推奨されるべきだろう。

では、ルールにおいて「早くスタートしてはならない」と、カッコ書きで注意を促しているのは、どういうことなのか。一度、正式なルールがどうなっているのかを確認してみよう。

ゴルフ規則とプレーの実態

ゴルフ規則5.3aには、次のように書かれている。

プレーヤーのラウンドは、自身の最初のホールをスタートするためにストロークを行ったときに始まる(規則6.1a参照)。
プレーヤーは自分のスタート時間にスタートしなければならない(早くスタートしてはならない):
・このことは、プレーヤーは委員会が設定したスタート時間にスタート地点でプレーをすぐに始めることができる状態でなければならないことを意味する。
・委員会が設定したスタート時間は正確な時間として扱う(例えば、午前9時の意味は午前9時00分00秒であり、午前9時01分までの時間ではない)。

これを杓子定規に解釈すると、プレーヤーはスタート時間の前に、スタート地点でプレーをすぐに始めることができる状態にして待機し、スタート時間ピッタリにボールをストロークしなければならないことになる。しかし、それが現実的ではないとは、どなたも思うことであろう。

フォーサムの組のスタート時間が9時ならば、4人のプレーヤーが9時00分00秒ピッタリに、4人同時に打たなければならないから、そんなことは危険だしあり得ない。日本ゴルフ協会のFacebookには、ゴルフ規則のオフィシャルガイドをQ&A形式にして説明した投稿があり、その一部を紹介する。

プレーヤーは委員会が設定したスタート時間にスタート地点でプレーをすぐに始めることができる状態でいなければなりません。9時00分がスタート時間の場合、9時00分00秒にスタート地点にいなければなりません。プレーをすぐに始めることができる状態とは、少なくともクラブ1本と球を持っていることを意味します。

つまり、スタート時間ピッタリに、クラブとボールを持ってスタート地点にいればいいということだ。あとは、すみやかにティーオフしていけば問題はない。

また、天候や他の組の遅れ、レフェリーの裁定など、やむを得ない理由がある場合は、プレーヤーの組がスタートできるときに、プレーヤーがそこにいてプレーをすぐに始めることができるのであれば、スタート時間ピッタリにスタートしなくてもやはり問題はない。

このゴルフ規則5.3aの違反があった場合は、なんと失格となる。理由もなく遅れてスタートした場合はもちろんだが、「早くスタートしてはならない」とある以上、早くスタートしても実は失格となるのだ。ただし、これには例外の規定が定められている。

例外1-プレーヤーが5分以内の遅れでスターティングエリアに到着し、プレーをすぐに始めることができる:プレーヤーは自身の最初のホールに適用する一般の罰を受ける。
例外2-プレーヤーが5分以内で早くスタートする:プレーヤーは自身の最初のホールに適用する一般の罰を受ける。

つまり、スタート時間の5分以上前にスタートしたり、理由もなく5分以上遅くにティイングエリアに到着したりした場合は失格となる。しかし、スタート時間の前後5分未満の間にスタートできれば、失格とまではならず「一般の罰」すなわち2打の罰が加えられ、プレーはできるということだ。たとえ10秒前にスタートしたとしても、2打罰なのだから、結構厳しい罰則ではある。

全英オープンのスタート風景をテレビ中継などで観ていると、まず選手が紹介され観客は拍手で迎える。そして、前の組がセカンドショットを終えてフェァウェイが空くのを待つのだが、もう打てる状況になっても選手はすぐには打たない。スターターを務める委員が、「スタート時間になりました。スタートしてください」と合図を告げたら、直ちにルーティンに入って打つ。その合図の前に打ってしまっては、2打罰となるのだから、当然だ。

ただ、これはあくまでもプロやアマチュアの公式競技でのスタート時間に関する規則と考えていいだろう。一般ゴルファーが遊びのラウンドで、早めにスタートしたからといって何の問題もなく、むしろ推奨されるぐらいなのは前述のとおりだ。

実際、クラブ競技などでも、競技委員は「前の組との距離を自分で判断し、打てる状況になったらスタートして結構です」と、安全だけは自分で判断して随時スタートするように指示することがほとんどだ。だから、スタート時間のルールで罰打を科せられる現場を、コースではほとんど見たことがない。

スタート時間の何分前に到着すべきか?

スタート時間のルールに抵触するのは、大抵の場合は遅刻によるものだ。スタート時間に間に合わず、つまり5分未満の遅れでティーオフすることができず、失格となる事例は、プロでも時折起こる。

車の故障や事故などによる渋滞で、スタート時間に間に合わないことは、往々にして起こり得ることだ。よって、充分に余裕をもって家を出発することも、大事なマナーといえる。

では、スタート時間の何分前に到着するようにすべきか? コースのホームページには、スタート時間の30分前には来場するようにと書かれていたりするが、これは、必要最低限の準備でスタート時間に間に合うという、ギリギリの到着時間だ。到着してチェックインし、ロッカールームでシューズを履き替え、トイレを済ませて駆けつけて、やっとスタート時間の10分前にティイングエリアに付けるかどうかだろう。

これでは、あまりにも余裕がなく、心理的にも焦った状況でティーショットするハメになるから、大概はミスショットになるものだ。パッティング用の練習グリーンで、その日のグリーンの速さを確認するだけでもよいので、スタートの1時間前には到着したいところだ。

もう少し、その日のラウンドを大事にするなら、一箱ぐらいはドライビングレンジで球打ち練習もしたいところだ。それならば、更に30分追加して、スタート時間の1時間30分前に到着すべきだろう。

更に、予期せぬ渋滞などを考えると、保険を掛けてスタート時間の2時間前を到着時間として考えることが、同伴者に迷惑を掛けない配慮となる。関西のドン、杉原輝雄プロも2時間前にコースへ着くことを推奨していた。

早くコースへ到着し過ぎても、ドライビングレンジや練習グリーンで、家ではできない練習ができるのだから、コスパがよくなるだけだ。もし事故渋滞などがあっても、それらの練習時間が削られるだけで、コンペの幹事さんや同伴プレーヤーをやきもきさせることもない。

ゴルフマナーというものは、コースでのプレー中のマナーに注目が行きがちだが、このように家を出るときから始まっているものなのだ。

参考資料:
公益財団法人 日本ゴルフ協会『ゴルフ規則 2023年1月施行』ゴルフダイジェスト社、2023年1月1日

日本ゴルフ協会「ゴルフ規則よくある質問 (規則5.3a)」Facebook、2020年4月16日

この記事は幻冬舎plusからの転載です。
連載:ゴルフは名言でうまくなる
岡上貞夫

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