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2024.07.18

男子バスケ日本代表・河村勇輝「必ずNBAの舞台で、富永選手とユニフォーム交換をする」

バスケットボール男子日本代表のポイントガード、河村勇輝(23歳)が、NBAのメンフィス・グリズリーズとキャンプ参加のための「エグジビット10」契約を結ぶことで合意した。パリ五輪後の2024年9月に正式契約を締結する予定。険しい挑戦になることを覚悟したうえで、日本人4人目のNBA入りへの一歩を踏み出す。

「エグジビット10」契約でNBA入りの第一歩を踏み出す

生半可な気持ちではない。2024年7月9日、横浜市内で開かれた会見。河村勇輝(23歳・横浜ビー・コルセアーズ)がNBA挑戦への強い覚悟を口にした。

「NBAのコートに立つことが一番の目標。とんとん拍子でいくとは全く思っていない。それを分かったうえでのチャレンジ。言語や文化の問題、実力で歯が立たないこともあると思う。それでいい。どんな困難にも立ち向かえる自信はある。覚悟を持って臨みたい」

主力としてパリ五輪出場権獲得に貢献した2023年夏のW杯後から複数のNBAクラブから興味を示されるようになり、2024年7月初旬にメンフィス・グリズリーズから正式オファーが届いた。

「小柄な僕に複数のクラブからオファーがあり、うれしかった。驚いた部分もあった」

数日で決断し、2024年7月6日に合意に至った。

「エグジビット10契約」は、2017年に導入された最低年俸、無保証の契約。クラブはシーズン開幕までにNBAと下部Gリーグチームを一定期間行き来できるツーウエー契約に切り替えることができる。契約解除された場合も、契約クラブの傘下のGリーグチームと契約が可能だ。

通称“キャンプ契約”で、ツーウエー契約を勝ち取れる選手はわずかしかいない。2019年に馬場雄大がダラス・マーベリックス、2020年に渡邊雄太がトロント ラプターズと同様の契約を結んだ例がある。馬場はGリーグのテキサス・レジェンズと契約、渡邊はツーウエー契約を勝ち取っている。

盟友・富永啓生とともに夢の舞台へ

Gリーグの環境は過酷で、NBAと比べて天国と地獄ほどの差があると言っても過言ではない。年俸は日本円に換算して1000万円以下の選手が多い。

遠征は深夜の長距離バス移動も多く、クラブによっては提供される食事がハンバーガーなどのジャンクフードしかない場合もある。

プレー面でも自身の売り込みを重要視する選手が多く、連係よりも個人技に走る傾向が強い。2023〜2024年シーズン、横浜ビー・コルセアーズで推定年俸1億円超の河村にとっては、まさにいばらの道となるが「今後のキャリアで必ず必要な財産になる」と迷いはない。

複数の選択肢のなかからグリズリーズに決めたのは、クラブからの熱意に加え、具体的なビジョンが頭に描けたからだった。

グリズリーズでは、2023~2024年シーズンに身長1m73cmのジェイコブ・ギルヤード(25歳)がツーウエー契約で37試合に出場した。1試合平均17.7分のプレーで4.7得点を記録。シーズン終盤にブルックリン・ネッツに移籍後も4試合に出場している。

身長1m72cmの河村はNBAでは最小兵クラスで「ギルヤード選手に注目して、研究してきた」と同じく低身長でスピードが武器の司令塔のプレーを、シーズンを通してチェック。クラブからギルヤードのように「プレーメイキングして、アシストの多いPGであってほしい」と伝えられ、心が震えた。

高校時代から年代別の代表で一緒にプレーしてきた1学年上の盟友・富永啓生もインディアナ ペイサーズとの「エグジビット10」契約に合意。河村は2024年春に米ネブラスカ大学を卒業したシューターから「毎年レベルアップして日本に帰ってくる姿は刺激的でした」と刺激を受けてきた。 

「富永選手と同じタイミングでNBAに挑戦できるのはすごく嬉しい。“必ず一緒にNBAのコートに立ってユニフォーム交換をしよう”という話をしました」

現在は、2024年7月26日開幕のパリ五輪を控える日本代表の一員として欧州遠征中。チームが掲げるベスト8の目標を達成して、NBA挑戦に弾みをつける青写真を描く。

「夢の実現のために日々精進したい。NBAデビューは早ければ早いほど嬉しいが、2〜3年で真価を発揮しないといけないと思っている」

河村勇輝はBリーグの恵まれた環境を捨て、ハングリーな世界に飛び込む。

河村勇輝/Yuki Kawamura 
2001年5月2日山口県生まれ。福岡第一高時代に全国選手権2連覇を含む4度の日本一を達成。2020年1月に特別指定選手としてBリーグの三遠ネオフェニックスに加わり、当時のB1最年少出場記録、最年少得点記録を更新した。同年4月に東海大に進学。横浜BCでの特別指定選手を経て、東海大を中退して2022~23年にプロ契約した。同シーズンにBリーグでMVP、新人賞を獲得。2023~24年はアシスト王。日本代表には2022年7月の台湾戦でデューした。身長1m72cm。ポジションはポイントガード。

■連載「アスリート・サバイブル」とは……
時代を自らサバイブするアスリートたちは、先の見えない日々のなかでどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。本連載「アスリート・サバイブル」では、スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う。

TEXT=木本新也

PHOTOGRAPH=西村尚己/アフロスポーツ

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