PERSON

2023.07.06

エース八村塁不在のバスケ日本代表を牽引する、馬場雄大が今取り組んでいること

バスケットボール男子日本代表はW杯(2023年8月25日開幕、日本・フィリピン・インドネシアの3ヵ国共催)に向けて、2023年6月から合宿をスタートしている。主力として期待される馬場雄大(27歳)は、自国開催の世界舞台を競技人生の分岐点と位置づける。コート内外でさまざまな取り組みを行い、来季のNBA本契約を勝ち取る青写真を描く。連載「アスリート・サバイブル」とは……

馬場雄大

コート外での新たな取り組み

心を落ち着けて、自分自身と向き合う。1日1時間。

馬場雄大は昨秋から毎日欠かさず瞑想(めいそう)をしている。

シーズン中の遠征で午前3時ホテル発の移動を強いられた際にも午前1時に起きてルーティンをこなしたほど「どハマりしている」と言う。

時期を同じくしてボクシングジムにも通い始め、週2~3回のペースで汗を流す。最初は趣味のつもりだったが、フットワークやパンチを拳1個分でかわす動きはバスケに通ずる部分があると感じている。

コート外で新たな取り組みを始めたのは「イチから自分を変えたい」思いからだ。

シューターに転身

世界で結果を出すため、昨夏からプレースタイルの大幅変更に着手。従来はドリブルでゴール下に切れ込むドライブを得意とする“スラッシャー”タイプだったが、外からのシュートを重視する“シューター”に転身した。

きっかけはトム・ホーバス監督との出会いだ。

初めて指導を受けた、2022年夏の合宿で「10回中7回ぐらいドライブするが、割合を逆にしてほしい。空いたら3点シュートを打ってほしい」と求められ、目標のNBA入りにも必要な要素と考えて受け入れた。

その後はシュート練習に明け暮れる日々。

人差し指を使わず、中指と薬指でリリースする悪癖を矯正するため指に輪ゴムを引っかけボールを放つ練習や、シュート軌道の高いアーチを意識するためにボードの裏からリングを狙うなど、工夫を凝らしたトレーニングも取り入れている。

NBA入りを目指して2019年夏から海外挑戦。NBAマーベリックスの傘下Gリーグのレジェンズ、NBLメルボルン・ユナイテッドでプレーした。2022-23年シーズンはレジェンズで主力として活躍。23試合出場(先発21試合)で、1試合平均34.3分プレーし、12.3得点、4.8リバウンド、2.1アシスト、3点シュート成功率40.3%を記録した。

着実にステップアップしており「W杯のパフォーマンスで人生が変わる。光るのと光らないのでは将来が全然違うと思う。大会後にNBAチームと何らかの形で契約したい。理想は本契約。2wayが最低ライン」と目標を掲げる。

2wayは下部Gリーグの傘下チームとNBAを一定期間行き来できる契約。過去には渡辺雄太がグリズリーズ、ラプターズと締結して、2021年4月のラプターズとの本契約につなげている。

W杯では「1試合平均5本は3点シュートを打ちたい。確率は高ければ高い方がいいが、40%が一つの目安になる。5分の2が最低ライン」とノルマを設定。

ファンや報道陣に対して「昔はスラッシャーといわれていたが、シューターといわれればいわれるほどリアルになると思うので、皆さんからはシューターといってもらいたい」と呼びかける。

待遇よりも自分がどう決断するか

前回2019年W杯は5戦全敗で32チーム中31位。2021年の東京五輪も3戦全敗で12チーム中11位に終わった。

馬場が代表入り後は世界大会で一度も白星がない。

今夏のW杯1次リーグはドイツ、フィンランド、オーストラリアと同組。格上ばかりだが、馬場は1歩も引く気はない。

アジア最上位になれば2024年パリ五輪切符を得るだけに「全部勝つつもりでいく。NBA選手に引けをとらずにやり合いたい。番狂わせを起こしてパリ五輪を決めたい」と力を込める。

NBA下部Gリーグの移動はバスはぎゅうぎゅう詰めで、飛行機はエコノミークラス。馬場がBリーグのクラブでプレーすればエース格として、はるかによい待遇が望めるが、進む道に迷いはない。

「結局は周りからの評価じゃなくて自分がどう決断するか。失敗を決めるのは自分。継続することは大切にしたい」

NBAクラブとの本契約はもちろん、2way契約も高いハードルだが、諦めたら、そこで試合終了。NBAの舞台に立つ日が来ることを信じて、目の前の課題を一つずつクリアしていく。

馬場雄大/Yudai Baba
1995年11月7日富山県生まれ。小学1年からバスケを始める。奥田中学、富山第一高校、筑波大学出身。奥田中学では八村塁の2学年先輩。筑波大在学中の2017年にA東京に入団。2018-19年はチャンピオンシップ決勝のMVPに輝いた。2019年10月にレジェンズに加入。2020-21年はNBLメルボルン・ユナイテッドでプレーしてリーグ優勝。2021年10月にレジェンズに復帰し、2022年3月からは再びメルボルンでプレー。2022-23年はレジェンズと3度目の契約を交わした。日本代表は2017年の東アジア選手権でデビュー。父・敏春氏もバスケ元日本代表。妻は女優の森カンナ。右利き。身長1m98cm、体重90kg。

 
■連載「アスリート・サバイブル」とは……
時代を自らサバイブするアスリートたちは、先の見えない日々のなかでどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。本連載「アスリート・サバイブル」では、スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う。

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TEXT=木本新也

PHOTOGRAPH=森田直樹/アフロスポーツ

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