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2023.06.08

「普通にやれば勝てる」最多ベスト5選出のバスケ富樫勇樹、物議を醸した発言の真意

男子バスケットボールBリーグは2023年6月2日、都内で22~23年シーズンの年間表彰式を開催し、千葉Jの司令塔・富樫勇樹(29歳)が7年連続のレギュラーシーズンベスト5に選出された。レギュラーシーズンは東地区を史上最高勝率で制覇。プレーオフのチャンピオンシップは準Vに終わったが、2016年のリーグ発足から唯一、全シーズンでベスト5に名を連ねた。連載「アスリート・サバイブル」とは……

富樫勇樹

Bリーグ発足初年度から連続ベスト5選出

7年連続7度目のベスト5。壇上でトロフィーを受け取った富樫は「7季連続は素直にうれしい。個人だけでは受賞できないと思いますし、チームの成績が伴ってこその受賞だと思っている。プレーが維持できているのはブースターの声援のおかげ」とファンへの感謝を口にした。

MVPに選出された河村勇輝(22歳・横浜BC)を含めて、ベスト5の他の4選手は全員が初受賞。

有望な若手が出てくるなか、Bリーグ発足初年度からただ一人ベスト5に選出され続けている価値は大きい。

7年連続の受賞者は「最優秀審判賞」の加藤誉樹氏と2人だけ。富樫は「去年、ベストレフェリー賞を加藤さんが受賞し続ける限り、僕もベスト5を受賞したいとコメントしていたので、今シーズンも一緒に受賞できたことをうれしく思います」と笑った。

今季の富樫はレギュラーシーズン全60試合に出場して1試合平均15得点、5.6アシストを記録。東地区をリーグ史上最高勝率の8割8分3厘(53勝7敗)で制した千葉Jの軸としてフル回転した。

プレーオフのチャンピオンシップ準決勝突破後の会見では、決勝の琉球戦に向け「普通にやれば勝てる」と発言。この言葉だけが切り取られて発信され、一部インターネット上で「相手へのリスペクトを欠く」と批判された。

発言の真意をめぐり、両チームのブースターを巻き込んだ論争に発展。

富樫は決勝の前日会見で「ファイナル独特の雰囲気の会場でいつも通りのプレーすることは簡単ではない。そこら辺も込めての言葉だった」と説明したうえで「聞き取られる方の自由なので、お互いのブースターの熱が良い意味で高まれば、それでいいのかなと思っている」と続けた。

バスケが注目されるのであれば、自身の発言が一人歩きしたことさえも歓迎する。器の大きさを感じさせる対応だった。

日本バスケ界への想い

2戦先勝方式のチャンピオンシップ決勝は琉球に2連敗。2年ぶりの年間優勝を逃し、レギュラーシーズン最高勝率チームが年間王者になれないというジンクスも打破できなかった。

富樫個人は第1戦で31得点、第2戦は24得点と、ともに両チーム最多得点をマーク。存在感を示したが「チームメートをリズムに乗らせる部分では、できなかった部分が多い」と反省し「琉球は優勝するにふさわしいチーム」と潔く勝者を称えた。

チャンピオンシップの決勝のMVPに輝いた琉球のコー・フィリッピン(27歳)は2年前まで千葉Jに在籍しており、2020~21年シーズンの優勝を経験。親交の深い富樫は決勝前に「千葉Jは俺がいないと優勝できない」と言われ「彼なしで優勝したい」と宣言していたが、叶わなかった。

決勝で敗戦後は「コー(・フィリッピン)は一緒にプレーしていた選手なので、活躍したことはうれしい」と頂点を逃した悔しさを押し殺しながら語った。

ファンへの感謝、審判へのリスペクト、対戦相手に対する発言など、富樫の言葉からは日本バスケ界を盛り上げようとする思いが強く伝わってくる。Bリーグのシーズンを終え、次なる目標は2023年8月25日に開幕するW杯。

日本、フィリピン、インドネシアの3ヵ国共催で、日本代表(世界ランキング36位)は1次リーグでドイツ(同11位)、フィンランド(同24位)、オーストラリア(同3位)と対戦する。会場は沖縄アリーナ。アジア最上位になれば2024年パリ五輪出場権を得られる重要な戦いとなる。

司令塔として期待される富樫は「まず、ケガなくシーズンを終えられたことが一番。長いシーズンだったので、1回体を休めてW杯に向けて準備していきたい」と視線を上げた。

抜群のスピードを誇るプレーはもちろん、コメント力でも日本バスケ界をけん引するBリーグの顔。日本開催の世界舞台でも、その言動から目が離せない。

富樫勇樹/Togashi yuki
1993年7月30日新潟県生まれ。小学1年時からバスケをはじめ、中学卒業後に米国に留学。米モントロス・クリスチャン高校在学中の2011年に日本代表に初選出。2014年には田臥勇太に続き日本人2人目となるNBA選手契約を結び、下部Gリーグのテキサス・レジェンズに所属した。2015年から千葉ジェッツ。ポジションはポイントガード。1m67cm。65kg。

 
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TEXT=木本新也

PHOTOGRAPH=西村尚己/アフロスポーツ

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