PERSON

2023.05.11

NBA5年目を終えた渡邊雄太、衝撃を受けたスーパースターKDのプレーとは

ブルックリン・ネッツで日本人最長となるNBA5年目のシーズンを終えた渡邊雄太が無保証のキャンプ契約から始まった激動の1年を振り返った。今夏のW杯(2023年8月25~9月10日、日本・フィリピン・インドネシアの3ヵ国共催)では日本代表の大黒柱として期待が懸かる存在。2023年2月まで一緒にプレーしたスーパースターの背中から“一流の所以”を学び、更なる飛躍を期している。連載「アスリート・サバイブル」とは……

渡邊雄太

一流であり続けるには理由がある

ネッツでNBA5年目を終えた渡邊雄太は2018~2020年にグリズリーズ、2020~2022年はラプターズに所属。これまでも多くのスター選手とプレーをともにしてきたが、2度のファイナルMVPを誇るケビン・デュラントには過去にない衝撃を受けた。

強烈に印象に残ったのは試合ではなく、日常の練習中のプレー。

渡邊は「練習の初日でスーパースターと言われるのは理由があるんだなって、すぐにわかりました。KD(デュラント)が練習している時間帯は、チーム練習でも個人練習でも、本当に一切ダラダラした瞬間がない。あそこまで自分の練習を大切にする人は、今まで見たことがなかった。彼のワークアウトには圧倒されました」と振り返った。

渡邊自身も人一倍練習をして成長してきた選手だ。グリズリーズ時代は下部Gリーグの傘下チームとNBAを一定期間行き来できるツーウェー契約からNBAデビュー。ラプターズでも無保証のキャンプ契約から開幕ロースターに残り、本契約を勝ち取った。

NBAのコートに立てない時間も腐らず、地道なトレーニングを続けてきた自負はある。それでもデュラントの練習に対する姿勢は別次元で「(デュラントは)外から見ていたら“身長もあって能力も高いので、NBAでも活躍できるのは当たり前”と思うかもしれないが、やっぱりそれを裏付ける努力があるのだなと。それは彼と一緒に生活して改めて感じた部分でした」と強調。

スーパースターの背中から学んだことは多く、自身の取り組みを見直すきっかけにもなった。

自身3度目の世界舞台への想い

2022-23シーズンは2022年8月にネッツと無保証のキャンプ契約を結び、激しい競争を勝ち抜いてロースター入りした。高確率の3点シュートと献身的な守備でデュラントやカイリー・アービングら中心選手の信頼を勝ち取り、勝敗を分ける重要な場面でコートに立つこともあった。

だが、2023年2月にデュラント、アービングが移籍して主軸が入れ替わると、渡邊の出場機会は激減。1回戦で76ersに4戦全敗して敗退したプレーオフは第1戦は4分43秒コートに立ったが、残り3戦は出場機会なしに終わった。

それでもレギュラーシーズンは自己最多の58試合に出場し、1試合平均5.6得点、2.4リバウンド。3点シュート成功率は44.4%を記録し「間違いなく自分のベストシーズン。もっと上を目指すが、自分の成長を感じられる中身の濃いシーズンだった」と確かな手応えをつかんだ。

現時点で来季の所属先は決まっておらず、フリーエージェントになる。今夏には日本・フィリピン・インドネシアによる3ヵ国共催のW杯(2023年8月25~9月10日)が開催され、世界ランキング36位の日本は1次リーグで同3位のオーストラリア、同11位のドイツ、同24位のフィンランドと同組に入った。上位2チームが2次リーグに進出。アジア最上位になれば2024年パリ五輪出場権を得られる重要な戦いとなる。

渡邊が出場した世界大会は2019年W杯が5戦全敗、2021年の東京五輪が3戦全敗に終わっており、白星を手にしたことがない。自身3度目の世界舞台への想いは強く「自分はW杯に出るつもり。新しいチームが決まるか決まらないかの時期なので、最悪出られない覚悟はしておかないといけないが、W杯に向けて体は作る」と力を込める。

新たな所属先が未定でも、W杯のコートに立てるかが不透明でもやるべきことは変わらない。尊敬するデュラントを見習い、練習から一切手を抜かず、自身を高めることに全力を注ぐ。

渡邊雄太/Yuta Watanabe
1994年10月13日香川県生まれ。香川・尽誠学園時代に全国高校選抜優勝大会で2011年から2年連続準優勝。米ジョージ・ワシントン大を経て2018年にグリズリーズと契約し、日本人2人目のNBA公式戦出場を果たす。ラプターズを経て、2022-23年シーズンはネッツに所属。2021年には東京五輪でバスケットボール男子日本代表の主将を務めた。2m6cm、97kg。ポジションはスモールフォワード。妻は元フジテレビアナウンサー・久慈暁子。

 
■連載「アスリート・サバイブル」とは……
時代を自らサバイブするアスリートたちは、先の見えない日々のなかでどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。本連載「アスリート・サバイブル」では、スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う。

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TEXT=木本新也

PHOTOGRAPH=ZUMA Press/アフロ

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