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2023.04.27

大怪我を乗り越えて復活した、日本女子バスケのエース“ラムちゃん”

2022-2023年シーズンのバスケットボール女子WリーグのプレーオフはENEOSの4年ぶり23度目の優勝で幕を閉じた。2023年4月15、16、17日に開催された2戦先勝方式の決勝(東京・武蔵野の森総合スポーツプラザ)では3連覇を狙ったトヨタ自動車に勝利。1勝1敗で迎えた第3戦で再延長にもつれる死闘を制し、皇后杯との2冠を達成した。大黒柱の渡嘉敷来夢がMVPを獲得。大ケガで東京五輪の欠場を余儀なくされるなど苦しい時期を乗り越えて復活を果たした。連載「アスリート・サバイブル」とは……

渡嘉敷来夢

崖っぷちからの23度目のリーグ制覇

歴史に残る名勝負の末にENEOSが女王の座に返り咲いた。

プレーオフ決勝は初戦を落とした後のない状況から2連勝。運命の第3戦は53-53で突入した延長戦でも決着せず、61-61で再延長戦にもつれこんだ。50分の死闘の末に70-64で勝利。ゴール下に君臨した渡嘉敷は試合直後の場内インタビューで「優勝して泣くキャラじゃないけど、涙が止まらない」と涙し「サンフラワーズが帰ってきました~」と絶叫した。

試合後の公式会見でもチームメートの発言を聞き、何度ももらい泣き。「ケガのことよりも、去年決勝に立てなかったことが本当に悔しくて。いろんなことがあるからこんなにも泣けるのだと思う」と声を震わせた。

大怪我からの復活

名門・桜花学園高で1年から主力として活躍。2010年にWリーグ2連覇中だったJX(現ENEOS)に加入し、ルーキーイヤーに新人王とMVPをダブル受賞する史上初の快挙を成し遂げた。チームは2018~2019年シーズンまで優勝を続け、11連覇を達成。渡嘉敷は2015~2017年には米WNBAシアトル・ストームでもプレーした。

2016年リオデジャネイロ五輪は8強入りに貢献。順風満帆のバスケ人生を送ってきたが、キャリアの最大の目標の1つに掲げた2021年の東京五輪を前に落とし穴が待っていた。

2020年12月に右膝前十字靭帯を断裂。早期復帰に向けて即座に手術を受けてリハビリを開始し、春先にはケガを抱えたまま代表候補にも名を連ねたが、五輪には間に合わなかった。

プレーできない状況が続いた2021年5月に最後は自ら代表離脱を決断。「本番に自分がいないと早く決まった方が、早くチームづくりができて団結できる」とのチームを思う一心だった。

怪我と呼応するように、所属チームも厳しい状況を迎えていた。Wリーグは新型コロナの影響で2019~2020年シーズンは優勝チームなし。ENEOSは渡嘉敷が故障離脱した2020~2021年シーズンに優勝を逃して、連覇が11でストップした。

昨季は渡嘉敷が復帰したにもかかわらず、プレーオフ準決勝で敗退。決勝進出を逃すのは実に16年ぶりの屈辱だった。

故障離脱中も、チーム低迷中も、向上心は失わなかった。「自分はまだまだ強くなれる。もっと格好いい選手になれる。過去の自分を超える」と自らに言い聞かせ、得意のゴール下だけでなく外からのシュート強化にも着手。東京五輪では銀メダル獲得で日本史上初の表彰台に上がった女子日本代表の試合に熱視線を送り「自分も負けたくない」と奮い立った。

女王奪回を期す今季はチーム在籍13年目で初めて主将に就任した。

「これで勝てなかったら自分も終わり」との覚悟でシーズンを迎えたが、開幕戦はトヨタ自動車に57―70で完敗。レギュラーシーズンも4位に沈んだが、プレーオフは準決勝でレギュラーシーズン1位のデンソー、決勝で同2位のトヨタ自動車を撃破した。

渡嘉敷はプレーオフ計6試合で1試合平均18.3得点14.0リバウンド2.5ブロックと躍動。MVPを獲得し「この1年間、自分を追い込んでいた。自分がキツくて下を向いた時も、チームメートもヘッドコーチも最後まで自分を信じてくれた。今回の優勝には11連覇の時にはなかった感情がある」と実感を込めた。

チームメートやコーチ、スタッフ、ファン。苦しみ抜いたからこそ、11連覇中にも増して支えてくれた周囲への感謝の思いは強い。

最後は「最高のチーム」と誇ったうえで「また常勝軍団に戻れるか?」の質問に「それは簡単には言えない」と返答した。再び常勝軍団を作り上げるため、まだまだやることは多い。チームの大黒柱として4年ぶりのWリーグ制覇はスタート地点に過ぎない。

渡嘉敷来夢/Ramu Tokashiki
1991年6月11日、埼玉県春日部市生まれ。桜花学園高2年の2008年に史上最年少の16歳で日本代表候補に選出される。2010年にJX-ENEOSに入団。1年目の2010-2011年シーズンにリーグ史上初となる新人王とレギュラーシーズンMVPに輝く。2015~2017年には日本人3人目のWNBA選手としてシアトル・ストームでプレー。身長1m93cm。

 
■連載「アスリート・サバイブル」とは……
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連載「アスリート・サバイブル」

時代を自らサバイブするアスリートたちは、先の見えない日々のなかでどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。本連載「アスリート・サバイブル」では、スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う。

TEXT=木本新也

PHOTOGRAPH=松尾/アフロスポーツ

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