「元気ハツラツ! オロナミンC」と、崑ちゃんの声が響くと撮影現場は一気に笑いで温まる。94歳にして、現役。笑いに涙の混じる筋金入りの“話芸”に和田秀樹も思わず感激~! 元気に長生きしている大先輩にその秘訣を聞く人気連載、大村崑2回目。【対談記事はコチラ】

長生きの秘訣は「か・き・く・け・こ」
和田 対談1回目の終わりに「崑ちゃん流のかきくけこ」の話が出ましたが。
大村 かきくけこの「か」は感謝ね。「き」は興味。年を取ると興味が薄れてくるでしょ。でも僕は興味だらけでね。あれはなんで動いてんのやろ、中身はどうなってんのやろ、どないして作ったんやろって、何にでも興味を持つんですよ。
和田 大村さん、脳が若いんですよ。年を取ると脳も老化し、興味や意欲も落ちてくるのが一般的です。でも興味を持ち続けることで、脳は若さを保つことができるんです。
大村 なるほど。僕は工夫も好きでね。工夫の「く」です。止まってるものをどうやって動かそうとか、できないことをどうやったらできるかとか、いろいろ考えて工夫する。人にもやたらと聞きます。やってみることが大事なんですよ。楽しいでしょ。うまくできなくても、また考えて工夫すればいい。
和田 すばらしいですね。
大村 「け」は健康ね。体を鍛えるために今でもジムに行ってます。86歳のときに妻に誘われてライザップに行ったらね。「筋肉は死ぬまで鍛えられる」って言われて感動したんです。入会したらすっかり筋トレにハマってしまった。筋肉痛もあったけど、それも気持ちよくてね(笑)。
和田 筋金入りですね(笑)。

1931年兵庫県生まれ。昭和30年代、テレビ軽演劇『やりくりアパート』『とんま天狗』などの主演を務め一世を風靡する。大塚製薬オロナミンCのCMで国民的タレントとして地位を確立。現在は講演活動に全国を駆け回りながら、映画にも出演。著書に『崑ちゃん90歳 今が一番、健康です!』など。
恋する気持ちがあると若くいられる
大村 最後の「こ」は何だと思います?
和田 恋ですか?
大村 大当たり。さすが精神科の先生はすごいね。
和田 いやいや。
大村 なんぼきれいな嫁さんがおっても、付き合ってる女性がいても、外へ出ると「ああ、かっこいいなあ」とか「きれいな人や、どこの人やろな」なんて思うことがあるでしょ。目の中にふっと美しい人が入って来たら目が動く。あれ、恋ですよ。
和田 名言ですね。女性はわりと年を取っても「あの人かっこいいな」と恋心を持ち続けるのですが、男性は萎んでしまう人が多い。これは男性ホルモンが減ってくるからです。
大村 そうなんや。
和田 「いい年をして恋なんてみっともない」と言う人もいますが、どんどん恋をしたらいいと僕は思いますよ。心がときめいている人は元気ですし、生きてる幸せ感もある。会話をしても「ええ話を聞いたな」と素直に喜んだりする。豊かな気持ちで生きられるんですよ。いっぽうで、心が萎んだ人は「生きてることがつまんない」なんて言いながら生きている。この違いは大きいと思います。
大村 最近ね、僕は地下鉄に乗る機会が増えたのよ。今までタクシーばかりだったけど、地下鉄、おもしろいねー。
和田 刺激がある?
大村 そう。僕は地下鉄でね、恋を使うの。きれいな人を探して、その横に座る。男の人の横には座らない。それが僕の恋だろうね(笑)。
和田 素敵なことです。やっぱり若返りますよね。
大村 嫁さんに恋してもいいと思うんですよ。年取ると、嫁さんを嫁と思わない人もいるでしょ。この間も食堂でね、夫婦らしき男女が全然話さないんです。食べ終わったら男の人がさっさと出ていき、女の人が後から寂しそう帰って行く。僕は気になってね、「失礼ですが、今いた男性はどなたですか?」って聞いたの。そしたら「主人なんです。いつもあんな感じで」とちょっと寂しそうだった。
和田 ヨーロッパには老夫婦でも恋をしようって人がいます。だけど日本は少ないですね。
大村 男同士みたいな夫婦もいるし、男が女みたいになる人もいるし。でもまあ、恋をするほうが楽しいね。
和田 はい、そう思います。

精神科医・幸齢党党首。1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業後、同大附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー等を経て、和田秀樹こころと体のクリニック院長に。当対談連載をまとめた『80歳の壁を超えた人たち』をはじめ、『80歳の壁』『幸齢党宣言』など著書多数。
よく噛むのが長生きの秘訣
和田 かきくけこの他には?
大村 僕は、食事のときによく噛みますね。今日は先生と話すから、その前にテストしておこうと思って、噛む回数を数えたんですよ。昼食で喫茶店に入り、隣の席の男性の噛む回数をこっそり数えた。スパゲティ、クルクルッと丸めてパクッと口に入れてだいたい10回から13回噛んで飲み込んでました。僕もスパゲティ頼んで数えたら40回ぐらい噛んでました。
和田 しっかり噛むんですね。
大村 だから食べるのは遅い。
和田 でもいいことですよ。よく噛むと、消化がよくなるし吸収もよくなります。噛むことは脳にもいいんです。咀嚼によって脳の多くの部位が活性化するんです。思考を司る前頭葉が活発に働くし、記憶領域の海馬への血流も増えます。カチカチというリズミカルな刺激でセロトニンも出やすくなる。結果的にボケ予防にもなるんです。
大村 なるほど。
和田 どういうわけか他の筋肉にもいい影響があるんです。とくに喉の筋肉にいい。
大村 声がよくなる。
和田 おっしゃる通りです。食べ物も飲み込みやすくなります。日本人の死因の6位は嚥下性肺炎ですが、この原因の一つは喉の筋肉が弱ることです。飲み込んだものが胃に入らず肺に入ってしまう。それで肺炎になってしまうんです。
大村 僕は不思議と病気にならない。汚い話やけど、食べて「ごちそうさんでした」と言った途端にトイレに走ります。前に食べたものが、今食べた量だけきれいに出るんです。
和田 腸が元気なんですよ。最近「腸活」なんて言葉もよく聞きますが、腸が元気な人はやはり長生きです。よく噛むことも腸にはいいですからね。
大村 僕は2食しか食べないんですよ。お相撲さんと一緒。
和田 1日2食でも3食でも、大事なのは栄養がきちんと摂れているか。僕はたくさんのお年寄りを見てきましたが、80歳でも90歳でも、しっかり食べてちゃんと栄養を摂っている人は元気です。しかも腸が元気な人は食べた物をしっかりと吸収できます。
大村 そうそう。僕は2食がきれいに自分の体に吸収されて、体力や戦力になってくれてる感じがするね。それが僕の元気の源なんだろうね。
和田 睡眠はどうですか。
大村 1日に8時間以上は寝ます。絶対に寝ないとあかん。僕は右の肺がないからね、右下で横を向いたら眠れない。左側を下にして寝るとスーッと睡眠に入っていくんです。逆向きに挑戦してみたこともあるけど、いつまでたっても眠れなかった。
和田 なるほど。睡眠の質も大事にしているんですね。大村さんの肌がきれいなのは、睡眠も影響していると思いますよ。
大村 それと運動してるからね。体を動かしたら疲れて眠れるでしょ。
和田 さすがです。いろいろなことが理に適っている。医者の言うことを聞くのではなく、自分で考えて工夫していることがやっぱりいいのだと思います。
※3回目に続く

