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2024.02.12

ホーキンソン「試合当日は、勝負メシの卵6個を使ったオムレツを食べます」

2023年8月に行われたワールドカップ(以下、W杯)において、格上の強豪国であるフィンランドやベネズエラを打ち破り、実に48年ぶりとなる、自力でのパリ五輪出場権を獲得したバスケットボール男子日本代表「アカツキ ジャパン」。その歴史的快挙を成し遂げたメンバーのなかでも、最大の殊勲者であり、2023年に日本国籍を取得、帰化選手になったばかりのジョシュ・ホーキンソンに、自身の哲学を訊いた。3回目。#1 #2

ジョシュ・ホーキンソン/Josh Hawkinson
1995年アメリカ・ワシントン州シアトル生まれ。元プロバスケットボール選手の両親の元に生まれ、高校時代は野球で頭角を現し、150km近い速球を投げる投手として注目。ワシントン州立大学でバスケに専念し、「通算1000得点、1000リバウンド」という記録を樹立。しかしNBAドラフトでは惜しくも指名漏れという結果に終わり、2017年夏、当時B2だったファイティングイーグルス名古屋でB.LEAGUEのキャリアをスタートさせる。2020年からB1の信州ブレイブウォリアーズ、2023年からサンロッカーズ渋谷に所属し、同年に日本国籍を取得。日本名は名字の「Hawk(鷹)」から「鷹大(たかひろ)」とし、ファンからは「鷹ちゃん」の愛称で親しまれる。

怒鳴られるのが嫌いな人も、激しく意見を言いあいたい人もいる

2023年夏に沖縄アリーナで開催されたW杯全出場チームのなかでも、最も活躍したビッグマンとして世界にその名を轟かせた、ジョシュ・ホーキンソンとは何者なのか? 連載最終話は、抱き続ける大きな夢の話から、ゴルフやカラオケ、温泉やサウナといった趣味の話、さらには試合前に自炊するデカ盛り勝負飯の話など、よりパーソナルなことを語ってもらった。

Q: W杯での日本代表チームの活躍に、日本中が大興奮しました。特にゲームの流れが日本チームに来て、各プレイヤーからスーパープレイが連発するようなタイミングには、日本中すべての人に一体感が生まれました。メンバー同士の関係性もかなり親密に見えましたが、練習以外でも仲を深めたきっかけはありますか?

メンバー同士の関係性は、コート上で一緒に時間を過ごすことで築いていきましたが、それ以上に、コート外での関わり合いもとても大きな要素でした。例えば、代表チームはナショナルトレーニングセンターで合宿を行うのですが、期間中は外出をすることなく、毎日朝から晩まで練習をします。そうやって一定期間集中して練習することで、攻守の戦術がチーム内に浸透していき、それぞれの役割が明確になっていきます。

さらに練習が終わっても、合宿所から外出できないわけですから、食事や風呂、リラックスタイムもチームメンバーと一緒に過ごすことになる。僕たちは毎日夜になるとラウンジエリアに集まって、みんなでYouTubeを見たり、トランプで大富豪をプレイしたりしていました。施設内には勝湯(かちのゆ)という温泉もあるので、文字通り裸の付き合いをとおして関係性を深めていきました。

Q: 来日して6年が経ち、帰化のために日本語を猛勉強されたジョシュさんですが、日本語でのコミュニケーションには慣れましたか?

話を聞くことには大分慣れてきましたが、自分の気持ちを話したり、何かを正確に説明したりするのは、まだ英語じゃないとうまく伝えることができないですね。毎日日本語の勉強ノートを持ち歩いていて、わからない言葉があったらメモを取るようにしています。でもコートの上では、日本語も英語も関係なく、チームメイト同士、何を言おうとしているのか分かりあえます。

そんな関係性を築くためには、コートの中でも外でも密にコミュニケーションを取り、相手のことを理解し、どうすれば彼らが最高のパフォーマンスを発揮できるのかを知ることが大事です。誰かに怒鳴られるのが嫌いな人もいれば、激しく意見を言いあいたい人もいる。

紘也(川真田選手。滋賀レイクス所属)はまったく英語が話せないのですが、僕たちはいつもジョークやダジャレを言いあっています。彼は僕を日本人だと勘違いしている(笑)。興奮すると超高速の関西弁で話し続けるんです。そんな時は、「Hey, man! ゆっくり話して!」って落ちつかせるのに苦労します(笑)。チームメイトたちとそんな密な関係性を築けていれば、コート上での意思疎通はなにも問題はありません。

高校生の頃から変わらない目標が、常に自分が到達できる最高レベルのコートでプレイすることだという。

将来のバスケ界を担う次世代のために

Q: バスケ以外で今後力を入れて行きたいことはありますか?

新しい何かを始めることには常に前向きです。最近では「JHAWK」という自分のブランドもやっていますし、これから自身のホームページも立ち上げたいと考えています。将来的にはバスケットボールへの愛と日本への愛を結びつけたいですね。僕の目標は、日本国内でバスケを今よりもっと有名にして、ファンを増やすこと。将来を担う子供たちに、もっとバスケってかっこいいと思ってもらいたい。

そして僕自身も、彼らの目標になるような存在になりたい。私の父親は、常にワールドカップやオリンピックなどの目先のゴールに囚われることなく、将来のバスケ界を担う次世代のためによき模範になることが重要だと教えてくれました。今の子供たちが、次の渡邊雄太や八村塁になれるように、バスケに励むための環境をよりよくしていくことが僕の大きな目標です。

Q: W杯の期間中は、代表チームの試合の様子が連日テレビ中継され、大きな盛り上がりを見せました。日本のバスケシーンが発展している実感はありますか?

6年前に来日した当初は、ファンからのサポートも含め、日本人全体の関心レベルはそこまで高くなかったと感じていましたが、バスケに夢中になってくれたW杯での状況を見ると、ただただ嬉しい限りです。B.LEAGUEのレベルも年々向上し続けていて、海外から優秀な選手たちが来日しています。

日本のバスケはいま成長期にあって、チームやプレイヤーだけでなく、ファンやスポンサーも含め、すべての要素が連動しながら、大きな波をつくり始めています。特に今回のW杯では、日本のファンの皆さんが開催地の沖縄に来てくれて、会場で熱い声援を送ってくれて、我々はそれに応えるべく結果を出し、その様子がテレビで全国中継され、大きな熱狂が生まれたのだと思っています。すべての歯車が噛み合うことで、バスケのシーンは大きく成長すると思います。

祖父からの教えである「ネヴァー・ギヴ・アップ。どんな状況であれ常に戦い続けること」を胸に秘めて。

勝負飯は卵6個を使ったジョシュ流オムレツ

Q: 普段の試合や練習がないオフの日はどんなことをして過ごしていますか?

マッサージやストレッチなど、身体のケアにも気を遣っていますが、何か好きなことをできる時は、ゴルフやカラオケに行くのが好きです。ゴルフは僕が日本に来たばかりで重いホームシックにかかっていた時に、父親が近所のゴルフ練習場に連れていってくれたことがきっかけで好きになりました。

カラオケはチームメイトと一緒に週に1回は行っています。僕はJポップが大好きですが、みんな人それぞれ自分のスタイルを持っているのが面白いですよね。歌いたいけど音程が高くて歌えないような曲もたくさんあるのですが、カラオケの機械で音程を下げることもできるんですよね? こんなに通っているのにまだやり方がわからなくて(笑)。

Q: その他に、日本に来てから好きになったことはありますか?

長野の信州ブレイブウォリアーズにいた頃に、温泉が大好きになりました。一番好きな温泉は、長野駅からも近い「裾花峡天然温泉宿 うるおい館」の露天風呂です。そこからの景色が最高で、夜になると満点の星空の下で大きな山がライトアップされて、すごく綺麗で。

雪景色のなかで自然を眺めながら入るのもいいですよね。ここに行くといつもルーティンがあって、温泉、サウナ、水風呂、の順番でそれぞれ5分ずつ入り、それを3セット繰り返します。たまに呼吸法のエクササイズをすることもあります。ロウリュって言うんですかね? サウナに大きな団扇を持った人が入ってきて、すごい勢いで扇ぎだしたのを初めて見た時はびっくりしましたよ。

Q: 試合の前に行うルーティンはありますか?

ナイトゲームがある時は、試合前に好きな昼寝をするようにしています。昼に試合がある時は、朝にコンビニでタリーズのバリスタブラックアイスコーヒー缶を買って飲む。それと卵が好きなので、ホームゲームの場合は家で毎日卵6個を使ったオムレツを食べます。これが勝負飯です。

オリーブオイルをフライパンに引いて、玉ねぎやパプリカなどの野菜をソテーして、ベーコンかハムかソーセージを入れて、卵を流し入れるんですが、なにせ卵を6個も入れるので、なかなか普通のオムレツにするのが難しくて、つくるのにそれなりのコツが必要なんです。野菜をソテーしたら一度火を止めて、しばらく待ってから卵を入れます。余熱でちょっと卵に火がとおったら少しかき混ぜて、鍋蓋をしてまた弱火に。

すると上の面まで固まってくるので、チーズを振りかけて、少し溶けたぐらいで半分に折り曲げて完成です。みんなも試してみてね、って言いたいけれど、卵6個を使ったオムレツなんて、そうそうつくる機会はないですよね(笑)。

TEXT=佐野慎悟

PHOTOGRAPH=秦淳司

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