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2023.08.31

【バスケ日本代表・ホーキンソン】イチローに憧れ、16歳までは二刀流だった!?

2バスケットボール男子W杯(日本、フィリピン、インドネシアの3ヵ国共催)は2023年8月30日に1次リーグを終えた。E組の日本代表は1勝2敗で3位となり、17~32位決定リーグに回る。来夏のパリ五輪出場権を得るアジア最上位を目指し、8月31日にF組4位、同2日にF組3位と対戦。インサイドの軸として出色のプレーを続けるホーキンソン・ジョシュ(28歳=SR渋谷)に迫った。連載「アスリート・サバイブル」

歴史的初勝利の立役者

チームに1枠の国籍変更選手枠で日本代表に選出され、W杯に出場中のホーキンソン。1次リーグ3試合ではインサイドの軸として抜群の存在感を示した。

第1戦のドイツ戦は序盤にファウルを重ねた影響もあり、24分56秒の出場で、9得点10リバウンド。試合も63―81で敗れたが、第2戦のフィンランド戦は本領を発揮した。37分32秒出場で、28得点、19リバウンドと躍動し、試合も99―88で勝利。W杯で過去11戦全敗と一度も勝ったことがなかった欧州勢からの歴史的初勝利の立役者となった。

第3戦のオーストラリア戦も36分28秒出場で、両チーム最多33得点。NBA選手9人を擁する大国に89―109で敗れたものの、最後までゴール下で体を張り続けた。

16歳までは二刀流

世界ランクは日本の36位に対し、ドイツ11位、フィンランド24位、オーストラリア3位。格上ばかりのグループで2次リーグ進出を逃したが、2023年8月31日に始まる17~32位決定リーグに向けて、収穫の多い3試合だった。

2024年夏のパリ五輪出場権を得るアジア最上位の可能性は残しており、ホーキンソンは「目標はアジア1位。まだ残り2試合あるので頑張りたい」と視線を上げる。

ホーキンソンはアメリカ・シアトルで生まれ、4歳から野球とバスケを始めた。

16歳までは二刀流で、野球では最速150キロの本格派右腕。米ワシントン州にある野球の強豪ショアウッド高校で投手を務め、当時のチームメートには2018年サイ・ヤング賞のスネル(パドレス)ら大リーガーになった選手も複数いた。

ホーキンソンも将来を嘱望されていたが、16歳の時に右肘じん帯を損傷。野球を続けるにはバスケの1シーズンを棒に振って手術する必要があった。バスケに絞るなら保存療法が可能で、野球を諦める決断を下した。

両親ともに元プロバスケ選手。父はノルウェー、母はデンマークのクラブに所属した。ホーキンソンはバスケ一本に絞ると、親譲りのセンスで急成長。ワシントン州立大学の主力として、パシフィック12カンファレンスのオールスターに選出されるなど活躍した。

きっかけは憧れのイチロー

大学卒業時はNBA下部Gリーグや欧州の複数クラブからオファーが届くなか、ロサンゼルスで開催されたBリーグのワークアウトに参加。当時Bリーグ2部のFE名古屋からオファーを受け、入団を決めた。

幼少時代からのヒーローはイチロー。マリナーズの本拠地に応援に来る日本人ファンにも好印象を抱いており「イチローさんのおかげで日本にいいイメージを持っていた。直接的な理由ではないが、それも日本に来る後押しになった」と明かす。

来日7年目を迎えた2023年2月に日本国籍を取得。計画が動き始めたのは2019年3月21日、東京ドームで開催されたイチローの引退試合だった。

ホーキンソンは憧れの存在の現役最後の雄姿を目に焼き付けようと、父と生観戦。偶然、隣の席に日本バスケットボール協会の東野智弥技術委員長が座った。

東野氏はアメリカでバスケ関連のビジネスを手がけるホーキンソンの父と面識があり、国籍を取得して日本代表を目指す選択肢があることを伝えた。ホーキンソンは「自分はそこで国籍変更の話があったことは知らなかった。でもイチローさんの引退試合がスタートというのは運命を感じます」と実感を込める。

公式ではないが、自ら考えた日本名は「鷹大(たかひろ)」。米国時代の愛称「ビッグホーク(大きな鷹)」を引き継ぎ、昨季まで所属した信州や日本代表では「たかちゃん」と呼ばれている。

日本食も好きでお気に入りは、まぜそば。野沢菜やイナゴも食す。歌が得意で、人懐っこい性格。SNS上では野球のWBCで活躍したヌートバー(カージナルス)に似ているとの声も上がる。

2023年6月に米国に一時帰国した際には、代理人を通してイチローとの対面が実現。マリナーズとオリックスのユニホーム、イチローの書籍にサインをもらい「W杯頑張って」との言葉も掛けられた。

「憧れのヒーローに会えて本当にうれしかった。夢がかなった。自分は日本の血は継いでいないが、日本のために全力を尽くしたい」

W杯は残り2試合。日の丸を背負ってパリ五輪の舞台に立つため、17〜32位決定リーグでもフル回転する。

ホーキンソン・ジョシュ/Josh Hawkinson
1995年6月23日米ワシントン州シアトル生まれ。ショアウッド高校からワシントン州立大学に進学。2017年に当時B2リーグのFE名古屋でプロのキャリアをスタート。2020年に信州に移籍し、今季からSR渋谷でプレーする。2023年2月に日本国籍を取得し、2023年2月23日のイラン戦で日本代表デビュー。ノルウェーからシアトルに移住した父方の祖父を尊敬する。趣味はゴルフ。身長2m8cm、体重106kg。

■連載「アスリート・サバイブル」とは……
時代を自らサバイブするアスリートたちは、先の見えない日々のなかでどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。本連載「アスリート・サバイブル」では、スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う。

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連載「アスリート・サバイブル」

時代を自らサバイブするアスリートたちは、先の見えない日々のなかでどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。本連載「アスリート・サバイブル」では、スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う。

TEXT=木本新也

PHOTOGRAPH=YUTAKA/アフロスポーツ

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