PERSON

2024.06.20

バスケ日本代表・富永啓生「サマーリーグには参加せず、パリ五輪に全力を尽くす」

バスケットボール男子で全米大学体育協会(NCAA)1部、ネブラスカ大学を卒業した富永啓生(23歳)が運命の夏を迎える。将来のNBA入りを目標に掲げるなか、2024年夏はNBA入りへの登竜門であるサマーリーグには参加せず、パリ五輪に臨む日本代表に専念。花の都で日本バスケ界に新たな歴史を刻み、世界最高峰リーグ入りにつなげる青写真を描く。連載「アスリート・サバイブル」

バスケ富永選手

五輪は特別なもの。パリで日本のバスケの歴史をつくりたい

2019年に海を渡り5年。2024年5月にアメリカ・ネブラスカ大学を卒業した富永啓生が、6月6日の帰国会見で断固たる決意を口にした。

会見場のディーナゲッツ愛知は少年時代に練習に打ち込んだコート。原点と言える場所で「第一優先の目標はNBA選手になること。そこはぶらさずにやりたい」と強調した。

そのうえで、2024年の夏はNBAへの登竜門であるサマーリーグには参加しない意向を表明。「日本代表に専念する。来季の所属が決まっていないので、パリ五輪で活躍してオファーを頂けたら」とイメージを膨らませた。

サマーリーグは、NBAの全30チームが参加。ドラフト指名された新人や、2~3年目の若手、下部Gリーグに所属する選手らがプレーする。日本人ではNBA選手になった田臥勇太、渡邊雄太八村塁に加え、富樫勇樹馬場雄大、比江島慎らもコートに立っている。

サマーリーグはNBA入りへの絶好のアピールの舞台となるが、富永は日本代表の活動を優先する。2021年東京五輪はバスケットボール3人制で出場して8強入り。“本職”の5人制でも五輪の舞台への思いは強い。

富永はレンジャー短大で2シーズン、ネブラスカ大で3シーズンプレー。大学最終学年の2023~2024年シーズンは、ネブラスカ大を10年ぶりのNCAAトーナメント進出に導いた。

「ネブラスカの最終年で一番の目標だったマーチ・マッドネス(NCAAトーナメント)に出場できたのはよかった。チームから託される存在になれたことは嬉しかった」

「好きなチームはウォリアーズ。でも、キングスも自分に合うと思う」

シーズン後にはNBAのサクラメント・キングズ、ロサンゼルス・クリッパーズ、シカゴ・ブルズの練習に参加。他にも6~7クラブから練習参加のオファーが届いていたが「ワークアウト参加は日本代表合宿で日本に戻ってくるまでと決めていた」と日程的な問題で3クラブに絞った。

練習参加では「自分のストロングポイントを出せた」と手応えを得たが、2024年6月下旬のNBAドラフト前のショーケースとなるコンバインには招待されなかった。ドラフト指名は「ちょっと難しい」と自覚しており、別ルートのNBA入りを模索中。現実的にはNBA傘下のGリーグでのプレー機会を得ることなどが第一段階となる。

入団を希望するNBAチームについては「好きなチームは(ステフィン)カリー選手のいる(ゴールデンステイト)ウォリアーズだけど、ここに行きたいというこだわりはない。キングズのスタイルはトランジションからの3点シュートなど速い展開で自分に合うと思う」と語った。

富永は6月上旬に日本代表に合流。日の丸を背負うのは、アジア最上位の19位となりパリ五輪出場権を獲得した2023年夏のW杯以来約9ヵ月ぶりのこと。24人でスタートした合宿はパリ五輪本番までに12人に絞り込まれる。

2024年6月22日、23日にオーストラリアと強化試合を実施。その後、八村、渡辺の二枚看板が合流し、7月5日、7日には韓国と、7月中旬に欧州遠征に出発し、19日にはW杯王者ドイツ(ベルリン)と強化試合を行う。

五輪1次リーグは、ドイツ、フランス、そして五輪最終予選ラトビア大会の突破チームと同組。本番で対戦するチームと開幕直前にテストマッチを組む異例の強化スケジュールとなる。

富永は「五輪は特別なもの。パリで日本のバスケの歴史をつくりたい。楽しみ」と視線を上げた。外からのシュート力は世界屈指。W杯後の1年でゲームメークやフィジカル面が成長した自負もある。

身長1m88cmのサイズで世界最高峰リーグに認められるのは容易ではないが、当たり出したら止まらない3点シュートの精度に疑いの余地はない。パリで存在感を示して、夢への階段を駆け上がる。

富永啓生/Keisei Tominaga
2001年2月1日愛知県生まれ。岩成台中、桜丘高を経て、2019年に米レンジャー短大に進学。2021年にネブラスカ大に編入した。2021年東京五輪はバスケットボール3人制で8強入りに貢献。8試合に出場して全選手中6位の55得点を記録した。5人制の日本代表は2022年7月1日のW杯アジア予選オーストラリア戦でデビュー。父は2m11cmの長身で1998年世界選手権代表の啓之氏、母も元実業団選手。左利きで、ポジションはシューティングガード。身長1m88cm。

■連載「アスリート・サバイブル」とは……
時代を自らサバイブするアスリートたちは、先の見えない日々のなかでどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。本連載「アスリート・サバイブル」では、スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う。

↑ページTOPへ戻る

TEXT=木本新也

PHOTOGRAPH=新華社/アフロ

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2024年12月号

昂る、ソウル

東方神起

最新号を見る

定期購読はこちら

バックナンバー一覧

MAGAZINE 最新号

2024年12月号

昂る、ソウル

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ12月号』が2024年10月24日に発売となる。今回の特集は“昂る、ソウル”。最高にエンタテインメント性に富んだ国、韓国をさまざまな方向から紹介。表紙は東方神起が登場。日本デビュー20周年を目前に控えた今の心境を教えてくれた。

最新号を購入する

電子版も発売中!

バックナンバー一覧

SALON MEMBER ゲーテサロン

会員登録をすると、エクスクルーシブなイベントの数々や、スペシャルなプレゼント情報へアクセスが可能に。会員の皆様に、非日常な体験ができる機会をご提供します。

SALON MEMBERになる