世界最高峰のバスケリーグNBAの「NBA JAPAN GAMES 2022(NBAジャパンゲームズ2022)」が2022年9月30日~10月2日に埼玉・さいたまスーパーアリーナで開催された。今季、NBA4シーズン目を迎え、チームでも古株となった八村類が今思うこととは。連載「アスリート・サバイブル」とは……
コート内外で存在感を示す
母国で勝負のシーズンが幕を開けた。米プロバスケットボールNBAウィザーズの八村塁(24歳)が3年ぶりに開催されたNBAジャパンゲームズ2022に出場するため9月28~10月2日の日程で帰国。さいたまスーパーアリーナで9月30日、10月2日に開催されたウォリアーズとのプレシーズンマッチ2試合に出場した。
日本人選手がNBAチームの一員として母国でプレーするのは初。新たな歴史を刻み「たくさんのお客さんの前でウォリアーズと試合できたのはいい経験になった。日本の皆さんの前でプレーするのは数年ぶりだったので、僕も楽しめた。こういう機会が増えていけばいいなと思う」と充実感を漂わせた。
’19年6月のNBAドラフトでウィザーズから1巡目全体9位で指名され、今季がプロ4年目のシーズンとなる。国内でのプレーは無観客で開催された’21年夏の東京五輪以来、約1年2ヵ月ぶり。今回は2試合ともに満員の2万人を超えるファンが詰めかけた。
相手は昨季覇者で過去2度のシーズンMVPを誇るステフィン・カリー(34)らを擁するスター軍団だ。ウィザーズは第1戦が87-96、第2戦も95-104で敗れて連敗。地力の差を見せつけられたが、八村は2試合連続でパワーフォワードの位置で先発出場して、気を吐いた。
第1戦が25分10秒出場でチーム最多13得点と、9リバウンドを記録。第2戦は26分21秒の出場で11得点、10リバウンドの“ダブルダブル”(ひとりの選手が得点、リバウンド、アシスト、スティール、ブロックショットのうち2つで2桁を記録すること)を達成した。第1戦の第1クオーター序盤にカリーのドリブルを阻止して、ルーズボールを頭から滑り込み保持。気持ちの入ったプレーで母国のファンを沸かせた。
「4年目ということで、僕もチームにとって大事な存在のひとりだと思っている。今季はオフェンスでもディフェンスでもリバウンドでも、いろんなところで活躍したい」
今季のウィザーズはブラッドリー・ビール、クリスタプス・ポルジンギス、カイル・クーズマがチームの軸となる見通し。その他の選手は激しい定位置争いが予想される。今夏の八村はアジア杯、W杯アジア予選を戦った日本代表の活動には参加せず、体作りに専念。激しいトレーニングに加え、バランスの取れた食事や良質な睡眠などコート外の生活にも注力した。
昨季から体重は約4.5kg絞り、プレーの切れ味はアップ。チームメートと合同自主トレを実施して連係面も深めた。昨季は個人的な理由でチーム合流が遅れてシーズン前半戦を棒に振っただけに、新シーズンに懸ける思いは強い。
日本での2試合を終え、アンセルド監督は「塁はサイズがあり動きもいい。確実に自信をつけており、チームメートも彼を信頼している。それが大事。今回のようなプレーを続けてほしい」と高く評価。エースのビールは「塁はNBAの試合に慣れてきたので、どんどん成熟していくと思う。チームにとって最高のフォワード」と太鼓判を押した。
日本遠征で八村はコート外でも存在感を示した。第1戦後の30日夜には都内の高級鉄板焼き店でのチームの食事会をアレンジ。ポルジンギスが会見で「しゃぶしゃぶに行った。すごく美味しかった」と発言したことを伝え聞くと「鉄板焼きです。最後にすき焼きが出たので勘違いしたのだと思う。ちゃんと教えておきます」と苦笑いした。在籍4年目は、在籍11年目のビールに次ぐ2番目の古株。選手の入れ替わりの激しいチームのなかで、結束力アップにも一役買った。
ウィザーズの新シーズンの開幕戦は10月19日(日本時間10月20日)。敵地インディアナ州インディアナポリスでペイサーズと対戦する。八村は「4年目なのでシーズンがどう進むのか分かる。そのおかげで試合に集中することができるようになってきている。昨季は出られなかったので、プレーオフに出ることが目標になる」と2季ぶりのプレーオフ進出を目標に掲げた。5日間の日本滞在で感じ取った国内ファンの熱量もモチベーションにして、世界最高峰舞台で挑戦を続ける。
Rui Hachimura
1998年2月8日生まれ、富山県出身の24歳。ベナン人の父と日本人の母を持つ。富山・奥田中時代にバスケを始め、宮城・明成高で全国高校選抜優勝大会3連覇を達成。U-17世界選手権で得点王に輝き、米ゴンザガ大へ進学。2019年6月のNBAドラフトで1巡目9位指名でウィザーズに入団した。日本代表として’19年W杯、’21年東京五輪に出場。ポジションはフォワード。203cm、104kg。
■連載「アスリート・サバイブル」とは……
時代を自らサバイブするアスリートたちは、先の見えない日々のなかでどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。本連載「アスリート・サバイブル」では、スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う。