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2024.06.11

熱狂人生。 負債400億円のドン底から、時価総額243億円へ大逆転。40代のシーラ会長・杉本宏之は何をしたのか

かつて30歳で400億円の負債を抱えた杉本宏之は、もう一度起業を決意。不動産会社のシーラテクノロジーズを仲間と立ち上げた。企業スローガンは「世界中の不動産投資を民主化する」「愛とテクノロジーで世紀を超えて永続する」。再起から14年を経た2023年、業界初の米国ナスダック上場という夢を実現させた。そんな杉本にはこだわりの仕事の哲学があるという。40代・仕事人・会長・杉本の「ビジネスの原理原則」を解剖する熱狂のストーリー。

杉本宏之氏

米ナスダック上場での評価は時価総額243億円

“ようこそ、シーラテクノロジーズ”。米ニューヨーク・タイムズスクエアにあるナスダックの電光掲示板。そこに自社の名前が表示される光景は、杉本宏之にとって待ち望んでいたことだった。国内の不動産会社としては初の米ナスダック上場。プロップテックグループとして、不動産クラウドファンディング「利回りくん」、AI、太陽光、デベロッパー事業などを手がけるシーラテクノロジーズに、時価総額243億円という評価がついたのは海外投資家たちからの期待の表れとも言える。

「ようやく止まっていた時計の針を再び動かすことができたな、と。ここからは不動産クラウドファンディングの世界シェア1位を目指していきます」

止まっていた時計の針――杉本にとって、2010年のシーラテクノロジーズ創業から2023年3月の米ナスダック上場にいたるまでの道のりは、まさに“熱狂”という2文字が似合う。

自分のなかのスイッチが切り替わった瞬間

杉本が1回目の起業をしたのは2001年。不動産販売会社として急成長を遂げ、2005年に名証セントレックス(現ネクスト)に上場。28歳での株式上場は当時、業界では史上最年少の若さだった。“業界の風雲児”として注目を集めたが、リーマン・ショックの影響などを受け、急激に業績が悪化。2009年に民事再生法の適用申請が受理され、会社は倒産。ピーク時は400億円の負債を抱えた。

「今でも忘れられないですね。当時は毎日『どうなっているんだっ!』と債権者の方々がオフィスに殺到し行列ができるほどでした。時には、債権者のオフィスに連れていかれ、半ば軟禁状態で『金を返せ』『返せない』という押し問答を朝まで続けたことも。これが1年間ほぼ毎日続いたんです。前向きなことがいっさいできずに罵倒され続ける1年。流石にポジティブモンスターだった僕も心が折れかけました。人生で一番ツラい時期でしたね」

そんな杉本の心を支えたのが、ナンバー2として彼を支え続けた湯藤善行の言葉だった。現シーラテクノロジーズ代表取締役社長でもある。

「民事再生の終結が見えてきた頃、湯藤にこれから何をするんだ? と尋ねると、『独立します』と言うんです。そりゃそうだよな……と落ちこんでいると、『ただし、杉本宏之がもう一度立ち上がるというなら別です。元々ゼロでした。またゼロから始めましょう』と言ってくれたんです。絶望して、どん底で何もない自分に湯藤がかけてくれた言葉は今でも忘れません。あの時にスイッチが切り替わりました。もう一度やってやろうと」

杉本氏
杉本氏はエルメスのオーダースーツが勝負服。

どん底からの復活を支えた「原理原則」

2社目の起業にあたって、杉本には過去の失敗から経営で大事にすべき物事が明確に見えていた。彼はそれを「原理原則」という言葉で表現する。

例えば、原理原則のひとつに「自分が情熱を傾けられる仕事は失敗しない」というものがある。1社目の経営時、杉本は資本市場からの評価を気にし、売買のためだけに不動産を取り扱っていた。だが、今は違う。お客様や社員からの評価をもっとも大切にする。

「究極を言えば、会社はお客様と社員のもので、彼らが幸せであれば社会や株主に還元できる価値も必然的に高まっていくと思うんです。だから、自分はお客様と社員を第一に考えて、意思決定をするようにしています。資本の論理で言えば、会社は株主のものというのは当然分かっていますし、僕の考えは異端だと思いますが、考え続けた末にそんな結論になりました」

情熱を傾け続けるために「もういいや」で終わらせず、細かな部分までコミットする。規模が拡大するにつれ、権限移譲を進める経営者とは異なる。

「もちろん一定の部分までは信じて任せますよ。ただ任せすぎない。あらゆる情報や数字は毎日細かくチェックし、気になる部分はガンガンつっこみます」

この圧倒的なコミット量があるからこそ、成長を遂げてきたとも言える。「売上高は300億円超えも視野に入ってきている」と杉本は言う。

目の前のことに対して、夢中であり続ける。そんな杉本の“熱狂的な姿”は経営だけでなく、人付き合いにおいてもそうだ。彼の原理原則には付き合いに関する文言も多く並ぶ。

「相手に尽くし、愛した分が結果として返ってくるんだと思います。だから、まず相手に尽くすことを大事にしています」

杉本が“人を愛すること”について強く意識するようになったのは、自身の父親が深く関係している。彼の父親はもともと不動産会社を経営していたが、バブル崩壊とともに会社は倒産。その後、蒸発してしまう。「父親のことは全然よく思ってなかったですよ」と語る杉本だが、親戚から父親に関する話を聞き、考え方が180度変わった。

「父が49歳の時に僕が生まれたので、生きていれば97歳。海軍で戦争に行っているんです。叔父さんが言うには、父は家族の反対を押し切って17歳で志願して海軍に入隊。昭和20年の春に前線へと配属後、父の乗っていた駆逐艦が米潜水艦によって撃沈、生死の境を彷徨って味方の船に助けられ日本に辿りついたそうです。そして日本に命からがら帰国すると今度は実家の広島に原爆が落ちるわけです。そこから終戦にいたり、広島の街は現代人には想像もつかないほどに混沌とした状況だったそうです。

街は焼け野原となって、そこらじゅうに放置された死体、手足を失った復員兵、ヤクザや反グレ、アメリカ兵やMP、一般市民に戦災孤児。毎日殺人やレイプが起きるようなリアル北斗の拳、まさにマッドマックスの世界。そこで父は復員兵の友人たちとともに街を守る自警団をつくろうと決意したそうです。しかし、これが仇となり数ヵ月後に事件は起きてしまいました。

夜の見廻りでアメリカ兵が日本人女性をレイプする現場に立ち会ってしまったのです。他の仲間が尻込みをするなか、父は日本刀でアメリカ兵に斬りかかり、アメリカ兵は銃で応戦。その時に撃たれた2発の傷が確かに父の腹には残っていたんです。そこで父は生死の境を彷徨ったそうですが、仲間たちの間では英雄扱いだったそうです。

その話を聞いた時に、すごく誇らしい気持ちになって。ずっと自分は幼少期に父のせいで恵まれていない人生だと思っていたんですが、本当は恵まれていた。父がいたから自分がいる。そう思うと今まで父から言われた言葉や行動が意味を持つようになって……、厳しく教育を受けたことも、愛だったんだなと。だから、改めて人に愛を尽くしていこうと思えたんです」

相手のことを思うからこそ、表面的な言葉ではなく本音でぶつかり合う。また、杉本は困っている人ほど手を差し伸べることも大事にしている。自分も過去に大きな失敗をし、その時に手を差し伸べてくれた人がいたから今がある。「そこからいろんな縁が生まれ、結果的に自分のためになっていく」と杉本は語る。

自身の原理原則に沿った行動を続けた結果であろう。杉本が会長を務めるシーラテクノロジーズは2023年3月に米ナスダック上場を果たした。奇しくも「3月」は14年前、最初に起業した会社が民事再生手続きを申請し、受理された月でもあった。

「湯藤が上場の話が持ちあがった時に言ったんです。『もし、また民事再生の日に上場承認なんて受けられたら、我々の止まっていた針が動きだしますね』と。当時はまた洒落たこと言ってるよ、なんて感じでしたが(笑)、あれから5年。本当に3月にナスダック市場に上場でき、時計の針を再び動かすことができた。今も素晴らしい仲間たちに囲まれて経営できていることに感謝です」

再起をかけた熱狂的な挑戦の先に今がある。「40代、今が一番充実しています。これからまた皆さんを驚かせたいですね」と杉本。彼の"熱狂人生"はまだまだ先がある。

History of SYLA Technologies Group

2009
3月 シーラテクノロジーズの原点となる新会社を設立。

2010
11月 杉本を含め、4名の不動産プロフェッショナルが集結し、不動産投資に特化した企業であるシーラを設立。主に、自社ブランドマンション「SYFORME」の開発・売買・管理・仲介を一貫して手がける。

2017
12月 シーラテクノロジーズグループ全体の売上高が100億円を突破。

年表画像1

2020
1月 最先端IoTを駆使したスマートホーム機能と24時間体制の見守り機能を搭載した、不動産業界初のシニアテックマンションの販売開始。

2021
6月 不動産クラウドファンディング「利回りくん」のサービスを開始。「社会貢献、地域創生、誰かの夢に応援投資」をコンセプトに事業者の資金調達を実現。投資家の取引はオンラインですべて完了でき、一口1万円で手軽に始められることで話題に。

12月 AIシステム開発を手がけるDEVELと業務提携を締結。現在はグループ会社のシーラブレインに。

年表画像2
年表画像3

2022
2月 電力会社を保有する太陽光発電システムインテグレーターである会社をM&Aにて取得。現在はグループ会社のシーラソーラーに。

3月 住宅の断熱性・省エネ性能を上げることに加え、太陽光発電などによってエネルギーを創りだすZEH-M(ゼッチ・マンション)Orientedの認証を取得。

5月 「利回りくん」が不動産クラウドファンディング領域において会員数国内No.1(2023年3月時点では25.8万人)になる。

5月 再生可能エネルギー率100%のコンテナデータセンターを運営する新会社を設立。グループ会社のシーラバイオテックに。

2023
3月 シーラテクノロジーズが米国ナスダック市場に上場。国内不動産業界としては初の偉業となる。不動産クラウドファンディングサービスにおいて世界No.1を掲げ、不動産開発力とテクノロジー技術の駆使により、グローバルなサービスの展開を目指す。

年表画像4

10月 オンライン賃貸仲介事業を事業譲受。現在はグループ会社のシーラリアルティに

12月 シーラテクノロジーズグループ全体の売り上げ高が200億円を突破。

2024
3月 事業譲受したオンライン賃貸仲介事業イエッティの会員数が30万人を突破、日本一の会員数となる。

杉本宏之の6つのビジネスの原理原則

1.自分を愛してかつ人に愛を尽くす

多くの人から愛される理由は、人に愛を尽くして接するからだ。そして自分を愛することも忘れない。

2.本気で関わり本音を言う。表面的な言葉は言わない

大物経営者ほど「表面的な言葉」は何度も聞いている。だからこそ、相手が誰であれ常に「本音」をぶつける。

3.どんな人にも平等に接して悪口を言わない

立場や肩書きで相手を区別することはしない。誰に対しても平等に接し、悪口を言わないのが美学だ。

4.もういいや、にしない。任せすぎないで最終コミット

どれだけ会社の規模が大きくなっても、任せすぎることはしない。その強い意志が会社の成長につながっている。

5.ランチェスター戦略でブルーオーシャンを開拓

レッドオーシャン市場で戦ってもベンチャー企業に勝ち目はない。大事なのはブルーオーシャン市場で戦うこと。

6.自分が情熱を傾けられる仕事は失敗しない

「儲けられるか」ではなく「情熱が持てるか」で判断する。自分が情熱を注げるものは成功するまで取り組める。

シーラテクノロジーズが手がける注目投資物件、公開。

1.東京・渋谷|THE SYLA ザ・シーラ渋谷富ヶ谷

周辺は奥渋谷と呼ばれ、洗練されたレストランやカフェなどが揃う大人の街。緑溢れる代々木公園にも近く、利便性と自然に恵まれたロケーション。静寂と上質なプライバシー性をかなえる特別な7邸の分譲マンションだ。専有面積:90.99㎡。

自信を持って言える唯一無二の1棟
「THE SYLA」は超富裕層をターゲットにした、シーラが初めて企画したラグジュアリーマンションです。今年の第77回カンヌ国際映画祭で行われたパーティ「JAPAN NIGHT」とのコラボレーションでは、エグゼクティブの方々からご好評をいただけたと感じています。

2.神奈川・横須賀|SYLA HOTEL ZUSHI-HAYAMA

都心からクルマで約1時間。著名な建築家によって設計、サイバーエージェントの藤田晋社長から譲り受け、杉本が自らの住まいとしていた邸宅を、シーラがホテルコンドミニアム施設として蘇らせた。専有面積:463.92㎡。

夢のようなロケーション
バルコニーから見える美しい海のパノラマ。葉山に佇むこのホテルは、ビーチまで0分という立地を誇り、訪れる皆様に極上のリゾートライフお届けします。葉山の歴史と美しさを感じながら、この特別な宿泊施設で贅沢なひと時をお過ごしいただけると思います。

3.山梨・北杜|利回りくん×SANU 2nd Home 第1期 南アルプス 1st

国内会員数No.1を誇る不動産クラウドファンディングの「利回りくん」が、別荘サブスクブランド「SANU」とコラボレーション。南アルプスエリアに位置する宿泊施設の開発を行った。想定利回りは5.5%を予定。建築面積:未定。

今後もSANUとファンドを組成
SANUとの取り組みは、募集から1時間あまりで資金調達を達成。その高いクリエイティヴとブランド力、そしてプロダクト設計が利回りくんとも非常にマッチしていると実感しました。今後も第2期、第3期、と新しいファンドを組成していく予定です。

4.東京・東陽町|SYLA TOYOCHO シーラ東陽町

水平を基調にした、シャープでスッキリとした外観デザインのオフィスビル。存在感がありながらも周囲の環境に溶けこんでいるのが印象的だ。エントランスにはゲートが設けられ、街とのつながりを緩やかに演出する。専有面積:1F/50.00㎡、2F~10F/50.01㎡。

弊社が初開発したオフィスビル
シーラテクノロジーズの建築理念と価値観を具現化したもので、今後も同様の物件を増やしていく予定です。環境への配慮やデザインの美しさ、利便性の高さなど、弊社らしさを追求しながら、お客様に満足いただけるプロジェクトを開発し続けていきたいと思っています。

杉本宏之氏
杉本宏之/Hiroyuki Sugimoto
シーラテクノロジーズ 代表取締役会長 グループ 執行役員CEO。1977年神奈川県生まれ。高校卒業後、宅建取引主任者資格を取得し不動産会社に就職。2001年に独立し、エスグラントコーポレーションを設立。2005年、業界史上最年少で上場。2009年に民事再生を申請し、翌2010年にシーラホールディングス設立。2022年にシーラテクノロジーズへ社名変更。2023年米国ナスダック市場へ上場。
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熱狂人生

TEXT=新國翔大

PHOTOGRAPH=中森真

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