
バーのエントランスにはデンマークのアーティスト集団、スーパーフレックスの作品「WE ARE ALL IN THE SAME BOAT」が飾られている。杉本氏が好きな言葉でもある。
ワインラバーだから生みだせる余裕を愉しむ空間
藤田晋氏からもらいうけ「生涯最後に飲む」と決めていたロマネ・コンティ1995。杉本宏之氏がその栓を開けたのは、昨年シーラホールディングスが過去最高益を更新した日だった。
「コロナ禍でも社員が頑張ってくれた。こんな時だからこそ、幸せを感じ働いてもらいたいと、実感した1杯でした」

「K&H」の灯りがほのかに光る。
そう考える杉本氏だからこそ、昨年4月に恩人であるダイニングイノベーション インベストメント、ファウンダーの西山知義氏からの「西麻布の店のあとを任せたい」という頼みに迷いを感じることはなかった。「ならばスタッフも失業させない」と従業員全員と店舗を譲り受け、12月に新たに会員制ワインバー「K&H」を開店させるにいたった。
「周りの経営者には『この時期に店を開くなんて信じられない』と言われましたが、不動産とワインは似ています。多く買う人のところにいい情報が集まってくる。自分なりにビジネスプランをたてました」

語らう相手はマネージャー鈴木英児氏。
ワインは700本を常備、“King&Hero”の頭文字から名づけられた店名のとおり、ビジネスを戦い抜く者が、ワインとともに羽を休める場所になっている。
「スタッフたちが余裕を持ってワインを振る舞うことができれば、どんな時もそこに価値を感じてくださるお客様がいる。だから僕は、働く人が疲弊しないよう、給与も上げ、希望を持てる状態をつくっていくことを、会社同様に心がけないといけません。組織には持続性、人に続けてもらうことが必要ですから」

セラーに揃うロマネ・コンティ。
ワインの幅はそのまま人生の幅に
若い頃は、浴びるように酒を飲むこともあった。リーマンショックによる経営破綻、民事再生を経て、事業が波にのった頃からワインを嗜むようになり、やがてその余裕が「ともに働く人を大切にする」という基本に立ち返らせてくれた。そして現在、ワインの楽しみ方も変化してきたという。

スタッフと。左から、鈴木氏、統括・澤田和宏氏、ソムリエ田中亜梨沙氏、バーテンダー長谷川憲三氏。
「今はワインは心を鎮めてくれるものですね。この3年を振り返っただけでも、僕の人生は大きく変化しました。最高益を更新し、不動産投資のクラウドファンディングプラットフォームを立ち上げている。新しい世界が開ければ、必然的に新しいワインにも出合います。これまで飲まなかったものを飲み、新しい感覚を得る。もしかしたら人生の幅は、そのままワインの幅なのかもしれません」

飾られるアートはドイツのアーティスト、レギーネ・シューマンの作。
K&H
会員資格:入会金35万円/月会費1万
住所:非公開
TEL:非公開
理事長:見城 徹
副理事長:熊谷正寿、西山知義
杉本宏之のWine Profile
好きなワインの傾向
ドーヴネやルフレーヴ、コシュ・デュリなど、2018年本誌ワイン特集登場時はまったく飲まなかった白を楽しむように。
“ワインホリック”なエピソード
お客様に出す予定だった希少なワインを半分ほど自分で飲んでしまった。「もちろん、お金は払ってますよ。しかしどうしてもワインをビジネスとわりきることができないんです」
自分へのご褒美

ロマネ・コンティ 1986 ドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティ
約¥3,200,000
新しい事業が成功した暁には店のスタッフが「社長が飲むために」と仕入れてくれた1本を。
ツウな人に振る舞う

リシュブール 1988 ジャン・グロ
約¥210,000
杉本氏が若手だった頃に嗜んでいたが、今や価格が高騰。思い出とともにツウと飲みたい。
今注目の1本

B・ド・ボエル&クロフ 2004
約¥50,000
マグナムが基本のボエル&クロフが毎年6000本のみ造る750mlの「B」。一番搾り果汁を使って醸造。
今、呑みたい!

ヴォーヌ・ロマネ クロ・パラントゥ 1995 アンリ・ジャイエ
約¥2,100,000
最初に手に入れたアンリ・ジャイエ。周りで評価が高騰しており「改めてじっくり飲みたい」
※ワインの価格は「K&H」での販売価格ではありません
Hiroyuki Sugimoto
1977年神奈川県生まれ。2001年エスグラントコーポレーション設立。’05年業界史上最年少で上場。’09年シーラホールディングスを創業。グループ売上高197億円までに成長させる。