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2024.07.25

守れて打てる捕手、DeNA山本祐大がドラフト9位からリーグトップへと躍進した理由

育成が難しいと言われているキャッチャーで今季、急成長を遂げたDeNA・山本祐大がスターとなる前夜に迫った。

侍ジャパンシリーズ2024 日本代表の山本祐大と金丸夢斗(左)
投球練習を終えグータッチを交わす侍ジャパンシリーズ2024 日本代表の山本祐大と金丸夢斗(左)。

ドラフト9位→リーグトップへと急成長

プロ野球の世界で最も育成が難しいと言われているポジションがキャッチャーである。

アマチュアと比べて受ける投手の数が格段に増え、近年はデータ量も多くなっておりそれに対応する必要も出てくる。キャッチング、スローイング、ブロッキングという基本的なプレーももちろん重要であり、しっかり守れてさらに打てる捕手というのはなかなか出てこないのが現状。

そんななかで2023年から2024年にかけて急成長を遂げたのが、DeNAの山本祐大だ。

2017年のドラフト9位という順位での入団ながら、6年目の2023年はキャリアハイとなる71試合に出場し、打率も.277を記録。

2024年はさらに成績を伸ばし、規定打席にはわずかに届かないものの3割を超える打率をマークし、盗塁阻止率でもリーグ2位という見事な成績を残しているのだ。

高校時代は外野手としてプレー

そんな山本だがアマチュア時代は決して早くから有名な選手だったわけではない。

京都翔英では同学年にU15侍ジャパンにも選ばれていた石原彪(いしはらつよし。現・楽天)がいたこともあって、外野手としてプレーしていたのだ。

初めて実際にプレーを見たのは高校3年春に出場した近畿大会、対智弁和歌山戦だった。この試合で山本は1番、センターで出場。第2打席では四球で出塁したものの盗塁は失敗し、3打数ノーヒットに終わっている。当時のノートを見ても石原についての記載はあるものの、山本については何もメモは残っていない。

この年の夏には甲子園にも出場。初戦の樟南(しょうなん)戦では注目の好投手だった浜屋将太(現・西武)から第3打席にレフト前ヒットを放ったが、チームは1対9で敗れており、強い印象は残っていない。

当然プロのスカウトからも完全にノーマークだった。

高卒わずか1年でのプロ入り

そんな山本の才能が開花したのはBCリーグの滋賀(当時)に進んでからだ。

予定していた大学への進学を取りやめたという経緯もあって入団したのは5月だったが、本職の捕手に専念して1年目からレギュラーに定着。その年の9月にはBCリーグ選抜チームにも選ばれ、巨人三軍とオリックス二軍との交流試合にも出場している。

巨人との試合では、9番での出場ながら第2打席でレフト前ヒットを放つと、続くオリックス戦では2点タイムリーツーベースを含む2安打2打点という見事な活躍を見せたのだ。

オリックス戦を取材した際のノートには以下のようなメモが残っている。

「巨人戦よりもスローイングのスピードがあり、セカンド送球は実戦でも1.96秒をマーク。まだスローイングの動きに無駄な部分はあるが、地肩の強さは十分で、セカンドベース付近でボールの勢いが落ちない。

打撃も下半身の粘り強さはもうひとつだが、バットコントロールは良く、ミート力は十分。タイミングを外されてもついていくことができる。

(当時)19歳ということでまだ攻守に力強さはまだまだだが、プロを相手にも堂々とプレーしており、強肩をアピールしようという意欲も目立つ。下半身が強くなれば攻守にまだまだスケールアップする可能性も高い」

ちなみにイニング間のセカンド送球は2.00秒を切れば強肩と言われており、実戦で1.96秒というのは高く評価できる数字である。

また、当時のプロフィールを見ると78kgとなっており、高校3年時の68kgからわずか1年間で10kgの増量に成功していたことがわかる。高校野球を引退してからの期間もしっかりトレーニングを積み、独立リーグに進んでからも厳しい環境下でレベルアップを図ってきたことは間違いないだろう。

実際この年、山本はBCリーグで3割近い打率もマークしている。若さと成長力が高卒わずか1年でのプロ入りにつながったと言えそうだ。

阿部慎之助以来の快挙!?

プロ入り後もしばらくは二軍暮らしが続いたが、持ち味の強肩に磨きをかけて徐々に一軍出場機会を増やし、さらにバッティングに関しても年々確実性はアップしている。

もし規定打席に到達して捕手として打率3割をマークすれば、セ・リーグでは2012年の阿部慎之助(巨人)以来の快挙である。

日本の野球界全体にとっても貴重な若手の打てる捕手だけに、ここからさらにレベルアップして球界を代表する捕手へと成長してくれることを期待したい。

■連載「スターたちの夜明け前」とは
どんなスーパースターでも最初からそうだったわけではない。誰にでも雌伏の時期は存在しており、一つの試合やプレーがきっかけとなって才能が花開くというのもスポーツの世界ではよくあることである。そんな選手にとって大きなターニングポイントとなった瞬間にスポットを当てながら、スターとなる前夜とともに紹介していきたいと思う。

■著者・西尾典文/Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

TEXT=西尾典文

PHOTOGRAPH=日刊スポーツ/アフロ

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