HEALTH

2024.07.19

痛い・苦しいはもう古い! ここまで進化した最新「胃カメラ」事情【堀江貴文】

カラダは究極の資本であり、投資先である。そう断言する堀江貴文氏が、最先端の医療と美容情報を惜しげもなく伝授する本連載。第32回は「胃カメラ」。「痛い・苦しい」という噂や過去の経験で避けているとしたら、恐ろしいほどの損失となる。消化管のがん治療を変えていく内視鏡専門医・野中康一先生との対談に堀江氏も安堵の声を上げた。

堀江貴文連載32回

胃のみならず咽頭・食道・十二指腸も診る胃カメラ

堀江貴文(以下堀江) 消化管のがんは内視鏡で早期発見できれば多くの方が助かるといわれていますが、内視鏡医は胃カメラで何をどこまで診るんですか?

野中康一(以下野中) “胃カメラ”というのは通称で、正式には上部消化管内視鏡検査といいますが、口から挿入して咽頭、食道、胃、十二指腸という4つの臓器を診ます。ちなみに大腸カメラでは直腸と結腸の両方を診ます。がんの死亡者数の2位が大腸、3位が胃、男性では8位が食道なのですが、胃カメラと大腸カメラの検査を受けるだけで、これらのがんの早期発見ができ、内視鏡での治療も可能になるんです。

堀江 でも、胃カメラを嫌がる人はまだまだ多い。

野中 「飲みこむのがキツイ」とか「空気を入れられてお腹が張る」という不快な印象が先行していますね。本人は経験していないのに、周りの人が言う“辛いイメージの刷りこみ”で避ける人も多い。現在の胃カメラは、直径が5.4〜8.9ミリ。鉛筆かそれ以下の細さなので、鼻からも同じ内視鏡を挿入できるくらいですし、胃に送るのはCO2ガスなので即座に消化管に吸収されます。検査後にお腹が張るということはほぼありません。

堀江 そんなに進化しているのに、なんでバリウム検査がまだ行われているんですか。

野中 胃カメラに比べて費用が安価なのと、検診車で一度に多くの人を検査できるメリットはあります。けれど、バリウム検査は胃全体の変形はわかりますが早期がんは見つけにくく、要精密検査になると、結局、胃カメラが必須になります。

堀江 じゃあ検査は胃カメラでいいんじゃないですか? 

野中 ええ。胃はもちろん、咽頭や食道も含めて小さな病変を指摘できるし、検査を受ける方の苦痛がないように進化もしています。そこは知っていただきたいですね。

堀江 僕、先日、胃カメラの検査をしたんですよ。20年以上毎年欠かさず続けていて、鎮静剤を使ってもらって気持ちよく寝ている間に終わりました。(スマホの画面を見せながら)過去のカルテとか検査の画像は全部クラウドに上げているんです。

野中 新しい機能の内視鏡で検査していますね。咽頭、食道も胃の内側のひだも細かいし、きれいです。最新の胃カメラは先端に80倍〜100倍に拡大できる顕微鏡のような機能がついているので、局所を拡大して血管や腫瘍の状態もその場で詳しく観察できますし、細胞の動きまで見える1000倍拡大の内視鏡もあります。

さらにすごい機能として「NBI」という特殊光を搭載していて、ボタンをワンクリックするだけで、がんの部分が茶色に浮かび上がって見えます。早期のがんの範囲がはっきりわかるので、咽頭がんの早期発見率は8%から100%に、食道がんは55%から97%に跳ね上がったんですよ。内視鏡に力を入れている医師がいる病院なら、組織検査をしなくてもがんか否かの判断ができます。

堀江 食道や咽頭がんは予後が悪いから、内視鏡で早期発見できたほうが絶対にいいですね。

最新技術で早期がんも鮮明に検出する時代に

野中 さらに2020年からはAI搭載の内視鏡がでてきています。「CAD EYE」というシステムで、数ミリのポリープでも自動で検出・拡大して、がん化する可能性のある腫瘍性ポリープかどうかを9割以上の確率で判定できます。

堀江 それ、人間の判断と比較してどうなんですか?

野中 内視鏡専門のエキスパートとほぼ同等ですね。ですがAIは人間のように疲労しないので、精度が低下しません。高い精度で休みなくポリープの検出、鑑別を行える「CAD EYE」は、すでに全国の800以上の施設で稼働しているともいわれています。

堀江 先生は早期発見されたがんの内視鏡手術のエキスパートでもありますよね。

野中 僕が行っているのは早期がんの「内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)」。がんの深さが粘膜の表面だけの場合、患部を切除するのではなく、粘膜下層(腫瘍と筋層の間)に青色に着色したヒアルロン酸を注入し患部を浮かせた後に、内視鏡先端から出した細いナイフで剝ぎ取っていきます。手のひらくらいの範囲でも2時間ほどの手術で終わりますし、数日後には退院可能。患部も元の状態に戻りますから、後遺症もほぼありません。

堀江 内視鏡の進化はすさまじいですね。「胃カメラ」だと思っていたら、咽頭がんや食道がん、十二指腸がんまで見つかるというお得さがある。できることが知られてないのは、名前のせいだと思う。胃カメラの名前を変えちゃいましょう!

野中 それは思いつかなかったです(笑)。

堀江 クリニックはどう選べばいいですか?

野中 NBIやCAD EYE搭載の内視鏡を備えるクリニックはひとつの選択基準になりますが、診断技術も重要なので消化器内視鏡専門医がいるところ、そして公式HPに年間の検査数を明記しているところがよいでしょう。年間1000〜2000件以上が目安となります。そして衛生面も大事なので、クリニック内、特にトイレやゴミ箱周辺が清潔かどうかは確認してください。

堀江 頻度はどれくらい?

野中 検査の頻度は個々の状態で違いますので医師に確認を。ピロリ菌の除菌をしても、胃がんにならないわけではないので、胃カメラの検査は必要です。また、喫煙者や、飲酒で顔が赤くなる人は咽頭がん・食道がんのリスクが高いので1年に1回の検査を勧めたいですね。

自覚症状が現れた時には、がんは進行しているので、無症状の時こそ内視鏡検査を受けていただきたい。そうすればQOLを下げる抗がん剤放射線治療や手術をすることなく、内視鏡で治療できる可能性も高くなりますから。

野中氏
Kouichi Nonaka
1976年熊本県生まれ。東京女子医科大学病院 消化器内視鏡科主任教授。博士(医学)。早期の消化管がんに対する内視鏡診断・低侵襲手術に注力、内視鏡技術の普及に努める。日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医・指導医。日本消化器内視鏡学会専門医・指導医。

堀江貴文/Takafumi Horie
1972年福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジン開発や、アプリのプロデュース、会員制オンラインサロン運営など、さまざまな分野で活動する。予防医療普及協会理事。著書に『堀江貴文のChatGPT大全』ほか。本連載をまとめた書籍が好評発売中。

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