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2024.08.01

競泳・池江璃花子「五輪は出るだけではつまらない。4年後のロスで必ずリベンジする」

100年ぶりにフランス・パリで開催されている五輪で、競泳の池江璃花子(24歳・横浜ゴム)は女子100mバタフライの準決勝で12位に終わり、上位8人による決勝進出を逃した。3大会連続の五輪だが、個人種目に限れば2大会ぶりの出場。不本意な結果に終わり、レース直後には早々と2028年ロサンゼルス五輪でのリベンジを誓った。

「この1年間の努力は何だったんだろう」

タオルを頭に被り、池江璃花子がプールサイドに座り込んだ。

決勝進出を目標に掲げながら、準決勝敗退。溢れる涙が止まらなかった。

 「こんな形で個人種目が終わってしまったのはショック。すごく頑張ってきたつもりだったけど、この1年間の努力は何だったんだろう。悔しい気持ちと、何でできなかったんだろうという疑問がある」

予選を14 位で通過して迎えた準決勝。2組中1組の第1レーンに入り、序盤から飛ばした。前半は3位でターンしたが、後半は体が浮いて失速。57秒79で組6位、全体12位に沈んだ。

「16歳の自分を上回る」と初出場した2016年リオ五輪の決勝タイムを目標に設定していたが、0秒93届かなかった。

パリでの悔しさを糧に、ロサンゼルス五輪へリスタートする

2019年に白血病となり、2020年に復帰。1年後の東京五輪に出場するなど急激な復活を遂げた反動もあるのだろうか。ここ数年は伸び悩んだ。競技人生で初めて「泳ぎたくない」という心境に陥り「自分はなんて弱いんだろう。闘病中の時の方が強かった」と自分を責めた。

再び成長曲線を描くため、2023年10月から練習拠点をオーストラリアに移す。数々の有力選手を抱えるマイケル・ボール・コーチに師事。東京五輪4冠のエマ・マキオンらと練習に励んだ。

大の負けず嫌い。小学生時代から練習のタイムトライアルでも勝負にこだわり、腕相撲や30秒間に腹筋の回数を競う遊びの要素を取り入れたメニューでも、男子も含めて常にトップだった。

世界トップクラスの選手が揃う現在は、練習で競り負けることが多い。「いつか絶対にマキオンに勝つ」。日本にはない環境はモチベーションをかき立てた。

10kgの重りを引いて泳ぐ練習で体をいじめ、ゴムチューブに引っ張られるメニューでは通常は出せないスピードを体感。日本を出て約10ヵ月で体重は約3kgも増した。

練習場の目の前に居を構えるが、最初のマンションはゴキブリが大量発生。叫び声が近所に響き、隣に住むトレーナーが驚いて駆けつけたこともある。海外で心身のたくましさを増していた。

2021年東京五輪は複雑な心境で臨んだ。

開幕1年前のイベントに出演して、世界にメッセージを発信。当時はコロナ禍の五輪開催に否定的な意見も多く「IOC(国際オリンピック委員会)に利用された」など心ない声も耳に入った。

本番はリレー3種目に出場したが、女子メドレーの8位が最高成績。「リオ五輪の時は会場がキラキラして見えたが、東京五輪はあまりいい思い出がない」。それでも東京五輪の出場記念に五輪シンボルをかたどった金の指輪をつくるなど、夏の祭典への思いは変わらなかった。

白血病からの退院時に掲げた「パリ五輪に出場する」という目標は達成したが、高速化する世界の壁は高かった。

「五輪は出るだけではつまらない。決勝に残らないと戦いは始まらない。スタート台には立ったが、戦えずに終わってしまった。また4年後にここに戻ってきて、リベンジしようという気持ちになりました」

勝負は集大成と位置づける、2028年のロサンゼルス五輪。花の都の苦い経験が、池江璃花子を強くする。

池江璃花子/Rikako Ikee
2000年7月4日東京都生まれ。東京・淑徳巣鴨高校から日本大学へ進学。2023年春に日本大学を卒業し、横浜ゴムと所属契約を結ぶ。2016年リオデジャネイロ五輪は、女子100mバタフライで5位。2018年のアジア大会では6冠を達成する。2019年2月に白血病を公表。闘病生活を経て、2020年8月に実戦復帰した。2021年東京五輪は女子400mリレー8位、混合400mリレー9位。身長1m71cm。

TEXT=木本新也

PHOTOGRAPH=YUTAKA/アフロスポーツ

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