2024年6月に開催された東京ドーム公演では2日間で11万人を動員し、今夏も数々のロックフェスにも出演している櫻坂46。そのメンバーである藤吉夏鈴は、2022年より俳優としても一歩ずつキャリアを積み重ね、2024年8月9日公開の映画『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』で映画初主演を果たした。彼女へのインタビュー後編では、彼女を突き動かすものや、自身の未来像について聞いた。
突き動かすものは好奇心
2024年8月9日公開の映画『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』で藤吉夏鈴が演じる所結衣は、新聞部部長の杉原かさね(髙石あかり)の「自分を突き動かすものは自己顕示欲ではなく『探究心』」という言葉に影響を受ける。
藤吉に自身を突き動かすものを尋ねると「好奇心みたいなものが大きいです」という返答があった。
「映像作品が好きなので、ミュージックビデオを撮影しているときも、『今回はどんな作品になるんだろう』『そこでどんな表現ができるんだろう』とワクワクします。
でも、グループの中だけで活動していると、新しい経験をさせていただけることが年々減っていくのかなと、感じていたんです。
そんなときにこの作品で新しいことを経験させていただいて。こんなに素敵な人たちが同じ場所に集まって、ひとつの目標に向かいながら日々制作していく、モノを作っていくことがとにかく嬉しくて。
去年1年間は新しい経験ばかりで、ずっとワクワクしていました」
『あざとくて何が悪いの?』で気付かされた
藤吉は6年前、高3のときに坂道のオーディションに応募した。この世界に自ら足を踏み入れた当初は「ただ楽しくて、好きだからやっているだけ」だったが、ある時から意識が変わったと話す。
「最初は、ただ楽しくて、好きだからやっているみたいな感覚でした。
でも段々と、周りのことが見えるようになってきて。自分たちだけで作っているわけじゃなくて、周りの人たちもその人の人生の時間を削って、取り組んでいるんだなって。
例えば、衣装を作ってくださっている方もそうですし。本当に当たり前なんですけど、それに気付けてなかった時期は、そういう意識はなかったです。でも、それに気づいたときから、責任を持ってちゃんとやっていかなきゃなって思いました」
周りのことをきちんと見えるようになったのは、初めてグループの外に出て一人で仕事をした、バラエティ番組『あざとくて何が悪いの?』(テレビ朝日系)だった。番組内のドラマ『あざとドラマ』で、初めて本格的な演技に挑戦したのだ。
「それまでグループの外に出たことが全然なくて、中にいるときはそれに気付くことができなくて。
『あざとくて何が悪いの?』の現場でいろんな方と話していくうちに、『あー、今まで勘違いしてたな』『責任を持ってちゃんとやっていかなきゃ』と自覚したんです」
衣裳や脚本、小道具など、それぞれの部門の専門家たちがひとつの作品のためにある期間だけ集まり、現場が終わったら散り散りになっていく。その流動的で有機的な集合体を、彼女は「きれいだなと思います」と表現する。
「映画やドラマの現場は、初めましての人たちがその一瞬だけ集まって、一瞬で離れていく。それってよくよく考えたらすごいことですよね。
私は映像作品や、みんなで映像を作る現場が好きなので、監督が頭の中に思い描いているものを、お芝居を通して表現したいという気持ちが大きいです。みんなで作り上げた作品なのですごく愛おしく感じます」
映画は、配信されているものを携帯でチェックすることが多いという。作品のチョイスの仕方にも、彼女の好奇心旺盛な性格が感じられる。
「人に『好きな映画ある?』みたいに、おすすめを聞くことが多いです。人それぞれに全然違う系統のものをおすすめしてくれるので、それが楽しくて。
食わず嫌いをせず、なんでも見ます。最近だと『GO』(2001年)がよかったです。人間味のある温かい映画がすごく好きです」
人生プランはまったくない
「人生プランはまったくないです。あまり『こうなりたい』と決めたくないというか。目の前のことを経験すると、次の選択にも影響があると思うんです。それを繰り返しながら進んでいきたいタイプです」
演技の仕事を始めてから、藤吉は「ライブが変わった」と言われるようになったという。
「映像で確認すると、今までと違う人が映っていました。以前は普段の自分と変わらない人が映っていたのに。
最近は私じゃないみたいで、ちょっと気持ち悪さや寂しさもありつつ。でも、それでも観て下さった方が『良い』と言ってもらえるならその方がいいと思います。
グループから外に出て経験したことのおかげでちょっとずつ変われたのかなと思うと嬉しいです」
なりたい自分像を作らずに、新たな経験をするたびに変化し、誰も想像していなかった藤吉夏鈴を更新していく。そのために大事なものは、やはり「好奇心」だという。
「人と話すことや、みんなで作り上げていく過程が好きだから、『よしみんなで作るぞ!』というワクワクする気持ちや好奇心がなくなったときには、すべてを辞めようと決めています」
「仕事に打ち込んでいるときの表情が大好き」
惰性でモノづくりの現場にいてはいけないというこの考え方は、彼女がこの仕事や関わる人をリスペクトしているからだろう。
彼女は自分が中心にいる立場だが、「いつか、カメラさんや照明さんといったスタッフさんを、(撮られている)私目線で撮影した写真集を作りたいんです」という密かな夢を、少し照れくさそうに打ち明けた。
「スタッフのみなさんが、一人ひとり違ったこだわりを持って、それぞれの仕事に打ち込んでいるときの表情が大好きなんです。生き生きとしていて。
それを見るのがすごく楽しいし、その姿を世界中の人たちに見てほしいんです。たまに携帯でこっそり撮ってます。フラッシュでバレバレですが(笑)」
俳優業だけでなく、ファッションモデルの仕事も「もっと頑張りたいです」と意欲を見せる。こうして活躍のフィールドを広げていけるのは、「おうちみたい」と彼女が表現する「櫻坂46」があるからだろう。
「私がもしもダメになっちゃったときは、周りのみんなが支えてくれるだろうっていう、絶対的な信頼があります。そう思える人ってなかなかいないので、ありがたいですし、感謝しています」
衣装クレジット:ブルゾン¥82,500、ドレス¥129,800、シャツ¥94,600(すべてワイズ/ワイズ プレスルームTEL:03-5463-1540) イヤリング¥2,680(ミーティア/ロードス TEL:03-6416-1995) その他はスタイリスト私物