2024年8月9日公開の『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』は、高校の新聞部員が学園の闇に迫る青春コメディ映画だ。主人公の所結衣に抜擢されたのは、アイドルグループ・櫻坂46の藤吉夏鈴。アンニュイな雰囲気と芯の強さを兼ね備えた彼女は、俳優としても存在感を示しつつある。インタビューの前編では、彼女にとって初めての経験となった映画の現場について聞いた。
映画初出演にして主演作
2024年6月に開催された東京ドーム公演では2日間で11万人を動員し、今夏も数々のロックフェスにも出演している櫻坂46。
6thシングル「Start over!」でセンターに抜擢された藤吉夏鈴が、2024年8月9日公開の『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』で映画初出演にして主演を果たした。
2018年、乃木坂46・欅坂46・けやき坂46の「坂道合同新規メンバー募集オーディション」が開催され、当時18歳だった藤吉は自ら応募。見事に合格し、同年11月より欅坂46(現・櫻坂46)に配属された。
藤吉は個人活動として、バラエティ番組『あざとくて何が悪いの?』内の「あざと連ドラ」(2022年)、『アオハライド Season2』(2023年)、『作りたい女と食べたい女』 シーズン2(2024年)などのドラマで演技の仕事に挑戦してきた。
「クランクインするまでは、監督に早くお会いしたいな、キャストの皆さんと早く一緒にお芝居してみたいな、という好奇心だらけでした。
“主演”という立場についてはあまり気にならなかったというか……。経験がなさすぎて、そこまで思い至ることができなかったんだと思います」
櫻坂46では、シングル「Start over!」センターを務めた藤吉だが、楽曲のセンターと映画の中心である主演は、「まったく違いました」と振り返る。
「グループのセンターに立っているときは、ちゃんとやらなきゃ、センターができてなかったら曲がダメになってしまう、という責任感を感じることも多くありました。今回の映画は、『どんな新しいことが待っているんだろう?』とワクワクする気持ちが大きかったです。
クランクインしてからは、日が経つにつれてだんだん不安になっていきました。というのも、監督が目の動かし方や、前髪の長さにミリ単位までこだわってらっしゃって。
監督のこだわりに対応しきれる力が私自身にまだなかったので、苦戦しました。付いていくのに必死でしたね」
本作の監督は、間宮祥太朗主演の『殺さない彼と死なない彼女』(2019年)や、『恋は光』(2022年)などの青春映画で高い評価を得ている小林啓一だ。
「ご指導いただいている間、目がすごくキラキラ〜ッとしてて、少年のように見えました。そういった方に出会ったのが初めてだったので、監督の姿を見ているだけで楽しかったです」
ピュアで純粋な“トロッ子”
藤吉が演じた所結衣は文芸少女。憧れの作家“緑町このは”が在籍すると言われている、名門・市立櫻葉学園高等学校に入学するが、文芸部に入部することがかなわず、なりゆきで新聞部員として活動することになる。
「彼女はピュアで純粋で、いろんな感情を吸収しますし、自分の感情を表に出す子でもあります。彼女が出会う他のキャラクターたちに対して、彼女が興味を持っている姿をしっかりと映し出せればいいなと思っていました。
特に(新聞部の部長・杉原)かさねとのシーンがすごく多かったので、かさねに怒られながらもついていく姿が愛らしく映っていれば、物語のポイントになるかなと思いながら演じていました」
タイトルの“トロッ子”とは、かつての新聞業界用語の“新米記者”を意味する“トロッコ”に、結衣の姓・所をかけて、かさねが付けたあだ名である。トロッコは自走できない、つまり、まだ記者(汽車)として一人前でないという冷やかしの意味が含まれている。
「かさねに頭を叩かれるシーンは、2人の関係性がそこに映し出されていて、台本を読んでいるときから『可愛いな〜』と思っていたので、撮影が楽しみでした。現場でも笑いが止まらなくてツボっちゃうぐらい面白かったですし、楽しかったです」
同世代の共演者たちからの刺激
“かさね”を演じる髙石あかり(ドラマ『ベイビーわるきゅ〜れ』シリーズ)や、文芸部部長のお嬢様・西園寺茉莉役の久間田琳加(映画『おとななじみ』、『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』)など、それぞれに主演作を持つ同世代の共演者たちから、この現場で大いに刺激を受けたと話す。
「女性陣はみなさん男前でした。常に堂々としていて、肝が据わってらっしゃる。それって多分、いろんな現場を経験してきたからこその強さだと思うんです。
みなさんそれぞれの目の強さを持っていて、すごくカッコよかったです。私はまだ肝が座っていないので、みなさんに『カッコいいな〜』と憧れつつ、もっといろいろな経験をしなきゃなと思いました」
特に驚かされたのは、髙石あかりの目の輝きだった。
「私は監督から“目”についてずっとご指導いただいていたんですけど、髙石あかりさんがまさに、目の輝きを自由自在に操っている印象でした。この短い撮影期間で、なんとか吸収して自分も実践してみよう、と。
髙石さんはすごく可愛がってくださいました。(髙石のほうが)年下なんですけど(笑)、引っ張ってくださって。役柄どおり、ずっと姉御肌な感じでした」
学生特有の輝きが懐かしい
作品では、髙石が演じる“かさね”に「トロッ子」と呼ばれながら、記者としての心得や取材の方法を叩き込まれていくうちに、結衣は次第に新聞部の活動にのめり込んでいく。
2024年8月で23歳になる藤吉は、高校生が大人たちの悪事を暴こうと奮闘する姿に、ノスタルジーを感じているようだ。
「この子たちがひとつの目標に向かって力を合わせて突き進んでいく姿が、胸が苦しくなるぐらい輝いて見えました。
学生特有の輝きみたいなものに、ちょっと懐かしさを感じたりもしました。1人1人が強い意志を持って、ぶつかって、結託して、大人に立ち向かっていく姿がすごく勇敢で、芯がとおってて。
そんな姿にワクワクすると思いますし、『次のシーンはどうなるんだろう』というワクワクが続いていくストーリーにもなっています。
みなさん忙しない日常を生きてらっしゃると思うので、この映画を見ている時間だけは、彼らの姿がみなさんの癒しになったらいいなと思います」
後編に続く。
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