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2024.07.02

熱狂人生。 ポスト・スマホ、Apple Vision Pro対応の新時代アプリを開発! 空間コンピューティングとは

2024年6月、「iPhoneを超える革命」と噂される次世代デバイスApple Vision Pro(AVP)が日本に上陸した。AVPを装着すると、空間自体がコンピュータの画面になり、現実の空間とインターネットの世界が融合するという。そんな次世代デバイスAVPのアプリをいち早く開発した男がいる。会社経営をしながら新時代のアプリ開発を進め、寝袋で寝る日々……。次世代コンテンツづくりに熱中する、寝袋社長の素顔に迫る。

山口征浩氏

ポスト・スマホといわれるAVP対応のアプリを開発

「開発のため土日も会社に泊まりこみで寝袋生活をしました。これが合宿みたいで楽しくて。小さな会社でリソースも限られていますが、AIの力を借りて開発を進めたので、想定の8倍の速度でリリースできました」 

何台ものモニターに囲まれながらそう淡々と語るのは、新宿にあるITベンチャー企業STYLYのCEO・開発者の山口征浩だ。

山口は、2024年2月に米国で発売されたApple Vision Pro(以下AVP)の専用アプリ「STYLY for Vision Pro」を開発し、AVP発売日にリリース。ユーザーが自由に3Dの空間コンテンツを作成しシェアできる新時代のアプリが誕生した。

「AVPは、『空間コンピュータ』と呼ばれていて、その名のとおり、空間自体がコンピュータの役割を果たしてくれます。これは今まで世の中に普及してきたデジタルデバイスと革新的に異なります。今、私たちが使っているスマホやパソコンは、物理的なディスプレイがないと操作できませんよね。でもAVPでは、デジタルのディスプレイを空中に浮かせて、どこでも好きな場所に置くことができる。SF映画の世界がもう現実になっているんです」

現段階では、1台約60万円と高価で、重量もあるAVP。だが、今後軽量化され価格も安くなれば、誰もがAVPのような空間コンピュータを身につけて暮らすようになると話す山口。そんな未来を見据え、AVPを装着して仕事や私生活も送っているという。

「まだスマホのような手軽さはありませんが、今は携帯電話の初期のショルダーフォンのような段階。すぐに小型化されるはずです。現状でも解像度は驚くほど綺麗です。視線がポインター代わりになり、指先でクリック操作もできて身体の一部のように扱えます。そのうちスマホを持っている人はいなくなると思いますよ。私はAVPをつけて飛行機にも乗ります。銀行に入ろうとしたらさすがに止められましたが(笑)」

AVPで仕事をしている様子
写真は山口が実際にAVPを使って仕事をしている様子。入力のためのマウスやキーボードはなく、画面も目の前の空間に浮かび上がる。しかし周囲の空間は山口が働く「現実」の仕事部屋でバーチャルとリアルが融合されているのがわかる。

書籍代に50万円を使い独学でプログラミングを習得

「子どもの頃からせっかちで、『これだ! 』と思うものは突き詰めないと気が済まないタイプ。床で寝ようが、食事を抜こうが、構わないという感じで……。頭がバグってるんですよね(笑)」

中学時代にパソコンでソースコードを書き始めたのがこの世界に入るきっかけだった。半年間で50万円分の書籍を買ってプログラミング技術を習得。その後大学を中退し、コンピュータのセキュリティ会社に飛びこんだ。社長にまで上り詰めたが、技術力を磨きたい一心で退職し、身ひとつで渡米した。

「MIT(マサチューセッツ工科大学)に行きたかったのですが、まったく英語ができないのですぐに入学できるはずもなく……。まずボストンの語学学校に留学しました。半年後に、僕でも条件の合うMITの募集要項を見つけたんです。すかさず大学に詰め寄って何とか入れてもらえて。それからは気絶するほど勉強しました」

2年半MITで学び帰国した後に、当時世の中に出始めたばかりのVR(バーチャルリアリティ)コンテンツを体験して、『自分が追求すべきはこの世界だ! 』と感じたという山口。2016年に会社を立ち上げ、翌年、アプリ「STYLY」をリリースした。「STYLY」は、3D作品を簡単に制作し、世界中にシェアすることが可能で、「3D界のYouTube」ともいえるプラットフォームだ。現在世界39ヵ国で500万DL※を超え、世界中で浸透し始めている。(※ DL数は、APPストア、Googleストア、KDDI社モバイルアプリ内に搭載された「Satch X powered by STYLY」の合計)

「『STYLY』が、アーティストやクリエイターが活躍できるプラットフォームになればと思っています。自分がつくったプラットフォームに、優秀な若者たちが面白い3Dコンテンツをたくさんアップロードして、それを世界中の人が見て熱狂してくれたら嬉しいじゃないですか」

空間コンピューティングで新しいエンタテインメントを

これまで山口の会社では、空間コンピューティング時代を見据えたイベントを数多く開催してきた。なかでも注目されたのが、2023年10月に開催されたAIRRACE X。「空のF1」と呼ばれるエアレースの次世代版だ。

エアレースは、最高時速370㎞で飛ぶ小型飛行機でタイムを競う人気のレースだが、運営には巨額の資金を必要とし、開催できなくなっていた。

このエアレースを何とか復活させるために立ち上がったのが山口率いるSTYLY。世界中のレーサーがそれぞれの国で飛行を行い、バーチャル上で重ね合わせて競い合う、という新しい形で生まれ変わらせたのだ。これにより世界中のどこにいてもレースに参加するのが可能になった。

開催会場へ飛行機を輸送する必要もなくなり、大幅なコスト削減に成功。また、レースの舞台を渋谷の街中にしたことで、渋谷区や渋谷が拠点の企業が共同スポンサーとなり、資金面の問題も解消した。

「渋谷の街中でエアレースをするというありえないシチュエーションも、空間コンピューティングなら実現できる。渋谷の価値をさらに高められると、企業や団体の方にも賛同いただいています。これからもっと若い人たちのアイデアで技術を活用してもらい、新しい文化をどんどんつくってほしいですね」

人々の生活を急変革させたスマホ。それに代わる「空間コンピュータ」。AVPなどが普及する時代には、人々の生活や価値観、働き方、すべてが大きく変化すると山口は予測する。

「今後AIがさらに進化し、人間の仕事の多くをAIが担うことは間違いありません。自分のアバターが仕事を代わってくれるので、100や1000の仕事を同時にすることも可能です。課題解決型の仕事はAIで完結できるようになる。そうなると人間の仕事は再びクリエイティヴなものに戻ると思います。そんな時代になったら、ものづくりが得意な日本人なら面白い仕事ができるはず。日本が世界から『空間コンピューティング大国』として注目され、『日本のものづくりはやっぱりすごい! 』と評価されたら嬉しいです」

近い将来「空間コンピューティング」が普及する時代には、SNSで発信するような感覚で、手軽に3D空間をシェアするようになると話す山口。技術の民主化は私たちが思っている以上に速いスピードで訪れるのかもしれない。

「フルマチXR水族館」
STYLY社では、2022年より新潟市とタッグを組んで、空間コンピューティングによる町おこしを行っている。「STYLY」を活用したコンテンツの作成方法などを地元の若者に指導し、3年後には、地域の人たちだけで3Dコンテンツを作り「地方都市のみだけで自走」できるようになることを目指している。写真は新潟市の中心部にバーチャルな水族館を出現させた「フルマチXR水族館」。

山口征浩のターニングポイント

業界の仲間が語る山口征浩の素顔

「最高の仲間が自然と集まる愛される狂人」圓窓 代表取締役 澤円

「山口さんとは起業家の集まりで知り合いましたが、不思議なことを本気で話していて、清々しい嫉妬を感じました。『XRコンテンツをつくる』という発想ではなく、『人類の超能力を解放する』という壮大な企みは、私を含めた多くの人の心を摑み『普通の人生なんて退屈かも』とまで思わせてくれます」

圓窓 代表取締役 澤円氏
Madoka Sawa
実業家。元マイクロソフト伝説マネージャー。プレゼンに関する著書多数。

「世の中を変える変人と確信しています」VRアーティスト せきぐちあいみ

「VR業界の展示会などで山口さんとご一緒する機会が多くあるのですが、どの国の方の人から見ても、山口さんは変人だと思います(笑)。でも、未来のビジョンを語ると全員が納得して興味を抱く瞬間を何度も見てきました。目先のことに惑わされず、グローバルにこの業界を開拓してくれる方だと信じています」

VRアーティスト せきぐちあいみ氏
Aimi Sekiguchi
世界各国でVRパフォーマンスを披露。NFTオークションで作品が1300万円で落札。

「好きを突き詰める変態! エネルギーに圧倒されます」映画監督 松本准平

「飲み仲間のまささんは、創業当時から催眠術の研究をしていて『監督も催眠の勉強くらいしといたほうが演出のためにええやろ』と、毎晩、飲みながら催眠術の勉強をさせられました(笑)。まささんの、信念を貫いて突き進む力は並大抵のものではない。そして、仲間が困っていたら絶対に駆けつける情の深い男です」

映画監督 松本准平氏
Jumpei Matsumoto
主な作品に『車軸』、『桜色の風が咲く』、『最後の命』などがある。

山口征浩の3つの信条

1.失敗も、炎上すらもすべて“おいしい”と考える

挑戦することは失敗の連続。マイナスなことも“すべては経験”と考えるようにしている。「創業当初、倒産の危機に陥った時も、『最前列でこんな状況を体験できるのはおいしい。ドラマの主人公みたいだ』と言ったら、役員陣にはすごい目で見られました」

2.成功しそうな人とではなく、輝いている人と仕事をする

ベンチャーは一緒にやっていく仲間が重要。賢い人、要領がいい人、いろいろな人がいるが、“輝いている人”と仕事をするようにしている。「成功するかは、運もあると思うんです。ですから、やりたいことがあって、活き活きしている人と仕事をしたいですね」

3.変わっていることを恐れず偏愛を誇る

留学した際あまりに貧乏で、半年間、同級生の家に居座って家賃を浮かせたことも。「さすがに最後は、『いい加減にしろ』と追い出されましたが、周りは思っているほど自分のことなんて気にしていない。周りの評価を気にしている時間がもったいない」

山口征浩/Masahiro Yamaguchi
1977年大阪府生まれ。26歳で上場企業の経営を経験し、31歳で渡米。MITでエンジニアリングを学ぶ。2016年Psychic VR Lab(現・STYLY)を創業。2017年3D作品を制作しシェアできるアプリ「STYLY」を開発し500万DLを突破。2024年、AVP対応版の「STYLY for Vision Pro」をリリースする。

TEXT=設楽幸生

PHOTOGRAPH=廣瀬順二

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