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2024.06.29

『カメラを止めるな!』上田慎一郎監督が予測する未来の映画とは。空間コンピューティングで超絶ホラー体験が可能に!

スマホに代わる次世代デバイスとして注目されるApple Vision Pro(以下AVP)が2024年6月28日、遂に日本上陸を果たした。AVP初の解説書『スマホがなくなる日』を上梓した、ITベンチャーSTYLYの渡邊信彦COOは、「近い将来スマホを持つ人はいなくなり、人類はメガネ型デバイスをかけて生活も仕事もすようになる」と断言する。今回はそんな渡邊氏と、XRなどの最新技術を積極的に取り入れている『カメラをとめるな!』の上田慎一郎監督との対談が実現! 未来の映画では、虫が足から登ってくる感覚まで再現できる!? 上田監督が未来の技術で構想する、究極の体感型映画体験とは。※本記事は、『スマホがなくなる日』より、内容を一部抜粋、再構成したものです。

上田慎一郎監督とApple Vision Pro

「シンプルであることの凄さ」を実感したAVP体験

2018年『カメラを止めるな!』で日本中を巻き込む大旋風を起こした映画監督・上田慎一郎氏。VR映画『ブルーサーマルVR─はじまりの空─』や、自身のYouTube チャンネルに投稿している縦型映画など、従来の映画監督という型にとらわれない作品を生み出し続ける上田監督が描く、ミライの映画づくりとは?

渡邊 代表作『カメラを止めるな!』でもそうなんですが、上田監督は制限がある中での映画制作が得意なイメージがあります。VR映画についても、世の中でVRという言葉が浸透する前から制作されていると思うのですが、バーチャル技術を映画に取り入れようと思ったきっかけはあるんですか?

上田 ただただ好奇心旺盛なだけじゃないですかね(笑)。人から聞いたり、自分で体験してみて面白いと思ったことは、すぐに取り入れたくなっちゃうんですよ。これまで、VR映画や縦型ショートも撮っていますし、あとはバーチャルプロダクションという制作方法も取り入れています。LEDディスプレイの背景映像の前で役者が芝居をして、それを合成してつくる映画の種類があるんですが、それは普通の映画のようにロケ現場に行って撮影しに行くのではなく、スタジオで撮影をするんです。恐らく日本で、映画として作ったのは僕が初めてだと思うんですけど、そういった新しいテクノロジーを使って、今までにない作品をつくるっていうことが好きなんだと思います。

上田慎一郎監督と渡邊信彦
上田慎一郎/Shinichiro Ueda(右)
映画監督。1984年滋賀県生まれ。2010年に映画製作団体PANPOKOPINAを結成。2018年公開の監督作『カメラを止めるな!』が都内2館での上映から口コミで話題が広がり、全国で拡大上映される。

渡邊信彦/Nobuhiko Watanabe(左)
STYLY 取締役COO 。1968年千葉県生まれ。2016年 Psychic VR Lab(現STYLY)の設立に参画し取締役COO 就任。XR クリエイターの発掘や育成を目的としたプロジェクト「NEWVIEW(ニュービュー)」を立ち上げたほか、グローバルに活躍できる人材を輩出するために尽力している。

渡邊 例えばお客さんが同じものを見ていたとしても、途中から人によって展開がかわったりなど、大人数で見ているんだけれどもそれぞれ違うものを見るという、今までにないような作品ができる可能性がありますよね。

上田 『カメラを止めるな!』は、基本的に廃墟というワンシチュエーションの中を走り回る映画なんですが、視聴者が廃墟に入り込んだ気持ちになって、自分の好きな登場人物を追ったり、それぞれの楽しみ方ができるようにしました。これからつくる作品でもXR(現実とバーチャルを融合し、新しい体験を生み出す技術のことで、クロスリアリティの略称)の技術を使うことで、似たようなことが、それ以上のクオリティでできると思っているんです。本当に色々な作品の可能性が広がりますよね。

渡邊 XRの可能性という意味では、Apple Vision Pro を実際に体験してみていかがでしたか?

上田 やっぱり解像度ですかね。想像していた解像度と全然違うので、本当に臨場感もリアリティもあって感動しました。今までのデバイスって、「解像度がもうちょっと高ければ……」と思うことが多かったんですが、ここまで美しい映像技術がついに来たかと思いましたね。

渡邊 Apple Vision Pro は、環境光を3Dオブジェクトがちゃんと反映するような設定で出来ているので、電気を消すと、画面で見えている景色も連動して暗くなったりするんですよね。リアルに、本当の景色がそこにいるように見えるというのが、ひとつ大きなポイントだと思っているんです。体験した人の感想で多いのが、「きれい」とか、「本当にそこに居るみたい」というシンプルなものが多いんですが、ここが相当すごいポイントなんだと思うんです。

上田 そこに本当に実在する感じっていうのが、とても重要なんだなって改めて思いました。現実に近づけようとしている途中の段階のものだと、少しガッカリ感が出てしまいます。体験型のエンタメを作ろうとしている身としては、そこが重要なポイントなんですよね。解像度、リアルさなど、ストーリーに関係ない部分が気になると、お客さんが作品自体に集中できなくなる。だからこそシンプルなんだけど、解像度の凄さに感動しました。

Apple Vision Proを体験する上田慎一郎監督

空間コンピューティングの世界で映画監督の仕事はどう変わるのか?

渡邊 AVPなどに代表される空間コンピューティングを使って、どんなことができそうだと思いますか?

上田 出来そうなことはたくさんありますが、映画制作に生かすならロケハンに使いたいですね。スタッフも含めて打ち合わせの場にいながら、本当に現地に行ったかのように視察が出来る未来が来るのかなとも思います。会議室などでも、ロケ地の空間を出現させてその場所でリハーサルみたいなこともできますよね。現場でしかわからないこと、予期せぬアクシデントみたいなものってあるじゃないですか。そういう不安要素も拭えるんじゃないかなと思います。

また、リモートで衣装合わせもできそうですね。役者さんやスタッフのスケジュールを合わせるのも結構大変なので、それも実現したら結構助かります。衣装担当の人なんかは、持っていける服の数には限度がありますから、リモートなら試せる衣装の数も増えますよね。あとは、今はビデオ会議での打ち合わせが当たり前ですが、実際に会うのとでは空気感が違いますよね。でも、もしApple Vision Pro を使って打ち合わせするのがあたり前になったら、実際に会っているかのようにコミュニケーションが取れそうだなと思いました。

上田慎一郎

渡邊 それはできると思います! 他にも仕事で活躍しそうな場面はありそうですか?

上田 僕は普段、アイデアマップみたいなものをノートに書いたりするんですよ。いまは平面で書き留めているアイデアマップなんかも、空中に浮かせて自由に入れ替えたり、眺めたり、その中を歩き回れたら、話し相手とも共有しやすいですし、考えていることがより伝わり、アイデアもまとまり易くなりそうです。考えているうちに、色々やりたいことが出てきちゃいました(笑)。もはやデスクワークは座ってやるものだという常識すらも変わってくるんじゃないかなと思います。世の中から椅子がどんどんなくなっていくかもしれないですね(笑)。みんな立ったり歩いたりしながら仕事するのが当たり前の未来が本当にくるかもしれないです。

渡邊 私たちはいま、ディスプレイとキーボードに縛られている気がするんですよ。表示させたい資料がたくさんある人って、並べるモニターを2台とかに増やしたりするじゃないですか。それの究極系だと思ってるんですね。空間自体がモニターになって、しかもそれを好きな場所に配置することができる。キッチンにメモを置いておいて、仕事場には資料を置いておいて、リビングには趣味のものを置いておくみたいなことが可能になりますから。

空間コンピューティングでどんな映画作品を作ってみたい?

上田 今後僕がバーチャルを活用して是非やってみたいと思っていたのが、「スリルハウス」という企画です。お客さん自身に、いろんな体験がどんどん迫ってくるというコンテンツなんですが、例えば上から天井が迫ってきたり、でっかい大蛇に襲われる、虫が身体中に這いつくばるというような……。映像を見るんじゃなくて、主人公として実際に体験できるものをつくる、というアイデアです。 その作品の実現のために重要なポイントのひとつが、空間コンピューティングの解像度なんですよね。体験して解像度の高さを実感したので、「スリルハウス」は本当に怖いコンテンツになると思います。はやくみんなにも体験してほしいなぁ。

渡邊 このリアル感で、虫が足から登ってきたら相当気持ち悪いですよね。考えただけでも恐ろしいです(笑)。

上田 さっきApple Vision Proで、恐竜の画像を見た時に、「恐竜がでてくる夢を見てるみたいだな」って思たんですね。劇場で映画を見ている人でも、「起きて見る夢」って表現する人がいるんですが、これは本当の意味での「起きて見る夢」が表現できるんじゃないかと思っています。

渡邊 なるほど、現実と夢とがミックスして、起きてるんだけど夢を見ている、みたいなことですか?

上田 そうです。だって本当に恐竜が目の前にいたんです(笑)。でもそれは現実じゃない。どう言えばいいのか難しいですが、本当に夢みたいなんですよね。「没入感がすごい」っていう表現の、更に上の感覚ですかね。新しいコンテンツの可能性をすごく感じました。

上田慎一郎監督と渡邊信彦

スマホがなくなる日、どんなことをしてみたい?

上田 スマホがなくなる日、僕は自分博物館を作って仲間を呼びたいです。 今のスマホってアルバムがあって、そこに写真だったり、ビデオだったりが入ってますよね。それらが未来になったら、もう立体のアルバムみたいな仕様になっているんだと思います。いまよりもっと、入り込めるような記録が撮れるようになっていると思うんです。立体的な写真や立体的な映像を空間に自由に並べて、自分博物館を誰でも作れるような未来になっているはずなんです。そして遠い距離に住んでいる人でも、「今日何時から自分博物館やっているから来てー!」と世界中から友達を呼んで、一緒にその博物館の中をコミュニケーションを取りながら歩き回ることができたら面白いなって思いました。

渡邊 2040年くらいになったら、現代の単なる写真ではなくて、写真をAIが立体にしてくれて、そのシーンに実際に入れたりもするかもしれませんね。写真や動画に入って、その思い出を語ったり、「このスイーツ美味しかったよね」「またここいきたいね」とか、そんな体験型の写真が、AIによって実現可能だと思いますね。

上田 今だとお祭りの写真を見ながら「5年前に行ったあのお祭り、めっちゃ楽しかったよね」と会話をしたりしますが、将来はその写真の中に入り込めるってことですね。そのときにあった屋台とか、花火とか、お祭りの雰囲気をいつでも再現できて味わえるようになったらすごいですね。焼きそばのにおいとかも再現できたら本当にすごい。何かタイムマシーンみたいな感じですよね。

渡邊 リアルとバーチャルを融合させて、タイムマシーンが作れちゃいますよっていうことなんだろうなと思うんですね。

上田 タイムマシーンより先に出来そうですよね。過去を記録さえしておけば、いつでも過去に戻れる。もう一回味わいたい経験っていうのは、誰にでもあるでしょうから、すごく夢がありますね。

渡邊 だから意外と今のスマホの中の写真データ、大事かもしれないですね(笑)。

遂に日本上陸を果たしたApple Vision Pro初の解説書!

TEXT=ゲーテ編集部

PHOTOGRAPH=廣瀬順二

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