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2024.05.24

『カメラを止めるな!』上田慎一郎、20代で家や友人を失い、ホームレスを経験して気づいたこと

アスリート、文化人、経営者など各界のトップランナーによる、人生の特別講義を提供するイベント「Climbers(クライマーズ)」。その第7弾が、2024年5月15日、16日の2日間にわたって開催され、ビジネスパーソンを大いに熱狂させた。今回、映画監督の上田慎一郎さんによる特別講義を一部抜粋して掲載。すべての講義を聴くことができるアーカイブ配信はこちら。※2024年5月20日〜5月31日18時までの無料限定公開。申し込みは画面内右上もしくは下の「視聴登録はこちら」より

上田慎一郎

ショートカットしようとして遠回りの日々

高校時代に映画に魅せられ、父のハンディカムを借りて作品を作り始めました。文化祭で上映した作品は評判がよく、先生に褒めてもらえた。高3で作った戦争映画はさらに大きな話題を集めて、地元の新聞で取り上げられた。卒業する頃には映画監督という職業を意識するようになっていましたね。

演劇や映画関連の学部がある大学から「うちでやってみないか」とスカウトが来た。でも、当時は「日本に収まっていたらダメだ。夢はハリウッドだ」なんて思っていて、まずは英会話を鍛えようと大阪にある英語の専門学校に進学。でも、合わなくて2、3ヵ月で退学しました。

その後、19歳の時に環境を変えようと大阪を離れ、ヒッチハイクで東京に出た。飲食店やケータイショップでバイトをしながら、渋谷のハチ公前で手作りのDVDやポストカードを売る生活。映画を作る資金が欲しかったんです。そうした生活の中でマルチ商法の被害にあってしまい、200万円の借金。死ぬ気でバイトに励んで完済しました。そしたら「小説を出版しないか?」という話が来て、面白そうだと乗ってしまった。これで、再び200万円の借金を背負いました。

これでやっと目が覚めた。「映画制作の資金を作るためにショートカットをしようとして、遠回りばかりしている。今の僕は映画を撮ってもいないじゃないか」と。実際、20歳から25歳の間、僕は映画を1本も作っていなかった。まずは映画に集中しようと、改めて決意したんです。

映画『カメラを止めるな!』が予想外のヒット

そして2017年に制作したのが『カメラを止めるな!』。制作費は300万円しかなく、当時は無名だった役者やスタッフを集めて作った。映画は6日間だけイベント上映して終わるはずでしたが、口コミで人気が拡大し、最終的には300館以上で上映されました。まったくヒットするなんて思っていなかった映画が30億円の売上を記録したんです。

道中は山あり谷あり。若い頃はマルチ商法にひっかかり、家や友人を失い、ホームレス生活を送ったこともある。でも今にして思えば、僕はそんな生活を楽しんでいた。逆境が好きだし、ピンチになるほど燃えるんですよね。

僕は「100万円もらえるよりも、自分が100万円払ってでもしたいことしかしない」方が良いと思っています。それで遠回りすることもあるけど、最終的には成功率が高まるような気がします。好きなことだけをやれば、モチベーションが上がる。そんな僕の姿を見て、周りの役者やスタッフのモチベーションも上がっていく。それが映画制作を成功させる秘訣だと思っています。

これからも自分が観たいと思える映画を作っていきたい。誰もやっていないことを成し遂げたい。おそらく今後も山あり谷あり。今も「道中」の真っ最中なんです。

▶︎▶︎上田慎一郎さんの講義全文を動画でチェック。
2024年5月20日〜5月31日18時までの無料限定公開。申し込みは画面内右上もしくは下の「視聴登録はこちら」より。※アーカイブ視聴申し込みは5月31日18時まで

上田慎一郎/Shinichiro Ueda 
1984年滋賀県出身。中学生の頃から自主映画を撮りはじめ、高校卒業後も独学で映画を学ぶ。2018年、初の劇場用長編『カメラを止めるな!』が2館から350館へ拡大する異例の大ヒットを記録。2023年縦型短編監督作『レンタル部下』がTikTokと第76回カンヌ国際映画祭による「TikTokShortFilm コンペティション」にてグランプリを受賞し話題に。監督最新作となる劇場長編映画『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』が2024年11月に公開予定。

TEXT=川岸徹

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