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GOLF

2024.03.10

「プロゴルファーで、身体のどこも痛くない奴なんていない」――池田勇太|ゴルフは名言でうまくなる

池田勇太プロといえば、長年にわたり男子プロゴルフツアーを代表する選手として、また石川遼プロのライバルとしても試合を盛り上げてきた選手だ。日本ツアーでは21勝を記録し、14シーズンにわたりシード権を守っていたが、2023年は怪我に苦しみ、ついにシードを失った。

池田プロを悩ませた身体の痛み

以前から、指や手首の痛み、首から左上半身にかけての痛みなど怪我による不調を抱えることがあった池田プロだが、なんとか怪我を克服してシードを守ってきていたところが只者ではない。表題の言葉もそんなシーズン中に記者のインタビューに応えて語ったものだ。

シードを失った2023年シーズンは、顎関節の痛みが原因で成績が上がらなかった。その痛みが発端となり身体のあちらこちらに異変が生じ、ひどいときには握力にまで影響してクラブが握れない状態にもなったそうだ。

症状自体は2年ほど前から始まったそうだが、だましだましやっているうちに徐々に悪化し、2023年の秋にはどうにもならない状態にまでなってしまった。今オフのあいだに、歯を少し削って小さくし、その上に人工歯を被せることで噛み合わせがよくなるよう調整する治療を行うそうだ。

おかゆや豆腐などやわらかい流動食に近いものしか食べられないほど、症状が悪化してしまったようだが、治療が効果を発揮して、池田プロのあのふてぶてしいほどにしぶといゴルフがまた復活することを願ってやまない。

プロゴルファーは、池田プロに限らず、毎日の練習や試合で身体を酷使しているから、誰もが多かれ少なかれ、身体のどこかに痛みや違和感を持ちながらツアーを戦っている。他のスポーツに比べると、中年やシニアになってもプロとして試合に出られるから、比較的ゆるいスポーツだと思われがちだが、現実はそう甘くないのだ。

ある程度の重量と長さのあるクラブを一方向へスウィングすることは、かたよった筋肉の使い方になるし、負荷が強くかかる部位もかたよる。そのため、プロならずともすべてのゴルファーには怪我をしやすい部位が存在する。

とくに高齢ゴルファーは無理をすると、すぐに身体を痛めてしまうので、怪我をしやすい部位を知って痛めないよう気をつけることが肝要だ。長く健康寿命を維持し、できれば亡くなる直前までゴルフをしていたいと、ゴルファーなら誰しもが思うことだろう。

70代や80代でもできるからと甘くみていると、30代や40代で身体を痛めてしまうのがゴルフスウィングだ。重くて長いものを振り回すのは、それほど怪我をしやすいことなのだ。では、ゴルファーが痛めてしまいやすい身体の部位とは、どのようなところだろうか。

痛めやすい4大部位――①背中 ②くび

とくに多いのは、背中・首・ひじ・腰の4か所ではないだろうか。私自身もこの4つはすべて痛めた経験がある。この他にも、指・手首・足首・ひざ・肩など関節と名がつくすべての部位およびその周辺の筋肉を痛める可能性がある。ゴルフスウィングは、身体のほとんどの関節とその周囲の筋肉や靱帯を駆使する全身運動だからだ。

まず背中だが、これは飛ばしたいと思って強振することで、いとも簡単に痛めてしまう。強くひと振りした瞬間にピキッと電気が走ったような痛みを感じ、その後なかなか治らなくなるケースのほかに、まじめに練習を続けていたら、次第に疲労が蓄積してだんだんと痛くなってくる慢性的なケースもある。

私は年齢が上がるにつれて落ちる飛距離を維持するため、週に4日ぐらいは素振り用スティックでシャドースウィングを50回ほどやっている。以前は100回をノルマにしていたが、そのおかげでヘッドスピードがマン振りすれば48m/秒も出るようになった時期があった。調子に乗って冬の寒い日のドラコンホールで強振した瞬間、「電気が走る」ほうの痛みが出た。そして、少し休むと痛みは引くが、またゴルフに行くとぶり返す……を繰り返すようになった。

半年ほど経っても痛みのぶり返しは治らなかったので鍼治療を受けたところ、だいぶ軽減されたが、今でも多少の張りや違和感は残っている。筋肉や靱帯の損傷で起きた痛みというのは、完全に解消するのには相当長い期間を要するようだ。完治するまでゴルフをしないというわけにはいかないから、これ以上悪化しないよう、無理せずうまく付き合いながらゴルフをするしかない。

原因はドラコンホールで距離を出そうと100%に近い強振をしてしまったことだ。暖かい夏場ならまだしも、冬の気温が低いときにマン振りすると怪我のもととなる。とくに高齢ゴルファーは年齢とともに毎年飛距離が落ちていくので、どんどん強振したい気持ちになりがちだが、80~90%ぐらいの少し余裕を持ったスウィングで出る飛距離が自分の飛距離だと割り切るべきかと思う。

飛距離アップのために筋力トレーニングをして筋力がついたとしても、それでマン振りすると筋力の強さに靱帯が負けて痛めることもある。やはり、練習場でもコースでも、少しゆとりのあるスウィングを心がけることが大事だ。地道にトレーニングしていれば、そのゆとりあるスウィングでもヘッドスピードが上がってくるので、「徐々にゆっくりと」を心がけたいものだ。

次に挙げるのは、池田プロも苦労しただ。ベン・ホーガン「クラブがインパクトゾーンにあるあいだ、顔の左側面が動かなければ選手になれる」と言ったように、顔を少し右向きに残して振り抜くとテコの原理が働いてヘッドが加速する。松山英樹プロのインパクトも顔がしっかり残っているが、それがあの飛んで正確なアイアンショットの原動力となっているらしい。

ただこの動きは、肩は大きく速く回転しているのに、首は固定して動かさないことになるから、首周辺の筋肉や靱帯、ときには頸椎をも痛めてしまうことにつながる。頸椎まで損傷することは多くはないが、いわゆる「寝違え」を起こしたような痛みが出ることは珍しくない。

プロの中には、アニカ・ソレンスタムのように、インパクト寸前ぐらいからルックアップを始めて首への負担を軽減させているプレーヤーもいる。クラブヘッドをインパクトゾーンで走らせるためには顔を残したほうが効果は大きいが、インパクト後はいつまでもボールのあった場所を見つめているのではなく、すみやかにルックアップへ移行したほうがいいようだ。

首の痛みは比較的慢性化することは少ないようだが、「寝違え」と同じように数日は痛みが消えない。痛みが出てしまったら、最低でも3日ぐらいは休んで湿布薬などで治療したほうがいい。

痛めやすい4大部位――③ひじ ④腰

3つ目はひじの痛み、俗にいう「ゴルフひじ」という症状だ。左ひじに痛みが出るケースが多いが、右ひじも痛くなることはある。スウィングによる負荷がかかることや、ダフったりしたときの衝撃が影響して痛めることになる。まじめに練習するゴルファーほどなりやすい症状だが、なかなか治りにくいので、一度痛みが出ると厄介だ。

これはいわゆる腱鞘炎の類だから、痛みが出たらしばらくは休ませるしかない。鈍痛なのでなんとかやれると思って、無理に練習を続けると慢性化してしまうから、過度な練習は控えたほうがいい。ひじの上部を圧迫する「ゴルフひじ用サポーター」が売っているので、保護しながら焦らずゆっくり回復を待つことだ。

4つ目は、岡本綾子プロタイガー・ウッズなど多くのプロを悩ませた腰痛だ。腰痛にはあらゆる種類がある。腰方形筋が炎症を起こすギックリ腰、腰椎ヘルニア、坐骨神経痛、脊柱管狭窄症などだ。

ギックリ腰は湿布薬と消炎鎮痛剤、筋肉を柔らかくほぐす飲み薬などの併用で、だいたい1~2週間ほどでゴルフに復帰できる。しかし、腰椎ヘルニア、坐骨神経痛、脊柱管狭窄症などは、時として手術が必要な場合もあるから、医師の診断を受け、ゴルフが可能かどうか判断を仰いだほうがいい。症状がひどいと、歩くことすらままならぬ状況になるから、ゴルフはもちろん、正常な生活すら危うくなる。

腰は「にくづきのかなめ」というだけあって、痛みがあるとゴルフどころか何もできなくなる。痛みがそれほどでない場合も、足が痺れるなどして生活に影響が出ることもある。高齢ゴルファーは絶対に過信せず、寒い日などはプレーを控えるか、腰痛ベルトで保護し、使い捨てカイロで温めるなど、完全防備してラウンドしたほうが無難だ。

以上、怪我をしやすい代表的な4大部位を取り上げた。前述したように、ゴルフスウィングは身体にあるほとんどの関節とその周囲の筋肉・靱帯を使うので、いたるところを怪我する可能性がある。

高齢ゴルファーに限らず、30代・40代・50代でも大なり小なり怪我をするリスクは背負っていると認識しておいたほうがいいだろう。練習にしろラウンドにしろ、とにかく無理なスウィングをしないことだ。怪我をしないことが何より一番いいに決まっているのだから。

参考資料:

・「シード喪失の池田勇太 “流動食”からの再起へ」ゴルフダイジェスト・オンライン、2024年2月2日

・「ゴルフで怪我をしやすい4つの部位!痛くなったら要注意です!」Caddy、2022年2月1日

この記事は幻冬舎plusからの転載です。
連載:ゴルフは名言でうまくなる
岡上貞夫

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