連載「ヴィンテージウォッチ再考」の第25回は、ロレックスの「サブマリーナー Ref.5513」を取り上げる。
保存状態に優れた“フルセット”の「サブマリーナー Ref.5513」
仮に「コスモグラフ デイトナ」を“キング オブ ロレックス”とするなら、「サブマリーナー」は“近代ダイバーズウォッチの模範的存在”だと言えるだろう。
ヴィンテージロレックスにおける「サブマリーナー」といえば、真っ先に「Ref.5513」が挙げられる。しかし、ひと口に「Ref.5513」と言っても、軍用モデルもあれば、通称“エクスプローラーダイヤル”など市場流通数が極めて少ないレアモデルもあるので、ここでは現実的に入手ができる可能性のある定番モデルについて言及する。
そもそも「Ref.5513」とは、クロノメーター仕様機種である「サブマリーナーRef.5512」の廉価版だと言われており、クロノメーターは取得していない。ロレックスのなかでも指折りのロングセラーで、1960年代初頭から1980年代後半まで製造されていた。
大別するとミラーダイヤルとマットダイヤルに分かれ、後者の方が入手しやすい。
今回、紹介するマットダイヤルの「Ref.5513」は、来歴や保存状態に注目すべきモデルだ。この個体はおそらくワンオーナーであったため、“手垢”がほとんどついていない。
傍から見ると風防などは傷だらけであるが、ケースやブレスには非常にエッジ感があり研磨の痕跡は見られず、ここにヴィンテージウォッチとしての価値がある。ちなみに消耗品である風防はそこまで評価の対象でとはならないため、後から磨いても何ら問題ない。
また、付属品の充実ぶりにも注目。コレクターが言うところの“フルセットの”状態であるため、時計自体は決してレアなモデルではないにもかかわらず、ヴィンテージウォッチとしての評価されているのだ。
同じ「サブマリーナー Ref.5513」だとしても、さまざまな基準に照らし合わせて見ることで市場での価値も変わってくる。一見すると小さな違いかもしれないが、それがヴィンテージウォッチとしての評価に大きな差をつけていくことを覚えておこう。
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■連載「ヴィンテージウォッチ再考」とは
インターネットやSNSの普及からあらゆる時代の時計が簡単に入手できるようになった。そうはいったところで、パーツの整合性や真贋の問題が問われるヴィンテージウォッチの品定めは一筋縄ではいかない。本連載では、ヴィンテージの魅力を再考しながら、さまざまな角度から評価すべきポイントを解説していく。