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GOLF

2024.03.07

「ショートパットは、ラウンド前の練習グリーンで練習しても当てにならない」――田原紘|ゴルフは名言でうまくなる

田原紘プロは、商社に就職したものの25歳から始めたゴルフにハマり、30歳で脱サラしてプロゴルファーになった異色の経歴の持ち主だ。レギュラーツアーでの目立った戦績はないが、シニアに入って1996年の全豪シニアオープンで優勝、1999年の東北プロシニアでも優勝した。豊富な知識と独自の理論で、アマチュアの指導に定評があった。2021年に79歳で亡くなっている。

定説に反する田原プロの主張

田原プロは、「ラウンド前の練習グリーンでショートパットの練習をしても当てにならないから、むしろやらないほうがよい」と言う。

これには反対意見も多いはずだ。1mのパットに自信を持つことができれば、ロングパットは直径2mの円に入れさえすれば2パットで済む。3パットをなくすには、1mを徹底して練習しろというのが定説だ。

これは、アマチュアゴルフのレジェンド・中部銀次郎さんも言っていることだ。私もそれに賛同して、家でもコースの練習グリーンでもショートパットを多く練習している。狭い我が家の練習では、ロングパットを試すスペースがとれないという現実もある。

「もし上達が望みならば、1mのパットばかり練習せよ」(アーネスト・ジョーンズ)という名言もあるし、天才少女ゴルファーと呼ばれたジョイス・ウェザレッドも「1mのパット練習ばかりやったおかげで、負けないゴルフを覚えました」という言葉を残しているから、ショートパットをしっかり練習することは間違いではないはずだ。

では、なぜ田原プロは表題のような言葉を残したのか? それは、「これからラウンドする前の練習グリーンでは」という条件がついていることで、「なるほど」と納得できた。

ショートパットというのは、どんなに練習しても、実戦のグリーンではプロであろうとも外すときは外してしまうものだ。1989年のマスターズではスコット・ホークがわずか60cmを外して優勝を逃したし、2018年のリコーカップではパット名手として名高い鈴木愛プロが18番で1mのパーパットを外してしまい優勝できなかった。

2015年の全米オープンでは最終日最終ホールでダスティン・ジョンソンが601ヤードPar5を2オンし、入れれば優勝の4mのイーグルパットを1mオーバーし、入れればプレーオフのそのショートパットも外してしまった。

ラウンド前は50cmのパット練習で自信をつける

このように、いやこれ以外のテレビに映っていないところも含めると、おそらくすべてのプロがショートパットを外している。もちろん、彼らは普段からショートパットを入念に練習しているに違いない。それでも、外すときは外してしまうのがショートパットなのである。

パッティング名手として長年君臨した杉原輝雄プロでさえ、「確実に入れられる距離は?」と聞かれれば「30cm」と答えると著書の中で白状している。つまり、どんなに普段から練習していても、当てにならないのがショートパットなのだ。

だからといって、ショートパットの練習は無駄と言っているのではない。普段の家錬や、練習でコースへ行ったときなどに、練習グリーンでショートパットを入念に練習することは、自信を深め、入る確率を上げるに違いないからだ。一般ゴルファーよりもプロのほうがショートパットをミスしない確率は格段に高いことを見ても、練習は嘘をつかないとわかる。

しかし、ラウンド直前の朝の練習グリーンでは、ショートパットの練習をしても効果は少なく、むしろ無用の不安を招いたりして逆効果なのではないかというのが、田原プロの持論のようだ。

たしかに、朝の練習グリーンでショートパットを練習すると、家錬でやっている絨毯やパッティングマットとは違い、読めない芝目や目に見えない凸凹などが影響して入らないことがよくあるものだ。そうすると、家錬で作り上げてきた自信がゆらぎ、やはり本物の芝のグリーンは難しいとネガティブな気持ちになりやすい。

それならば、ショートパットはカップインの感触を確認するためだけに、まず外れることのない50cm程度のまっすぐな上りのラインを造作なく3球ぐらい入れて終わりにし、自信を保ったままスタートしたほうがいいのではないだろうか。

よって、ラウンド前の練習グリーンでは、5歩、10歩、15歩といった中・長距離のパットを確実にOKの範囲へ寄せられるよう、距離感をつかむ練習に注力すべきだと田原プロは指導している。

中・長距離パットの距離感をつかむ

その日にラウンドするコースのグリーンがどんな速さなのかは、朝の練習グリーンでしか測れない。速いグリーンなのか遅いグリーンなのか、上りのパットと下りではどれぐらいの差があるのか。これを確認して距離感を合わせておくことで、3パットを防ぎ、その日のスコアに間違いなく効果があるだろう。つまり当てになるし、裏切られることはないのだ。

ショートパットは入れようとして打ち、入らなければ失敗ということになる。これに対し、ミドルパットやロングパットは入れようとして打つことはない。そして、入らなくてもOKの距離に寄れば成功で、ピッタリでなくとも1m程度に寄れば失敗というほどでもない。

つまり失敗はほとんどないので、ラウンド前にみっちり練習すればするほど自信が深まるばかりで、いたずらに不安が広がることもない。スタートへ前向きな気分になれるのではないだろうか。

距離感をつかむ練習は、実はショートパットにもいい効果がある。たとえ1mのパットといえども、微妙に曲がるラインがほとんどで、どちらにも曲がらずまっすぐで上りのラインにつくことはほとんどないものだ。そのラインがイメージどおりに曲がってカップインするには、ちょうどいい距離感で転がすことが重要だからだ。

微妙に曲がるラインのショートパットでは、強めにヒットしてしまうと曲がらずに通過してしまうし、わずかにミスヒットすると弱々しく切れて外れてしまう。やはり、ちょうどいい距離感でスムーズにストロークすることが優先なのである。

こうして練習グリーンでは距離感中心の練習をしてスタートし、コースへ出てからも、やはりパッティングは距離感を合わせてカップに寄せることを最優先にする。それでもすべてはピッタリ寄せられず、1mぐらいのショートパットが何回かは残ることだろう。

そのとき、練習グリーンでショートパットが外れる不安を取り込んでいなければ、「家であれだけ練習して入れてきた距離だから大丈夫」と自信を持って打てることも多いのではないだろうか。

3パットをなかなか克服できず、それが原因でショットにまで影響が出て、いつもスコアを崩しているという自覚がある一般ゴルファーは、ラウンド前の練習グリーンでショートパットの練習を入念にやり、かえって不安を膨らませてしまっていないか振り返ってみてはどうだろうか。

実戦で当てにならないショートパットの練習はスタート前にはせず、中・長距離のパットをしっかり練習して距離感を合わせる。そんな練習グリーンの使い方をするだけで、3パットが減り、納得できるパット数におさまるかもしれない。

参考資料:田原紘『奇蹟のパット』飛鳥新社、1989年

この記事は幻冬舎plusからの転載です。
連載:ゴルフは名言でうまくなる
岡上貞夫

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