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2024.05.03

F1・中嶋悟が角田裕毅に見出した才能とは

ついに開幕したF1日本グランプリ。3回目の母国グランプリに臨むのが、日本人唯一のF1のレギュラードライバー、角田裕毅だ。前戦オーストラリアGPで今季初入賞を果たすなど、世界でもその速さを評価されている日本人だが、F1に辿りつくまでの道のりは決して平坦ではなかった。世界を魅了するF1ドライバー角田裕毅はいかにして誕生したのか。その誕生秘話をホンダF1「第4期」の活動を追ったドキュメンタリー『ホンダF1 復活した最速のDNA』から紹介する。

前回からつづき)

窮地に立たされた角田裕毅を救ったのは、校長の中嶋のひと言だった。

「いつもスクールではゼッケンでしか見ていないんですよ。誰が何に乗っているか知らない状況で評価していましたからね。あの日、ゼッケン○番に乗っているヤツ、けっこう面白いねということを言ったと思うんですけどね」

光るドライビング

予備知識なしで走りだけを見るようにしていた中嶋は、角田のドライビングに光るものを感じた。中嶋の推薦により、角田はホンダのバックアップを受け、2017年にFIA F4にフル参戦する。その第2戦で飾った優勝は、16歳333日の史上最年少記録だった。

2018年シーズンもF4に参戦、7勝を挙げてシリーズチャンピオンに輝いた。

2018年、レッドブルとの提携を機に、ホンダは3人の若手有望株をF3の合同テストに参加させる。そのひとりが角田だった。

角田のタイムは、レッドブルジュニアチームに所属するドライバーを上回り、ヘルムート・マルコの目にとまる。

18歳で渡欧

2019年、18歳でレッドブルジュニアチームに所属することになった角田はヨーロッパに渡りF3に初めて挑戦する。

その年は総合9位(全34人中)でシーズンを終えたが、優勝1回、表彰台3回という成績が評価され、2020年シーズンはF2へのステップアップが決まった。わずか数年の間に、F1の登竜門となるF2まで一気に駆け上がったのである。

2020年シーズンのF2において、角田はトップ争いを繰り広げた。年間ランキングで4位以内に入れば、F1ドライバーへの道が拓けるスーパーライセンスの取得が可能となる。

すでに、2020年11月、アルファタウリのマシンでF1の初テスト走行を行い、その後スーパーライセンス取得に必要なF1マシンによる300キロ走破もクリアしていた。

角田は2020年シーズンの最終戦で勝利を収め、ランキングを3位とした。2位のドライバーとはわずか1ポイント差。トップのミック・シューマッハとの差も15ポイントという僅差での3位だった。角田は、この実績によってF1昇格を手中に収めた。

F2時代から角田を見ていたホンダの山本雅史は、その勝利をこう語る。

「最後の最後に、本当の意味で強さを見せてくれたレースだったと思います」

山本は、角田の強さをこう分析する。

「角田くんは、レースを俯瞰的に見ている。周りがよく見えているんです。これは彼の強みです。だから、他の車と接触しないんですよ。我慢してコーナーに入ると、ぶつかってしまう。だから角田くんはコース外に逃げる。それでも相手が無理に寄せてくるのはペナルティになるから、それも勝負に勝ったことになるんだよと本人には言っているのですが、彼は抜いていないからすごいフラストレーションだと言っていましたけどね」

その角田自身は、自らの強みをこう分析する。

「タイヤをもたせることかなと思います」

角田には、マシンをスムーズに走らせ、タイヤに負担をかけないドライビング技術がある。

実際、2020年シーズンのFIAのルーキー・オブ・ザ・イヤーを日本人で初めて受賞すると同時に、F2のシーズン終了後にピレリタイヤをもっともうまく使用したドライバーに贈られる「ピレリ・トロフィー」を受賞している。

角田は、2021年シーズンからのアルファタウリ・ホンダでのF1デビューを勝ち取った。日本人としては、2014年シーズンを最後にF1を離れた小林可夢偉に続く7年ぶりのF1ドライバー誕生となった。

日本人ドライバー初の快挙

「夢はワールドチャンピオンですけど、究極の野望としては、ハミルトン選手がワールドチャンピオンを取った記録を抜くことです」

角田のF1ドライバーとしての初戦、第1戦のバーレーンGP。角田は、新人らしからぬ度胸とテクニックを見せつけた。

歴代のチャンピオン、セバスチャン・ベッテルやフェルナンド・アロンソを追い抜いての9位入賞。2ポイントを獲得した。日本人F1ドライバーがデビュー戦でポイントを獲得するのは、史上初めてである。

「歴代のチャンピオンを抜いたとき、とくにアロンソ選手とバトルしたときは、振り返ってみるとすごいなと感じました。僕が小さい頃から見てきた選手ですしね。F1に乗っているんだなという実感が湧いてきましたね」

角田の声は誇らしげだった。

この記事は幻冬舎plusからの転載です。
連載:ホンダF1 復活した最速のDNA
NHK取材班

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