放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、「令和ロマン」「エバース」「ヨネダ2000」をはじめ、多くの教え子を輩出した桝本壮志のコラム。

28歳の会社員の方からいただいた、「放送作家の『通る企画書のコツ』があれば教えてください」という質問。
先週は、エンタメ界でもはじまった「AIによる企画書診断」へのアジャスト法など、令和の企画書づくりのマインドセットをご紹介しました。
後編の今週は、いよいよ企画書作成。僕が実践している3つのツボを公開していきたいと思います。
①読み手の「環境」と「感情」を想像する
テレビ局や企業からのオファーで、何度か企画選考員をやらせていただきましたが、大量に送られてくるPDFに目を通すときに、必ず手を焼くことがあります。
それは、「文字が小さくて読みづらい企画書」がたくさんあることです。
企画コンペでは、まずは評価チームが手分けをして読み、目ぼしい作品をセレクトして持ち寄り、2次選考・3次選考と絞り込んでいくことが多い印象です。
ということは、最初の関門は、自宅や通勤中に「スマホで読まれることも多い」ということを知らなくてはなりません。
ちなみに僕は、作成した企画書をスマホに転送し、その画角で読んでもストレスはないか? 評価者の「環境」と「感情」を想像しながらレイアウトしています。


②「1ページ20秒以内」に読めるか?
続いては「本文」。スマホでも読みやすい企画書を心がけていくと、おのずと文字数はコンパクトになります。
それで伝わるのか?と思う方もいるでしょうが、企画書で大切なことは「意図が過不足なく伝わること」なので、意味のない言葉の装飾や、仰々しい表現を手放していけば、端的な文章が可能になります。
あくまでマイルールですが、僕は「1ページを20秒で読めるか?」を心根に置いています。
これは、ハリウッドで行われている「エレベーター・ピッチ」を参考にして取り入れました。
あちらの映画監督や脚本家は、自分の企画を通すために、採択者である大物プロデューサーと一緒にエレベーターに乗り、最上階のフロアに着くまでの「30秒間」で、大枠のストーリーをプレゼンするのだそうです。
このピッチの学びは、「聞き手(読み手)の時間は有限である」ということ。
長々と想いを伝える(書く)のではなく、限られた時間(ページ数)で企画の魅力を伝える努力をする。2時間強の映画が30秒で語れるのですから、「1ページ20秒」はそんなに難しいタスクではないと考えています。
③捨てた「得意」と、取り入れた「苦手」

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。「令和ロマン」をはじめ、教え子は1万人以上。新著『時間と自信を奪う人とは距離を置く』が絶賛発売中! 桝本壮志へのお悩み相談はコチラまで。
以前まで、僕の企画書には強みがありました。幼少期から漫画を描くことが好きだったので、企画イメージを増幅させるイラストを挿し込むことができたのです。(*ちなみに、前出の画像の「PCおじさん」も自作です)
この挿絵は、嵐の初冠番組の企画書を作ったときにも役立った思い出があります。
しかし、その強みはあっさりと捨てました。お気づきの通り、AIが画像を生成する時代になったからです。
企画書の大原則は、質より量。時間をかけて1年に1本しか企画を出さないクリエイターよりも、1年に10本出す人のほうが「やりたい仕事をやれる確率が高くなる」ので、僕は「手間」よりも「生産」を選んだのです。
いっぽう、令和になって磨いた分野もありました。それが「色の学び」です。
それまでは色彩に無頓着で、なんとなく企画書のタイトルや文字を色づけしていました。
しかし、広告会社の知人に、色がおよぼす人の心理と行動を説かれてハッとしました。
「食欲そそるのは暖色系だから、居酒屋のちょうちんは赤色」、「冷静や抑制につながるのは寒色系だから、青いミットの野球のキャッチャーがいる」など、すぐにレイアウトに活かせそうな学びがあるなと感じたのです。
そこから色彩のスキルを磨いていきました。スーパーの商品パッケージ、書店の平積み、駅のポスターを観察し、さまざまな美術館も訪れていますが、まだまだ三流です。
ただし、おぼろげに分かってきたことは、企画コンペの1次選考を通過するには、アイドルのオーディションの「写真選考」のように、ある程度の「ビジュ」が必要だということ。
「色の学び」は、そこに対応していく力になりますし、採用率も上がった実感があるので、よければ頭の片隅に置いてみてください。
2週のお付き合い、ありがとうございました。ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。

