景気低迷による買い控えなどから、「思うようにモノが売れない」と嘆いているビジネスパーソンも多いのではないか。だが不動産の売買や不動産に関する総合コンサルティング事業を展開するツインズ・アセット・マネジメントは、長引く不況やコロナ禍という予期せぬ事態をよそに、業績を順調に伸ばし続けている。モノを売るための極意とは何か。同社代表取締役の森下康幸氏に話を聞いた。
高卒“コムサの店員”がトップの営業マンに
兵庫県西宮市に生まれた森下氏は地元の高校卒業後、2001年に「コムサ・デ・モード」など人気ブランドを抱える大手アパレルメーカーに就職した。業務はショップの販売員。当時、社内には約1万2000人の販売員がいたが、就職1年目からトップクラスの売り上げを記録し、全社で3位の販売成績を残した。
「仕事を続けるうちにアパレル業界で独立したいと思うようになり、会社を辞めて事業の立ち上げに挑みました。でも、お金が回らずに、途中で挫折。すべて起業を甘く見ていた自分の責任です。その後、もっと自分の営業力を高めようと、いろいろなモノを売りました」
’08年から外資系大手ホテルグループにて、海外不動産の会員権を販売。入社4か月目から全期間トップに。’13年には大手不動産にてマンション販売に携わる。ここでも’13年度マンション販売全国トップの成績を打ち出し、本部事業用地取得部門に異動となった。
「東大や京大卒のエリートが集まる部門。高卒の僕がいることに、違和感を覚えましたね(笑)。在職中に副業で開発コンサルタントの仕事も開始。その副業が徐々に大きくなり、’16年に独立しました」
営業成績を上げるためには何が必要か?
アパレルを皮切りに、さまざまなモノを売ってきた森下氏。しかも、そのすべてでトップの営業成績を収めている。モノを売る極意とは何なのだろうか。
「僕が大切にしているのは、『誰にでもできることを、誰にもできないくらいやる』ということです。どんなに小さなことも、一番になるまで徹底してやる。例えば、誰よりも早く出社する。誰よりも大声であいさつする。誰よりも社内や店内を掃除する。誰よりも深くお辞儀する。こうした小さな一番の積み重ねが、大きな一番になると信じています」
セールストークも、誰にも負けないくらい必死で練習した。
「お客様との会話を録音し、ダメなところを洗い出します。早口過ぎるとか、間の取り方が悪いとか。そのダメなところを繰り返し練習。明石家さんまさんをはじめ、トークが上手な人のしゃべり方も研究しました」
顧客の満足度を高めるため、付加価値を加える
’16年に独立し、ツインズ・アセット・マネジメントを設立した森下氏。不動産を売買するだけでなく、不動産の価値を高めるためのコンサルタント事業に力を注いでいる。
「不動産を売りたいと考えている人は、業者に少しでも高く買ってほしいと思うのが素直な気持ちです。私たちも高く買いたいと思いますが、不動産には相場があります。そこで私たちは、不動産の価値を高める方法を模索します。建物のリフォームを行う、大型マンションが建てられるよう隣の土地とまとめて販売するなど、いろんな手段を考えます」
森下氏が手がけた物件の中で、最も印象に残っているというのが神戸市長田区の商店街。この商店街は阪神・淡路大震災で被害を受け、22軒の店が廃屋になったまま放置されていた。
「約220坪の土地が22区画に分割されていたんです。もし土地をまとめて売ることができれば買い手はつくと感じましたが、22区画それぞれに所有者がいるでしょう。それがネックになって、誰も手を出せないんですよ。だから、放置されていたわけです」
だが、森下氏は土地まとめに挑むことを決意。所有者にコンタクトを取り始めた。
「みんな『このままでは未来がない。ひとつの土地にしたほうがいい』と売却を希望した。これは、話がまとまるんじゃないかと希望が湧いてきたんです。結果、22人全員が売却してくれることになり、価値のある土地が生まれました」
コロナで改めて感じた「人と向き合う大切さ」
社会や人の役に立ちたい。成功するためには、その思いが欠かせないと森下氏は話す。
「不動産業者に対して、悪いイメージを持っている人も多いでしょう。実際に、この業界では売買の間に入るだけで、数千万円単位の利益が上がることがあります。それを悪用し、土地転がしの手数料で儲ける悪徳業者がいるのも事実です。でも、僕はそんな不動産業界を変えていきたい。金を稼ぐなら、相応の努力をして儲けるべきだと思います。勉強し、アイデアを出し、一生懸命働いた人に、たくさん稼いでもらいたいんです」
そうした思いから、森下氏は時間を惜しまず、自分の足で歩き回る。人と直接会い、率直に意思を伝える。
「コロナの影響でSNSやビデオ通話アプリの利用者が増加。オンラインでの商談も当たり前のように行われるようになりました。でも、僕はお客様と向き合いたい。直接話を聞かないと、なぜその物件を売りたいのか、その土地にどれだけ愛着があるのかといった本当の心の部分が見えてきません。古い感覚なのかもしれませんが、僕はこれからも労力を惜しまず、お客様の元へ足を運び続けたいと思っています」
節目で購入する腕時計は、己を鼓舞するアイテム
仕事で好成績を残した時の記念として、あるいは独立・起業など勝負時の決意表明として、森下氏は腕時計を購入することにしている。「ブライトリングは初めて購入した高額時計。納得のいく営業成績が出た時に、自分へのご褒美として買いました。オメガは映画『007スペクター』でジェームス・ボンドが着用しているモデル。これはツインズ・アセット・マネジメント創設を決めた時に購入しました。今も初心を忘れないために、実際に使っています」
※掲載内容は2022年6月30日現在の情報となります。
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森下 康幸
出版社名:幻冬舎メディアコンサルティング
発行年月:2022年5月6日
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