連載「ヴィンテージウォッチ再考」の第31回は、カルティエの「タンク バスキュラント LM」を取り上げる。
美しいシルエットが魅力。カルティエの記念碑的モデル
ここ数年、ヴィンテージ界隈では「カルティエが熱い!」という話をよく耳にする。
なかでも再評価の機運が高まっているのが、CPCP(コレクション・プリヴェ・カルティエ・パリ)だ。このコレクションは、カルティエの最上級ラインとして、1998年~2008年の約10年間生産されており、数々の傑作を残している。
CPCPが評価される理由のひとつに、カルティエの歴史的価値があるモデルを再解釈し最高の技術で仕上げた点があるのだが、これはCPCP以外のモデルにも当てはまる。
今回紹介する反転ケースの「タンク バスキュラント LM」(2001年製モデル)は、まさにその好例だ。
ケースを縦に反転させるという珍しい構造を持っており、リューズが12時位置にあることで左右対称の美しいシルエットが生まれているのが大きな特徴。
薄型のケースに収められた手巻き式ムーブメントは、CPCPと同様にフレデリックピゲ社のものを使用している。
ちなみに、横反転ケースの構造を持つジャガー・ルクルトの「レベルソ」に似ているが、これは当時のカルティエがジャガー・ルクルトにケースの製作を依頼していたことに由来する。
「タンク バスキュラント LM」のステンレススチール製モデルは、1990年代後半から復刻が始まり、2006年頃に廃盤となる。1999年、2000年、2001年にはそれぞれ、365本ずつ限定モデルが登場した。
この1本は限定モデルではなく、オフホワイトのギョーシェ彫りのダイヤルなどに見られる手の込んだ作りから、ブティックの別注などの可能性が高いと見られている。
この他にも2000年前後に生産されたカルティエはユニークモデルが多く、気になる人はぜひチェックしてみてほしい。
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■連載「ヴィンテージウォッチ再考」とは
インターネットやSNSの普及からあらゆる時代の時計が簡単に入手できるようになった。そうはいったところで、パーツの整合性や真贋の問題が問われるヴィンテージウォッチの品定めは一筋縄ではいかない。本連載では、ヴィンテージの魅力を再考しながら、さまざまな角度から評価すべきポイントを解説していく。