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2024.05.29

カルティエの時計が年々値上がり続けている! タンク、クラッシュ…注目のレアウォッチ3選

連載「オークションから読む高級時計の行方」の第19回はカルティエの「クラッシュ」「タンク ア ギシェ」「タンク サントレ」を取り上げる。

カルティエの「クラッシュ」

再評価の機運が高まっている

「年々カルティエの時計が値上がり続けている」

これは感度が高いヴィンテージウォッチ専門店、時計コレクターがみな口を揃えて言うことだ。

実際、一昔前なら珍しくなかったPARIS表記の「タンク ルイ カルティエ」の1970年代頃のモデルが、店頭からめっきりと姿を消した。仮に並んでいたとしても、以前の3倍前後の価格が付けられていることも多い。

今注目度が高いのが、カルティエの腕時計において“史上最も奇妙なコレクション”として時計マニアに知られている、1967年にカルティエ ロンドンから発売された「クラッシュ」の復刻モデルだ。

1991年に世界400本限定で復刻したこのモデルは、アーティストのカニエ・ウェストがSNSで紹介したことで人気に火がついた。現在でも定価を遥かに上回る数千万円台のプレミアムな価格で取引されていることからも、その人気ぶりが窺い知れるだろう。

2024年5月にスイス・ジュネーブで開催された時計オークションでも、カルティエの注目度は高かった。3つのレアモデルからその傾向を捉えていこう。

異なるスタイルが際立つカルティエの注目作

 「タンク ア ギシェ」は1928 年に発表。この時計は、まさに時代が生んだ傑作だ。

文字盤の上部にジャンプアワーを備え、 6時位置には分インジケーターを表示。針はなくなり、代わりに時間と分を表す「ギシェ」(絞り)が置かれている。 モデル名は、時間の経過とともに「ジャンプ」する開口部に由来する。 

パリ製 (裏蓋にヨーロッパ時計株式会社フランスの刻印が見られる)、ホワイトゴールドのケースに収められたこの時計は、特にレアなモデルだ。ケースは驚くほど保存状態が良く、ダイヤルの数字も鮮明に見える。落札価格は、40万6400スイスフラン(日本円で約70,200,000円)。

カルティエの「タンク ア ギシェ」
カルティエ「タンク ア ギシェ」(1931年製造)©️PHILLIPS

カルティエが生み出した歴代モデルのなかでも、「クラッシュ」ほどインパクトがあるモデルはない。市場に流通しているモデルのほとんどが1967年のオリジナルではなく、復刻モデルだ。

こちらのホワイトゴールド×サーモンピンクダイヤルのモデルは2022年に発売され、圧倒的な人気を誇る。今回を含め、すでにオークションで3本が出品されている。落札価格は、29万8450スイスフラン(日本円で約51,500,000円)。

カルティエの「クラッシュ」
カルティエ「クラッシュ   Ref. WGCH0037」(2022年製造)©️PHILLIPS

1921年に発表された「タンク サントレ」は、当時のタンクファミリーでは最大かつ最も大胆なバリエーションだった。オリジナルはもとより、ヴィンテージも市場に出ることは滅多にない。

こちらの1970年代の個体をさらに特別なものにしているのは、ほとんど黒に見える濃いインクブルーの文字盤と、ゴールドにペイントされた数字の存在だ。しかもこの時計の前オーナーがWeb時計メディアの先駆けである「ホディンキー」の創設者であるベン・クライマー氏のコレクションという出自も、大きな話題となった。落札価格は、19万6850スイスフラン(日本円で約34,000,000円)

カルティエの「タンク サントレ」
カルティエ「サントレ」(1970年製造)©️PHILLIPS

このように、スタイルや年代を問わず、セカンダリーマーケットでは、カルティエのレアモデルの関心は非常に高まっている。この動きは当面はとまらなさそうだ。

■連載「オークションから読む高級時計の行方」...
新興の富裕層を巻き込み、かつてない白熱した落札が繰り広げられる時計オークション。本連載では、ジャンルは一切問わず、高級時計のトレンドを占う注目の時計をフォーカスする。

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オークションから読む高級時計の行方

インターネットやSNSの普及からあらゆる時代の時計が簡単に入手できるようになった。そうはいったところで、パーツの整合性や真贋の問題が問われるヴィンテージウォッチの品定めは一筋縄ではいかない。本連載では、ヴィンテージの魅力を再考しながら、さまざまな角度から評価すべきポイントを解説していく。

TEXT=戸叶庸之

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