連載「オークションから読む高級時計の行方」の第21回はカルティエの「ラ ペンデュル マグネティック」を取り上げる。
世界で1点のみ。超希少なウォータークロック
時計オークションの世界では、時にとんでもない歴史的価値を持った時計が出品されることがある。
2024年5月、香港でフィリップスが開催した時計オークションで、落札予想価格の200万香港ドル(日本円で約4110万円)をはるかに上回る1497万香港ドル(約3億760万円)で落札されたカルティエのウォータークロック(水時計)が、そのいい例だ。
「ラ ペンデュル マグネティック」と呼ばれるこの手巻き式ウォータークロックは、1929年に1点のみ製造された大変貴重な逸品。
大理石や銀、ラピスラズリ、ネフライト、珊瑚、マザー・オブ・パール、エナメル、翡翠でつくられており、コンパスの元祖とも言われる中国の「指南魚」と同じ原理で作動する。
寸法は、翡翠のボウルの直径が約20cm、キメラを含む時計全体の高さが約18cm、鯉が全長約5cm。 大理石で形づくられた土台の銀製パネルとムーブメントに署名、ボウルの外側の銀製サポートにカルティエの手打ち番号 1934 と「Made in France」の刻印が入っている。また、カルティエオリジナルの化粧箱と手打ち番号の入った鍵も付属する。
1989年6月から8月にかけてヒューストン美術館で開催された「ザ プライベート アイ」での展示、1990年4月、クリスティーズ ニューヨークのオークションで「3つの素晴らしいアールデコ カルティエ クロック」のひとつとして出品されるなど、数々の輝かしい来歴も持っている。
カルティエの歴史的にも重要なこのウォータークロックのオークションは、時計愛好家のみならずアートコレクターも参加しヒートアップ。その結果、1497万香港ドル(約3億760万円)という異例の価格で落札されたのだ。
この結果からも、オークション界隈でのカルティエの関心の高さがうかがえる。今後も驚くようなコレクターズアイテムが登場してくるだろう。
■連載「オークションから読む高級時計の行方」...
新興の富裕層を巻き込み、かつてない白熱した落札が繰り広げられる時計オークション。本連載では、ジャンルは一切問わず、高級時計のトレンドを占う注目の時計をフォーカスする。