連載「オークションから読む高級時計の行方」の第20回はパテックフィリップの「永久カレンダー搭載スプリット秒針クロノグラフ Ref.5004」を取り上げる。
自他とも認める”クロノグラフの巨匠”、パテック フィリップ
パテック フィリップと聞くと、「カラトラバ」や「ノーチラス」を思い浮かべる人が多いかもしれない。しかし、これに勝るとも劣らない定番がある。それはズバリ、クロノグラフだ。
パテック フィリップがクロノグラフで頭角を現したのは、実は懐中時計の時代から。1923年には、腕時計史上初めてスプリット秒針付クロノグラフの開発に成功。同社は1932年に、創業者一族からスターン兄弟に経営権が引き継がれるという大きな転機とともに、クロノグラフでの黄金期を迎える。
パテック フィリップのクロノグラフの代表格といえば、「Ref.1518」から始まった「永久カレンダー搭載クロノグラフ」。この系譜に連なるモデルは流通量が少なく、現在の市場で見かけることは極めて珍しい。
ここでは、現行コレクション「Ref.5204」の前作にあたる「Ref.5004」の「スプリット秒針永久カレンダー搭載クロノグラフ」について、2024年に開催されたフィリップスのオークションから3つの事例を挙げてみる。
圧倒的人気を誇る”ネオ・ヴィンテージ”モデル
このプラチナケース個体は、付属品がほぼ完全に揃ったコレクターズアイテム。程よいバランスの36mm径、クリスタルケースバックからヌーベル レマニア製のムーブメント、「キャリバー CHR 27-70 Q」を鑑賞できるなど、Ref.5004の魅力を存分に堪能できる1本だ。
2024年5月のスイス・ジュネーブの時計オークションにて、30万4800スイスフラン(約5300万円)で落札。
2024年5月のスイス・ジュネーブの時計オークションに出品された「Ref.5004」は、53万3400スイスフラン(日本円で約9200万円)という高額で落札。
ピンクゴールドケース×ブラックダイヤルの組み合わせは珍しく、ダイヤルには大きなアラビア数字が使用されている。
2011年2月25日付のパテック フィリップの原産地証明書が付属していたことも、価格を上昇させた一因だろう。
「Ref.5004」の製造期間は約16年でさまざまなバリエーションが存在する。こちらは特に人気が高い、ブラックダイヤル×ダイヤモンドインデックスのプラチナケースのモデルだ。
2024年5月に香港で開催した時計オークションで、254万0000香港ドル(日本円で約5220万円)で落札された。
今の時代の時計にはない魅力をそなえた「Ref.5004」は、まさに”ネオ・ヴィンテージ”と呼ぶにふさわしい。今後の動向に注目すべきモデルだ。
■連載「オークションから読む高級時計の行方」...
新興の富裕層を巻き込み、かつてない白熱した落札が繰り広げられる時計オークション。本連載では、ジャンルは一切問わず、高級時計のトレンドを占う注目の時計をフォーカスする。