放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、「令和ロマン」「エバース」「ヨネダ2000」をはじめ、多くの教え子を輩出した桝本壮志のコラム。

「W杯中継を見ていると、桝本さんが先日のコラムで書いていた、4年前の『本田解説』の手法とそっくりだと感じました。仕掛人として『パクられた!』とは思わないのですか?」という、ちょっとおもしろい質問をいただきました。
この原稿は、チュニジア戦を終えた時分に書いていますが、たしかに地上波の中継演出は、4年前にABEMAで仕掛けたアイデアが踏襲されています。
本田圭佑さんを中継の顔にしている点、2名がセオリーだった解説者を本田さん一人に絞っている点、ピッチに元代表選手を配置し、フリーにやり取りさせて「本田節」を引き出しやすくしている点など、似ている演出が散見されます。
しかし、僕はまったく「パクられた」とは思っていないし、マネされるということは、前回大会のアイデアが正しかったということなので、むしろ喜んでいます。
そして何より、この“過去作の美点を引用する”という姿勢は、悪手のように見えて、実は“ヒットコンテンツを創るうえで必要な態度”でもあるのです。
一体どういうことか? 今回は「ヒットさせたいなら巨人の肩に乗れ」と題して、ゆっくりシェアしていきましょう。
巨人の肩に乗ったヒット作たち
僕はよく、後輩クリエイターたちに「創りたい作品の前世を探ってみな」と伝えています。
なぜなら、いま私たちが見ている、映画にしろ、食品にしろ、家電にしろ、「すべての新商品は、昔あった商品のラベル違いだから」です。
例えば、大ヒット映画『君の名は。』は、今から74年前に放送された、同タイトルのラジオドラマ『君の名は』にインスパイアされており、男女のすれ違いや、空からの脅威(隕石の飛来と東京大空襲)などの類似点があります。
人気番組『逃走中』は、もちろんオリジナル企画ですが、20年以上前の『鉄腕!DASH』の人気シリーズに、TOKIOが刑事役100人と鬼ごっこ対決をする企画があり、鬼役が黒づくめ&サングラス姿であること、制限時間まで逃走を目指すなどの共通点があります。
これらは世間の言う「パクリ」ではありません。蒸気機関車がなければ新幹線は生まれず、パンがなければハンバーガーも生まれていなかったように、良質な作品や商品には、先人が積み上げた成果を土台にした進化、つまり「巨人の肩に乗ったクリエイション」があるからです。
次回のロス五輪で、『SASUKE』を元にした障害物レースが近代五種の新種目として採用され、喝采を浴びたことは記憶に新しいですが、あの大掛かりなセットや、挑戦者を阻む緻密なカラクリに、『風雲!たけし城』を手掛けてきたTBS独自のノウハウが息づいていることは見落とされがちです。
ゼロからヒットコンテンツを生み出すのは、とてもカッコいい仕事です。しかし、ヒットメーカーと呼ばれている人たちの「高打率」を下支えしているのは、巨人の肩に乗り、巨人に畏怖の念を抱きながらコンテンツを進化させていくクリエイティビティがあると僕は考えています。
ヒットメーカーは「巨人の1パーツ」を替える
「前世を調べてみな」のあと、僕が後輩に伝えているのは「全体の5%を変える発明をしよう」です。
巨人の肩に乗って思考すると、どっしりとした「足腰」があるので、企画の大枠は心配ありません。
しかし、そのままだと「丸パクリ」なので、どこかのパーツを替える、つまり「発明」をしないと新たなヒットは生まれません。
例えば、『君の名は。』には、過去作にはない「別時代の男女が入れ替わる」という発明があり、『逃走中』には、逃走時間が1秒=300円(変動制)で賞金になるという発明、『SASUKE』には、体力自慢の一般人が一夜にしてヒーローになるという発明があります。
それらに共通しているのは、1パーツを替えたアイデアが発光し、全体の印象を変え、過去作をしのぐコンテンツへと昇華しているということ。
そこから見えてくる学びは、一気にメスを入れたり、味変をさせていくことではなく、「全体の5%くらいから変えてみよう」としている小さな態度なのです。
僕は最近、この学びを活かして、1週間で120万回視聴される新番組を創り出すことができました。
そこで得た知見も、また折を見て、皆さんにシェアしていきたいと思います。
では、また来週、別のテーマでお逢いしましょう。

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。「令和ロマン」をはじめ、教え子は1万人以上。新著『時間と自信を奪う人とは距離を置く』が絶賛発売中! 桝本壮志へのお悩み相談はコチラまで。

