驚くほどに美しい時計との出合いは、新しい気付きや発見、思いもよらないアイデアをもたらしてくれるはずだ。そんな“美しい時計”をまとめて紹介! ※2023年8月号掲載記事を再編。【特集 美しい時計】
- ブレゲ、人気パイロットウォッチ「タイプ XX」の新作とは
- 世界限定250本。ウブロの新作「スクエア・バン ウニコ サファイア」
- パテック フィリップ、24時間表示式の「カラトラバ・トラベルタイム」
- 超軽量かつ頑強。リシャール・ミル×ラファエル・ナダルの最新作
- ヴァシュロン・コンスタンタン「トラディショナル トゥールビヨン」の最新グリーンダイヤルモデル
- 世界限定55本、シャネル「J12」の新作ダイヤモンドウォッチ
- IWC、ゴールド×グリーンの最新「パイロット・ウォッチ・ クロノグラフ 41」
- オーデマ ピゲ、スプリットセコンド機構搭載の「ロイヤル オーク コンセプト」
- ハリー・ウィンストン、最高峰のダイヤモンドが輝くムーンフェイズ付き腕時計
- A. ランゲ&ゾーネ、クロノグラフの傑作「ダトグラフ・アップ/ダウン」の最新モデル
- ロレックスの新作「パーペチュアル 1908」希少なスモールセコンドタイプ
- ジャガー・ルクルト「レベルソ」の新作は、スケルトン仕様のクロノグラフ
- パルミジャーニ・フルリエ、2本の分針を持つ「トンダ PF ミニッツ ラトラパンテ」
- わずか6.5㎜! 薄型を極めた「ピアジェ ポロ スケルトン」2023年モデル
- 世界限定50本。グラスヒュッテ・オリジナル「パノインバース・リミテッド・エディション」
- タグ・ホイヤー「カレラ」誕生60周年記念、特別クロノグラフとは
1. ブレゲ、人気パイロットウォッチ「タイプ XX」の新作とは
時計愛好家にとってブレゲは、複雑機構とクラシカルなデザインを得意とする名門。しかし、初代ブレゲの末裔(まつえい)が航空会社を興しており、実はフランス航空史にその名を残す航空機の名門でもある。
そういう関係もあってブレゲは航空計器の製造にも力を入れており、フランス空軍の依頼でパイロットウォッチの開発もスタート。それが1955年から1959年にかけて製造された「タイプ 20」であり、その後に登場した民生品の「タイプ XX」が人々の大きな人気を集めることになる。
2. 世界限定250本。ウブロの新作「スクエア・バン ウニコ サファイア」
高級時計の世界では素材の進化が目覚ましいが、素材の持つ個性を生かしてこれまでになかったデザインや機能が生みだされてきた。その先鞭(せんべん)をつけたのがウブロであり、社内に素材の研究開発部門を立ち上げて、他にはない色や透明感、質感を追求している。
「スクエア・バン ウニコ サファイア」は、ケースをサファイアクリスタルで製作。透明度の極めて高い素材のため、自社ムーブメント「UNICO」の姿をどこからでも見ることができる。
3. パテック フィリップ、24時間表示式の「カラトラバ・トラベルタイム」
“機能美”とは、形状は機能に寄り添うという考え方。あくまでも機能ありきの考え方であり、ともすると簡素になりすぎる。その点パテック フィリップは、機能性と美しさに優劣をつけない。どちらかが突出するのではなく、共存させるのだ。
「カラトラバ・トラベルタイム」は、ローカルタイム針を個別に動かすトラベルタイム機能をベースにしつつ、24時間表示式にすることで昼夜の判読を容易にした。また、この機構を端正なラウンドケースに収めているので、一見ドレスウォッチにしか見えない。
4. 超軽量かつ頑強。リシャール・ミル×ラファエル・ナダルの最新作
これだけ情報過多な時代にあって、未知なるものに出合うことはまれである。ましてや数百年もの歴史がある機械式時計の世界で、未知との遭遇はほぼ不可能だろう、リシャール・ミル以外では。
彼らの作る時計は、素材、機構、技術、構造など多くが未知なるものであり、説明を聞いてもはじめは理解できない。しかし触れていくうちに理解し、このブランドに魅了されていくのだ。
5. ヴァシュロン・コンスタンタン「トラディショナル トゥールビヨン」の最新グリーンダイヤルモデル
“美しい”という言葉は主観的であり、数値化できることではない。しかし時計界には、美しい時計に対する基準というものがある。それが「ジュネーブ・シール」だ。
これはジュネーブ州によって1886年に制定された基準で、パーツの仕上げなどに対して明確な要件を設けることで、“ジュネーブの伝統的な時計の美しさ”とはどういうものであるかを明確にしている(2011年からは、ケースなどの外装も審査対象となっている)。
1755年に創業したジュネーブの盟主ヴァシュロン・コンスタンタンは、このジュネーブ・シールの規格を守り、パーツのひとつひとつまで丁寧に仕上げる。こういった積み重ねで、美しい時計文化を継承しているのだ。
6. 世界限定55本、シャネル「J12」の新作ダイヤモンドウォッチ
ファッション界ではメゾンの多くが、数年おきにクリエイティヴディレクターを替えることで、常に新しい感性を取り入れるようにしている。だがシャネルの場合は、その根本にマドモアゼル・シャネルがつくり上げた哲学があるため、誰がデザインしたとしてもゆるがない一貫した美意識が感じられる。
「J12」は2000年にデビューして以来、基本のスタイルは変わらない。しかし常に創造的な表現をつくりだし、今年は宇宙空間をイメージした“シャネル インターステラー カプセルコレクション”で、「J12」に新しい世界観を与えた。
7. IWC、ゴールド×グリーンの最新「パイロット・ウォッチ・ クロノグラフ 41」
スイス時計が大きく発展したのは、フランスで時計産業に従事していたプロテスタント教徒が、迫害を逃れて隣国スイスに移住してきたことがきっかけ。そのためスイス時計のデザインは、どこか貴族文化の優雅なムードがある。
しかし、IWCはルーツが異なる。アメリカの時計師F.A.ジョーンズは、工業的な時計製造技術をアメリカからスイスに持ちこむ際に、水力発電施設のあるシャフハウゼンを拠点とした。シャフハウゼンはドイツ文化の影響下にあり、ゆえにIWCのデザインはシンプルで過剰な装飾がない。
8. オーデマ ピゲ、スプリットセコンド機構搭載の「ロイヤル オーク コンセプト」
時計の美しさはあらゆるところに現れる。オーデマ ピゲは、特にその立体構造に美しさが際立っている。
1972年に誕生した傑作「ロイヤル オーク」は、薄型ケースでありながら、立体感を引きだすために斜面にポリッシュ仕上げを施し、その面を強調させるために平面にはヘアラインを施した。このメリハリのある輝きが、細部に高級感をもたらすのだ。
9. ハリー・ウィンストン、最高峰のダイヤモンドが輝くムーンフェイズ付き腕時計
ジュエラーズウォッチが、存在感を増している。素材や仕上げ、審美性に対する意識は極めて高く、そこに時計技術を融合させることで専業ブランドとは違った美しさを持つ時計を作っている。
その代表格がハリー・ウィンストン。ニューヨーク発祥のハイジュエラーで、“キング ・オブ・ダイヤモンド”と称される名門だが、スウォッチグループの傘下となり、ジュネーブ近郊のプラン・レ・ワットに時計工場を建設。時計製造のノウハウを吸収しつつも、ハリー・ウィンストンには時計産業の古い伝統に縛られない圧倒的な自由さがある。
10. A. ランゲ&ゾーネ、クロノグラフの傑作「ダトグラフ・アップ/ダウン」の最新モデル
A. ランゲ&ゾーネの美しさの源泉は、その信念にある。新型モデルを開発する際に必ずムーブメントも開発し、既存品を使い回しすることはないため、ケースサイズが変わってもアウトサイズデイトやスモールセコンドが、中途半端な位置に来ることはない。
その均整の取れたダイヤルの素晴らしさは、意識しなければ気づかないかもしれない。しかし、違和感がなく目になじむデザインこそが、ブランドが目指すところなのだ。
11. ロレックスの新作「パーペチュアル 1908」希少なスモールセコンドタイプ
シースルーバック、あるいはトランスパレントケースバックと呼ばれる裏蓋からムーブメントを見せる手法は、この十数年で一気に広まった。本来黒子であったムーブメントにも注目してほしいというブランド側のメッセージは、時計愛好家からも支持されている。
2023年はロレックスもトランスパレントケースバックを、一部のモデルではあるが採用した。「パーペチュアル 1908」のムーブメントは、ロレックス コート・ド・ジュネーブの装飾や機構がよく見えるように開口部を設けたローターなど、見どころは多い。
12. ジャガー・ルクルト「レベルソ」の新作は、スケルトン仕様のクロノグラフ
1931年に誕生したジャガー・ルクルトの「レベルソ」。ポロの衝撃から風防を守るために考案された反転式ケースや、アールデコ様式の繊細なディテールが有名だが、その美しさの源泉はケースの黄金比にある。
黄金比は自然のなかに存在する美しい比率で、古代の建築やインテリア、絵画などにも用いられてきた。この美しいプロポーションに対する考察をまとめた書籍が、1931年に書籍として出版されたことで黄金比という概念が広まった。その法則に沿ってデザインされたレベルソもまた、美しいものの代表として受け入れられるようになった。
13. パルミジャーニ・フルリエ、2本の分針を持つ「トンダ PF ミニッツ ラトラパンテ」
パルミジャーニ・フルリエは、1996年に創業した比較的若いブランドだが、そのルーツは時計師ミシェル・パルミジャーニ氏の工房にあり、数百年も前の希少な時計の修復を通じて学んだ機構やデザイン、仕上げを現代の時計に取り入れている。
ここ数年はデイリーウォッチに力を入れているが、そこに感じるのは削ぎ落とした美学。独自性の高い機構を開発するが、それを声高には主張しない。しかし、見逃すことができない存在感があるのは、機能美とディテールへの強いこだわりがあるからだ。
14. わずか6.5㎜! 薄型を極めた「ピアジェ ポロ スケルトン」2023年モデル
美しい時計の条件として、薄さをあげる場合もある。薄いケースには繊細な雰囲気があるし、ムーブメントが薄ければケースの装飾やジェムセッティング、ダイヤル素材に凝っても必要以上にボリューム感が生まれない。そのためドレスウォッチを得意とするブランドは、こぞって薄型ウォッチを目指す。
その筆頭がピアジェだ。同社は美しい時計を追求し薄型ムーブメントを開発する。それはドレスウォッチにとどまらず、ラグジュアリースポーツウォッチにも波及する。
15. 世界限定50本。グラスヒュッテ・オリジナル「パノインバース・リミテッド・エディション」
ドイツ時計の歴史は複雑だ。F.A.ランゲがグラスヒュッテで時計ブランドを興したのが1845年のこと。その後、この街にいくつかの時計ブランドが生まれたが、冷戦下は東ドイツ政府によって国営化され「グラスヒュッテ時計産業公社(GUB)」となる。
そして東西ドイツが再統一されると、いくつものブランドが再興するなかGUBの資産を受け継いだのが、グラスヒュッテ・オリジナルである。
16. タグ・ホイヤー「カレラ」誕生60周年記念、特別クロノグラフとは
老舗ブランドにとって傑作のアニバーサリーは、歴史に光を当てる特別な存在だ。タグ・ホイヤーといえばモータースポーツとの関係が深いが、その原点といえるのが北中米を舞台とした公道レースにインスピレーションを受け、1963年にデビューした「カレラ」だ。
そして2023年、その誕生60周年を記念したモデルをリリースした。