放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、「令和ロマン」「エバース」「ヨネダ2000」をはじめ、多くの教え子を輩出した桝本壮志のコラム。
「放送作家はトレンドやデジタルに強いイメージがありますが、桝本さんは先日公開されていた本棚など、アナログ好きな印象があります。そういった趣向も企画づくりに活かされているのでしょうか?」という質問をいただきました。
はい、僕はクリエイターとして食べていくために、あえて「生活の20%をアナログにする」感覚で過ごしています。
普段は、サイバーエージェントさんと若者向けコンテンツを創ったり、YouTubeチャンネルを手掛けたり、最新機材を使った音楽番組を立ち上げたりしているので、最新トレンドやデジタルツールの動向に目を凝らしています。
しかし、SNS上にトレンドやデジタルに詳しい人が山ほどいるので、「最新情報に明るい」だけでは良質なクリエイションは生まれません。
そこで、僕が目を向けているのがアナログ。つまり「非デジタル」や「伝統的なモノ」を、あえて日常に取り入れているのです。
一体どういうことなのか? 今週は「デジタル時代にアナログを愛でる理由」をシェアしていきたいと思います。
ヒットを生むには「最新」よりも「再定義」
クリエイター学校の授業で、僕はよく「SNSにトレンドを載せる人ではなく、自分が考えたトレンドを載せてもらう人を目指そう」と伝えています。
例えば、高級バーガーの写真をSNSにアップしている若者はたくさんいますが、彼らは最新情報に明るい「トレンド通」です。
クリエイターが目指すべきは、安価のイメージが強かったバーガー文化に一石を投じ、高級バーガー路線を打ち出した「トレンドの作り手」。
つまり“既存の枠組みを捉え直し、新たな価値観を「再定義する力」を磨いていく”ことがビジネスでは有益なのです。
この再定義する力は「既存を知る・ふれる」ことによってアウトプットが可能になるので、僕は次のような生活の一部をアナログにしています。
▼日用品はAmazonと店舗の半々で買う
→現代の商品陳列、顧客サービス、買い物客の会話が分かる
▼週に一度はGoogleマップを使わずに街を歩く
→見落としがちなアーバンデザイン、街から消えたもの・増えたものが分かる
▼あえて数年前の家電・機種を買う
→例えば、仕事用スマホは古い機種にして、プライベート用の最新機種と使いくらべ、差異を知っていく
▼外国語を対面で学ぶ
→自動翻訳のタイムラグがなくなりつつある現在は、外国語への向学心を保てる最後のチャンスでもあるから
では最後に、もっともクリエイティビティの創出につながっているアナログをご紹介していきましょう。
食事はトレンド飲食店でなく老舗へ
かつての僕は、足しげくSNSで話題になっている飲食店に出かけ、最新グルメを満喫して悦に入っていました。
しかし、人気グルメ番組の演出家に、「昔の味を知ってからじゃねえと最新の良さなんて分からねえって。もっと下町で舌を鍛えろ」と言われ、それとなく老舗めぐりを始めたのです。
古書店で『古地図で巡る100年越えの老舗』なる一冊を入手し、何軒か訪れてみると、ほっぺたと目から鱗が落ちました。

ビジネスではヒットを生み出せても、それを持続・継続させていくことは至難の業。
長く続いているお店には必ず「長く続いている理由」があるので、学びの宝庫だったのです。
例えば、老舗は「家族の仲が良い」のが特徴で、お料理は御主人が作り、御婦人や娘さんが配膳をする。厨房の端で休むことなく手を動かしているのは、この店を継ぐ息子さんだということが会話から分かってくる。
この一枚岩の風景は、チームビルディングのヒントにも役立ちます。
さらに、多くの老舗は伝統の味を守りつつも、安価なランチメニューがあったり、お子さま向けのサイドメニューや季節の水菓子にこだわっていたり、遊び心の利いた器や鉢で目を楽しませたりと、再定義・再解釈にも余念がなく、クリエイティビティを刺激してくれるのです。
気づけば、僕の家には記念に持ち帰らせていただいた「箸袋」が溢れるほど、名店から多くを学ばせていただきました。

少しでも興味がわいた方は、ぜひ生活の一部にアナログ思考を取り入れてみてください。
では、また来週、別のテーマでお逢いしましょう。

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。「令和ロマン」をはじめ、教え子は1万人以上。新著『時間と自信を奪う人とは距離を置く』が絶賛発売中! 桝本壮志へのお悩み相談はコチラまで。

