約5年ぶりに再開した、エイベックス会長松浦勝人による連載。現代を生きる数寄者が語る、社会のこと、仕事のこと、遊びのこととは。【その他の記事はこちら】

他人の炎上は面白い
他人の炎上は面白い。自分が炎上するのは嫌だし、自分の知り合いが炎上しているのは見ていてつらくなるけど、まったく知らない人の炎上は単純に面白い。面白いというのは、別に他人の不幸を見て喜んでいるわけではなくて、本人は少しも悪くないのに「なんでこれで炎上するの?」というものが多く、なんで炎上しているのか、僕の場合だったら炎上するのかとか、いろいろ考えてしまう。
以前は、炎上絡みの投稿なんて落書きぐらいにしか思っていなかったから、あまり気にしてなかった。でも、AIや仮想通貨の事業をやっている知り合いたちが、Xからも有益な情報が拾えるという話をしていて、それでSNSをしっかりと読むようにしてみた。まともな情報も確かにたくさんあるし、どうでもいい情報もたくさんある。
そのどうでもいい情報というのが、「なんで?」という炎上案件。それが面白くて見るようになったら、タイムラインがいつの間にか炎上案件ばかりになってしまった。それでますます炎上絡みの投稿を読むようになる。自分となんの関係もない、他人の炎上だから無責任に面白く読める。
僕は、炎上ばかりしているようなイメージがあるかもしれないけど、深刻な炎上というのは意外に少ない。尾びれをつけて盛りに盛った話を週刊誌に書かれて、それに関連して僕を批判する投稿が増える程度。周りは炎上してる!と慌てるけど、僕には自覚がないんだよね。どこまでが炎上で、どこまでが炎上じゃないのか、僕自身があまりよくわかっていないところがある。
自分よりも、知り合いが炎上していることの方が気になる。先日もある知り合いが炎上していた。法律に触れるわけでもない、常識で考えても別に非難されるようなことでもない、ただ本人に知名度があるから、その人の幸せが面白くないのかなんなのか、批判する投稿が急増した。
その人はほんとうに真面目な人で、そのような投稿にいちいち応じていく。その人の誠実さなんだけど、たぶん、それが反論しているように感じられて、炎上の燃料になってしまい、事態がどんどん悪い方に転がっていく。
心配になってしまって助け船を出そうと思ったけど、すんでのところで思い止まった。僕が割り込んでいくと、それこそ炎上の燃料にしかならない。心配しながら、ただ黙って見ているしかなかった。
SNSに登場する人が小粒
これが10年前だったら、すぐに参戦して一緒になってガチャガチャやっていたと思う。でも今それをやったら、老害だと言われるかもしれない。言われなくても、自分がそう感じてしまう。だから今は一歩引いて眺めるようになっている。
SNSに登場する人が小粒になったように感じているところもあるんだと思う。本当に大粒の人がどうしているかはわからないけど、今のSNSだったら登場したくはないよね。堀江(貴文)さんとか藤田(晋)さんのような、事業でも目立っていてSNSでも目立っているという経営者がいなくなってしまった。SNSをやらない人でも知っている、みたいな経営者が。
先日も若手経営者を集めた会合に出席したら、その若手経営者というのが、みんなこじんまりしている印象を受けた。やっている事業も、世の中をひっくり返してやるという挑戦的なビジネスというよりは、ニッチなところをねらって効率のいいビジネスをやっている人が多い。ビジネスとしてはみな上手くいってるし成功しているんだけど、存在が、何かこじんまりしている。
その場で「なんかさ、みんなこじんまりしちゃって、バーンと突き抜けた人がいないよね」と言ってしまったら、みんな真顔で受け止めていた。バーンと突き抜けた人って、前澤(友作)さん以後、出てきてないよね。目立つ経営者の顔ぶれが、長いこと変わっていない。若い世代は、もっと事業でもSNSでも、暴れてみてもいいんじゃないの?
松浦勝人/Masato Matsuura
1964年生まれ。エイベックス会長、音楽プロデューサー。24歳でエイベックス創業、ユーロビートブームの発信源となる。浜崎あゆみ、TRFなどのプロデュースを手がけた。
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