放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、「令和ロマン」「エバース」「ヨネダ2000」をはじめ、多くの教え子を輩出した桝本壮志のコラム。

「新しい部下にムッとすることが多く、いつか怒りが爆発するのではないか、パワハラをしてしまうのではないかと不安になることがあります。桝本さんは、どのように怒りと向き合っていますか?」という質問をいただきました。
この手の相談は最近とても多く、とくにリーダーポジションの人たちから増えています。
まず押さえておきたいのは、「ムッとする」「怒りがわく」は、人として当然の生理現象だということ。
しかし、WBCのピッチャーが、新ルール「ピッチクロック」に苦戦していたように、世の上司たちは、パワハラやモラハラといった令和のルールに戸惑い、「いつかやってしまうんじゃないか?」と、あらぬ不安を抱えてフォームを崩しているのですね。
僕も吉本NSCの生徒にムッとしたり、職場の後輩にイラっとしたりしたことはあります。
けれど、時代の変化とともに、こと部下(生徒・後輩)には怒りを発動しなくなりました。
そこには、予防歯科ならぬ「予防思考」とでも言うべき、マインドセットがありました。
今回は、僕が実践してきた「怒りをぶつけてしまう前に考えること」をシェアしていきたいと思います。
不安になる人は「いい上司」の予備軍です
まず、相談者さんのように「いつか部下に怒ってしまうんじゃないか?」と不安になっている人は、見込みがある方です。
なぜなら、怒りを抑える最大の力は「恐怖」だからです。
「パワハラになるかも」「仕事を失うかも」といった想像力が働く人は、アクションを起こす前に「怖さ」がストッパーとなり思い留まることができます。
不安になっている人は、無意識のうちに不測の事態を想像し、リスクを回避しようとしている能力者でもあるので安心してください。
ちなみに僕は、頭のなかで「怒りがわいて出てくる泉」をイメージして、その源泉に「恐怖のフィルター」をかけています。
ふつふつとわいてくる「怒り」と「恐怖」をセットにして考えることで、自制しやすくなるように初期設定しているんですね。
芸人は、源泉に「笑いのフィルター」をかけています
僕が、吉本NSC生に最初に伝えてきたのは、「笑い」には「深刻をあしらう力」があるということです。
例えば、失恋や離婚は、誰にとっても深刻な状況ですが、明石家さんまさんは、おでこに「✕印」を書いて笑いをとり、そこから「バツイチ」という言葉が誕生したのは有名な話です。
若手芸人には、生活苦やネタがウケないといった深刻なシチュエーションが訪れますが、それすらも笑いに換えていくのが芸人のあるべき姿であり、「笑いはシリアスな状況をあしらう最良の手法」だと伝えているのです。
芸人さんの間では、こういった思考が浸透しているので、「お笑いにケンカと涙は不要」という格言も広まっています。
なので彼らは、イラっとしたとき、怒りの源泉にある「笑いのフィルター」を通して、「怒る」ではなく「笑える」方向へ舵を切るマインドが身についているのです。
よく芸人さんが怒っているシーンを目にするのは、「キレ芸」と呼ばれる芸の一つ。
「怒る」ことは、あくまで「より大きな笑いをとるため」のテクニックにとどめているのですね。

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。「令和ロマン」をはじめ、教え子は1万人以上。新著『時間と自信を奪う人とは距離を置く』が絶賛発売中! 桝本壮志へのお悩み相談はコチラまで。
源泉には「正義のフィルター」をかけないこと
もともと短気だった僕は、長い間、自分の「怒りの傾向」と向き合ってきました。
そこから見えてきたのは、「自分が許せない」はすぐに怒りがおさまるけど、「世間も許せないはず」は怒りが増幅・持続していくということでした。
例えば、部下があなたに舐めた口のききかたをしたとしましょう。
「オレのことを舐めているな」と捉える人は、自分事の範疇でおさまりますが、「社会を舐めている」と捉える人は、自分のバックに「その他大勢」を味方につけてしまい“正義の雷”を落としてやろうという思考になってしまうのです。
冒頭でふれましたが、「ムッとする」「怒りがわく」は、人として当然の生理現象です。
しかし、怒りの源泉に「正義のフィルター」をかけ過ぎてしまうと、事を荒らげるムーヴになっていくので注意が必要なんですね。
では、また来週、別のテーマでお逢いしましょう。

