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2026.06.07

AI時代がきても「英語」は必須。年収1.5億円を目指すEMBAで見た、日本人の“能力”とは

孫正義氏の右腕としてソフトバンクの数々の一大事業を手がけてきた、英語コーチングスクール「トライズ」社長の三木雄信氏。現在、世界のビジネスエリートが集う「EMBA」で“学び直し”を実践中の三木氏による、世界のスーパーエリート達の脳内がわかる連載11回目。

AI時代がきても「英語」は必須。年収1.5億円を目指すEMBAで見た、日本人の“能力”とは
nus executive mba
ucla-nus executive mba

学費2,300万円のEMBAに自費で参加する日本人の狙い

先週、シンガポールから帰ってきました。私が学ぶUCLA-NUS Executive MBAは、アメリカのUCLAアンダーソンとシンガポールのNUS、二つの大学が共同で運営するエグゼクティブMBA、いわゆるグローバルEMBAです。2025年のQS世界ランキングのうち、二校が共同で学位を出すジョイントプログラム部門で世界2位に選ばれています。

働きながら学ぶ管理職経験者向けの課程で、卒業すると両校の修士号が同時に手に入ります。授業はシンガポール、アメリカ、中国、UAEを移動しながら進みます。今回は私にとって、シンガポールでの2回目のセグメントでした。

EMBAは通常のMBAとは違います。MBAが20代から30代の若手を主な対象にするのに対し、EMBAは10年以上の実務経験を持つ管理職や経営者が集まります。だからこそ、扱うテーマも一段上の視点になります。いち社員としてどう動くかではなく、経営者として、あるいは取締役として企業全体をどう動かすか。その目線で議論が進むのです。

この時期は、ちょうど次の学年が入ってきます。私たちの学年(これを“コホート”と呼びます)の日本人は3人でした。新しい学年には日本人が4人いました。せっかくなのでいろいろと話を聞いてみて、私は驚きました。

このプログラムは非常に高額です。それなのに、彼らはみな自費で来ているのです。会社に派遣されたのではありません。自分のお金で学びに来ている。しかも全員が、その投資を取り返せるという目算をはっきり持っているのです。

なぜでしょうか。それは彼らが、グローバルな給与水準で自分の未来を計算しているからです。

思い返せば、私の同級生たちもそうでした。日本人以外のクラスメイトは、在学中に社内でマネージャーに昇進したり、UCLA側の教授と一緒に起業したり、すでに会社を辞めて次の会社へ移る準備を進めたりしています。彼らにとってEMBAは、年収を一段引き上げるための明確な投資なのです。

正直に言うと、私自身はそういう発想を持っていませんでした。私は自分の事業を拡大する目的で学びに来ています。転職など考えていませんから、次のキャリアパスでいくら給料が上がるか、などと真剣に計算したことがなかったのです。けれども日本人のクラスメイトと話すうちに、彼らもまた世界の給与相場を前提に動いていることが分かってきました。同じ日本人でも、ものさしがまるで違ったのです。

例えば、コーポレートガバナンスの授業を例にとってみても、日本のビジネス教育とは設計思想がまるで違うと感じます。知識の新しさ以前に、何のために学ぶのかという前提が異なるのです。私が肌で感じた5つの違いを、今日はお伝えします。

第1に、扱う事例がとにかく新しいという事実です。コーポレートガバナンスの授業では、取締役の義務をデラウェア州の裁判例を軸に学びます。そこにイーロン・マスクの報酬をめぐる2024年の判決が当たり前のように登場します。日本の教科書が10年前、20年前の事例を使い続けるのとは対照的です。生きた事件で考えるから、頭に残ります。

第2に、「ボードレジュメ」というものを書かされます。これは取締役会向けの自己経歴書です。日本の履歴書とは目的がまるで違います。あなたはどの委員会で価値を出せるのか、どんなリスクを見抜けるのか。企業の意思決定に加わる前提で、自分という人材を一枚にまとめるのです。

第3に、授業にコーチングセッションがついていることです。教授が一方的に教えるのではなく、専門のコーチが一人ひとりの強みと課題を引き出してくれます。私が長年トライズで提供してきた、人に伴走する学びの形が、世界最高峰のEMBAでも採用されている。これは正直、嬉しい発見でした。

第4に、そもそも学ぶ人の立ち位置が違うということです。私のクラスメイトの3分の1は、すでに事業会社やファンドの取締役を務めています。そして多くが、将来は取締役になることを目指しています。日本でMBAというと、転職や昇進のための資格というイメージが強いかもしれません。しかしここでは、企業を監督する側に立つための専門訓練という位置づけなのです。

第5に、EMBAランキングの主要な評価基準の一つが、卒業生の給料がいくら上がったか、という金額そのものだという点です。教育の価値を情緒ではなく数字で証明する。フィナンシャル・タイムズのEMBAランキングは、評価項目の半分を卒業生へのアンケートが占め、その中心が給与の増加額と昇進です。複数の権威あるランキングが、そろって投資対効果を数字で測っているのです。 

では、その数字を見てみましょう。UCLA-NUS EMBAの卒業生は、卒業から3年後に給与が平均で約76パーセント上昇し、その額はおよそUSD 427,500(約6,400万円)に達しています。これは年収です。一方で次の学年の総プログラム費用は、シンガポールの消費税を含めてUSD 153,000(約2,300万円)です。渡航費や宿泊費を加えれば総額はさらに膨らみます。 

それでも自費の日本人クラスメイトが「すぐ取り返せる」と言い切るのは、彼らが外資系企業のマネージャーとして、年収6,400万円アップという相場が現実に存在する世界に身を置いているからでしょう。授業でも、ある教授が私たちに「年収100万ドル(約1億5,000万円)を目指せ」と檄を飛ばしました。 

日本人は世界で戦えるのか?

ここで、私が世界中から集まった優秀な経営者やマネージャーたちと私以外の日本人のクラスメイトを見てみて、心から実感したことをお伝えします。日本人の能力は、まったく見劣りしません。むしろ、勤勉さや細部への配慮、ものごとをやり遂げる力では、世界のトップ層と十分に渡り合えます。足りないものはたった一つ、英語です。

逆に言えば、英語さえ自在に話せれば、日本人はそのまま世界に通用するのです。私は英語コーチングの仕事をしているので宣伝のように聞こえてしまうかもしれませんが、これは商売を抜きにした、一人の日本人としての偽らざる実感です。世界との距離は、あなたが思うほど遠くありません。

今日からできることがあります。一度、海外の求人情報をのぞいてみましょう。同じ職種、同じ経験年数で、世界がいくらの年収を提示しているのかが見えてきます。そのうえで、自分のいまの現状を照らし合わせてみてください。差が大きくても、落ち込むことはありません。その差は、これから埋めていけばいいのです。世界の相場を知ることが、あなたの価値を取り戻す第一歩になります。

トライズ代表取締役社長の三木雄信氏
三木雄信/Takenobu Miki
トライズ代表取締役社長。1972年福岡県生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱地所を経てソフトバンク入社。2000年ソフトバンク社長室長に。多くの重要案件を手がけた後、2015年に英語コーチングスクール「TORAIZ(トライズ)」を開始。日本の英語教育を抜本的に変えるミッションに挑む。

TEXT=三木雄信

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