PERSON

2023.02.19

2018年W杯で一度もピッチに立てなかった【遠藤航】が、4年間で急成長を遂げた理由

ドイツで伝説と呼ばれ、2年連続「デュエル勝利数1位」、遅いタイミングでの海外移籍など「不可能」だと思われたことをことごとく覆してきた、サッカー日本代表・遠藤航。なぜ彼はこれまで不可能だと思ったことを可能にできたのか。正解を作らず【最適解】を探してきたその哲学とは。2022年11月に上梓した『DUEL 世界で勝つために「最適解」を探し続けろ 』より一部抜粋してお届けする。【最適解】最も適した答え。現状から最適と考えられる解答(『大辞林』より)。第5回。#1 #2 #3 #4

プロサッカー選手・遠藤航

目の前のことにフォーカスできているかどうか

オカさん(岡崎慎司)とのライブ配信で、オカさんに言ってもらってうれしかったことがあります。

それが、「言い方は悪いけどポジションすら定まらなかった選手、ピッチにも立てなかった航が2018年からの4年間でブンデスのクラブのキャプテンにまでなった。それだけ急成長できた選手がいるんだから、日本のサッカー界は航が何をしたかもっと知ろうとすべき」。

ずっと日本のサッカー界を支えてきたオカさんが、そういう目で僕を見てくださったことに、自分自身がやってきたことに少し自信が持てるようになりました。

移籍のタイミングで「明確な目標」を持っていたように、僕は自分がこうありたいという目標を定めるとき、細かくステップを逆算していきます。この4年は、そのステップを順調にクリアすることができました。オカさんに「成長した」と言ってもらえた理由はそこにあると思います。

多くの人が「なりたい自分」や「できない課題」に対して悩んだり、もがいたり、ときには諦めてしまったりしていると思います。

では、それを達成できる人とできない人の差は何か。

「目の前のことにフォーカスできているかどうか」

僕はこれがすべてだと思っています。

そのポジションでやり切ることはとても重要です。実は「デュエル」も同じです。ボールを奪いに行くことはリスクと一体ですが、そこで悩んでしまうと多くの場合、うまくいきません。

「ボールを奪いに行く」と決めたときは、「行き切る」「迷わない」ことが求められます。

きっと目標を達成するときも同じだと思います。

どんな未来であれ、結局は「なりたい自分」に続く、「目の前の階段」を一つひとつ上がっていかなければいけません。そのひとつを上がるために、しっかりと準備をし、全力で上りにいけるかどうか。目の前の階段にフォーカスし、上り切れるか。ベースはここにあると思います。

人によっては、「いや、もっと効率的な上り方があるはずだ」と、一段飛ばしで上っていこう、とか、クルマで上ろうと考えるかもしれません。確かに、目の前のことにフォーカスするとは、決して「一歩ずつ」上ることが正解なわけではありません。その発想にはむしろ、共感します。

重要なことは、一段飛ばしや、クルマで上っていこうとしたときに、「知らない階段」──飛ばしてしまった経験していないステップ──を作らないことです。

もし「知らない階段」を残したまま、目標の階段を上っていると、「上るのが困難な階段」が現れたときに、その「上り方」がわからなくなってしまう。

もしかすると「知らない階段」には、その「上り方」のヒントがあったかもしれないですし、例えば「ガソリンスタンド」があったかもしれません。

ですから、「目の前の階段にフォーカス」する必要がある。

そのために、まずは一歩一歩しっかりと自分の足で上っていくことが大事になると思っています。一段飛ばしをしたり、車で一気に上ろうとするときは、飛ばした「階段」に何があるかを知ったうえで、速度を上げていく。

この「知る」ことこそが、「目の前のことにフォーカスする」ことです。

目の前の階段の上り方、道、プロセスに正解はないと思います。どんな方法で上り詰めても僕はいいと思います。

事実として僕は、「ほかのサッカー選手がこう上っているから」と言ったことに対して、いい意味で無頓着に、自分が「この道、この方法がいいんじゃないか」と考え、学んだことを生かしながら進んできたつもりです。

そうやって「目の前のことにフォーカス」していった結果、ときに「あ、このステップは知っているから飛ばせる」といった具合に、上るスピードを加速させられる。

サッカーでいえば、優勝が目標だとしても、そこばかりを見ず、まずは目の前の一試合の勝利にフォーカスする。目の前の試合に勝つには球際にフォーカスする。球際で勝つためにはトレーニングや日ごろの準備にフォーカスする……。

試合結果や球際での勝率は、高めることはできてもコントロールすることまではできません。そうであれば、自分でコントロールできることをすべきで、それはいつだって「目の前のことにフォーカス」することで実現されるはずなのです。

プロサッカー選手・遠藤航の書籍『DUEL 世界で勝つために「最適解」を探し続けろ 』

『DUEL 世界で勝つために「最適解」を探し続けろ 』
¥1,650/日本ビジネスプレス
4年前のワールドカップで「1分」も試合に出ることができずロシアを去った男は、たった4年間で日本代表に欠かせない、そしてドイツでナンバー1の男へと大成長を遂げた。果たしてそこにあった秘密とは? なぜ遠藤航はこれまで不可能だと思ったことを可能にできたのか。正解を作らず「最適解」を探してきたその哲学と、遠藤が選び、決断したことを赤裸々に告白する。

遠藤航/Wataru Endo
1993年2月9日神奈川県生まれ。中学3年時に湘南ベルマーレユースからオファーを受け、神奈川県立金井高校進学と同時に湘南ベルマーレユースに入団。2010年、湘南ベルマーレに2種登録選手として登録され、Jリーグデビューを果たすと2011年よりトップチームに昇格。主力選手として活躍し、19歳でキャプテンも務める。2015年に浦和レッズに完全移籍。2017年にはAFCチャンピオンズリーグで優勝し、初の国際タイトルを獲得した。また、2015年には日本代表に初選出され、2018年のロシアワールドカップでメンバー入り。同年ベルギーのシント=トロイデンVVへ完全移籍。2019年8月にVfBシュツットガルトへ期限付き移籍。主軸として1部昇格に貢献、2020年4月に完全移籍となる。20-21、21-22シーズンと連続でブンデスリーガ1位のデュエル勝利数を記録。21-22シーズンからはキャプテンを務めるなどチームの中心として活躍。日本代表としても不動のボランチとしてカタールワールドカップアジア最終予選を戦った。日本代表は44試合に出場、2得点。ブンデス1部は75試合8得点(2022年10月8日現在)。
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TEXT=ゲーテ編集部

PHOTOGRAPH=アフロ

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