2022年11月に開幕を控えるカタールW杯。ドイツ、スペインという優勝経験国と同組になった日本は、グループリーグ突破が困難と目されている。そんな中、中心選手である遠藤はこの現状をどう感じているのか。日本代表MF・遠藤航が行ったトークイベントで語った「あるエピソード」からその胸中を探った。
「Jリーグでプレーしていた頃であればシンプルに“終わったな”と思っていた」
2022年6月18日、日本代表MFの遠藤航が、コンテンツメディア「SYNCHRONOUS(シンクロナス)で配信する「月刊・遠藤航」のトークイベントを開催。100人のファンを前に、先日行われたブラジル戦やチュニジア戦の振り返りなど、日本代表への分析を独自に行った。
その中で日本サッカー協会が運営するYouTubeチャンネル「JFATV」による鎌田大地との対談動画「Team Cam 特別編|ワールドカップを語ろう|遠藤航×鎌田大地」の裏話を語っている。
「“オワタ”って(動画内で)出てないですよね? 秘話というほどじゃないんですけど、単純に結構面白かった」
と、動画でカットされた内容に言及。
カタールW杯の組み合わせがドイツ、スペインと同組に決まった際、遠藤と鎌田はブンデスリーガやヨーロッパリーグで両国の選手たちと対戦経験があることから「名前はすごいなと思うけど、そんなに嫌だなという感じはしない」と振り返ったが、もしその経験がない状態で、組み合わせを見たらどう思ったのか、とふたりで想像したという。
「組み合わせがドイツ、スペインとなったときに、僕らは『ブンデスで対戦している選手もいるからなんとか大丈夫でしょ』みたいな感じで話していて。でも、もし僕らがJリーグでプレーしていたらどんな感じのリアクションになっただろうって話していて、……2人で“オワタ”という言葉のタイミングが被ったというだけの話なんですけど」
まったく同じリアクション、同じタイミングに思わず2人で爆笑したという。
ロシアワールドカップで選出された際は、浦和レッズにいた遠藤。
「4年前と同じ状況で組み合わせを見ていたら、この感覚は生まれなかったと思う」と組み合わせ抽選会をみていたときの心境を振り返る。
「中継で(抽選会を)見ていて、ここに入ってほしいなと思って見ていた。戦うなら強いところと戦いたかったし、チャンスはあると思っている」
同じくブンデスリーガのフランクフルトでプレーする鎌田は、第7節でリーグ王者のバイエルンにアウェイで2−1と勝利。ヨーロッパリーグではベティスやバルセロナ、ウェストハムなど強豪クラブを退け、決勝ではレンジャーズをPK戦の末に破り、クラブ初のヨーロッパタイトルをもたらした。
遠藤が所属するシュツットガルトは、最終節まで残留争いを演じるほど苦しんだが、キャプテンとしてチームを牽引。第33節でアウェイのバイエルン戦で2−2と引き分け、最終節・FCケルン戦では後半アディショナルタイム2分に決勝ゴールを自ら叩き込み、クラブを残留に導いた。
「リアクションが被るくらい『ブンデスやヨーロッパでプレーしているのと、国内でプレーしているのとでは違うよね』という話なんですけど。Jリーグでプレーしていたときと、その点で成長はできたのかな、と」
これまで日本代表はW杯に7度出場して、これほど厳しいグループに入ったことはない。日本のファンも同じように“終わった”と感じている人は多いかもしれない。でも、ピッチで戦う選手たちは決してそうは思っていない。
ひとつの違いが、ヨーロッパでプレーする選手の数。つまり、日常的な経験だ。これまでもっともヨーロッパのリーグに在籍している選手が選ばれた大会がロシアワールドカップで23人中15人(ブラジル大会は12人、南ア大会が4人、ドイツが6人※選出時のクラブ)。
しかし直近の日本代表は、28人が招集され22人がヨーロッパでプレーする。対戦するドイツやスペインの選手とマッチアップしてきた選手も多い。
確かに先日のブラジル戦では力の差を感じたかもしれない。しかし、今やほとんどの選手がヨーロッパでプレーする日本代表にとって、ドイツやスペインの選手は遠い存在ではなく、同じ舞台で戦って知っている相手、現実的に勝点を奪える相手として見ているのだ。
多くの選手がヨーロッパでプレーすることで、遠藤や鎌田をはじめ、日本の選手全体の強豪国に対するメンタリティやスタンダードの水準は間違いなく上がっている。そんな森保ジャパンが、カタール W杯のグループリーグでどう立ち向かうのか。今から楽しみである。
「月刊・遠藤航」
遠藤航が自身の試合についてボードを使って振り返るPICKUPMATCHや、トレーナー、チームメイト、恩師などと対談をし、サッカーの魅力を語るコンテンツ。毎週更新。