93歳の現役最高齢トライアスリート・稲田弘さんと和田秀樹氏の対談記事をまとめてお届け! ※2026年6月掲載記事を再編。

1.70歳でデビュー。93歳現役最高齢トライアスリート、元気の秘訣は太もも!?

和田 いきなりですが、やっぱり大腿四頭筋(だいたいしとうきん)がすごいですね。
稲田 あー、わかりますか。
和田 大腿四頭筋、いわゆる太ももは身体の中で一番大きな筋肉なんです。言い方を変えると、糖を一番消費してくれる筋肉です。だから歩かないと、糖が余って糖尿病になってしまう。
稲田 さすがお医者さんですね。
和田 いや、これは実感なんです。僕は50代半ばまで歩かない生活をしてたので、見事に糖尿病になっちゃった。
稲田 そうでしたか。今は?
和田 今は一日30分ぐらいの散歩とスクワットはしています。おかげで血糖値は半分ぐらいになりました。
稲田 すごいですね。
和田 元が高すぎるから。600くらいありましたからね。
稲田 それもすごい(笑)。
和田 脚の筋肉を鍛えておく大切さは、年をとるほど痛感します。歩けなくなる予防にもなるし、血糖値も下げてくれる。お年寄りが元気かどうかは、太ももを見ればだいたいわかります。
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和田 対談の1回目で「スイム&ラン」の大会にたまたま出て、なんとなく完走しちゃったとお聞きしました。自転車はどのタイミングで始めたんですか?
稲田 それもなんとなくでね。
和田 え、そうなんですか。
稲田 スイム&ランの大会に毎年出るようになったんですけど、会場に自転車で来る人が多かったんですよ。トライアスロンをやってる人は近県から自転車で来る。それがいたくカッコよくて。俺もしてみたいと憧れてね。で、69歳のときに買っちゃったんですよ(笑)。いわゆるロードバイクってやつです。
和田 やっぱり行動力がすごいですね。やりたいと思ったら躊躇せずに動く。これも若さの秘訣だと思います。
稲田 風を切って走るのが気持ちよくてね。それで一生懸命に練習して。で、たまたま近くでトライアスロンの大会があったので出てみたんです。結果はビリから3番目だったんですけどね。でも一応完走できたんですよ。
和田 すごいですよね。トライアスロンって、どれくらいの距離を走るんですか。
稲田 スタンダードなものは、スイム1.5km、バイク40km、ラン10kmの合計51.5kmです。
和田 (笑)。すごい。70歳で始める競技じゃないですよね。
稲田 そのときは69歳。
和田 (笑)。
3.74歳で二刀流、85歳でアイアンマン優勝…骨折もすぐ治る脅威の93歳

和田 定年前まではお付き合いはあるけど、会社を辞めると一気に減ってしまう、というのが一般的です。ところが人生は、定年後も長く続くんですよ。60代70代で新しく友達をつくっても全然問題ない。というか、そっちのほうが長続きするんですよね。
稲田 そうですね。その点、僕は恵まれていたんでしょうね。60歳のときに定年で仕事を辞めて、70歳で女房は死んじゃったけど、トライアスロンを始めて新しい仲間もできた。おまけにね、74歳のときにはNHKから声を掛けてもらって、再び働き始めたんです。
和田 それはすごい。
稲田 正規の職員ではなく嘱託ですけど。国際放送局、いわゆるラジオジャパンというところで、ラジオの国際放送でニュースを担当してくれと言われまして。
和田 国際放送のニュース。
稲田 はい。以前は記者だったのでニュースづくりは片手間でやる仕事でしたが、そのときの仲間がね。プロデューサーの人から番組づくりに関わってほしいと声をかけられたんです。
和田 トライアスロンと仕事の二刀流ですね。
稲田 そうなんです。仕事を再開した当初は毎日出勤してフルタイムで働いたんです。でもトライアスロンもやりたいでしょ。だからだんだん日数を減らしてもらってね。それでも国際放送の仕事は一応、85歳まで続けました。
和田 すごいですね。
稲田 85歳のときにはアイアンマンで優勝もしました。
和田 アイアンマン。ハードなレースですよね。
稲田 はい。トライアスロンの一種なんですけど、水泳3.8㎞、バイク180.2㎞、ラン42.195㎞の合計226㎞のレースです。そのアイアンマンの年齢枠で世界チャンピオンになりまして。
和田 すごいとしか(笑)。
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稲田 最近、本当に体にガタがきているのを感じるようになってね。運動能力もそうだけど、筋肉や骨もガタガタになっているのがわかるんです。例えばランでも、同じ量を走るのがだんだんきつくなってくる。すぐに息が上がって心肺機能が落ちてるなと。そういう現象があるからね。
和田 さすがですね。ご自分の体のことをよくわかっておられる。
稲田 90代になって3年目ですが、運動量は80代のときと比べて結構減っている。だけど食べる量は変わらないから、腹が少し出てきて。こんなの初めてですよ。
和田 見た目、筋骨隆々だけど。
稲田 (笑)。体重が増えてくると、足に負担かかるでしょ。だから余計走りにくくなってる。しかも膝をちょっと痛めてましてね。いろんな悪循環が起こってきちゃって、弱っちゃいますよ。
和田 だけど、ちゃんと食べ続けられるのはやっぱりすごいです。年を取ると代謝は落ちるので、同じ量を食べ続ければ、太ってくるのは当然です。普通は消化・吸収も悪くなり胃も小さくなるので、だんだん食が細り、痩せてくる。稲田さんはその逆。無理して食べるのはお勧めしませんが、食べられるなら、食べたほうがいいです。
稲田 僕は若いころから大食漢でね。高校1年のときには大食い選手権に出たこともあるほどです。2位でしたけどね。
和田 そうなんですか(笑)。
稲田 今でも出されたものはみんな食べちゃう。戦中派ですからね、食べ物は絶対に残さない。必死になって食うわけですよ。もちろん若いときより食べる量は減ってるけど、年齢からすれば食べ過ぎでしょうね。
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和田 今日、稲田さんのお話を聞いて、やっぱり運動と栄養が長寿の秘訣だと再確認できました。
稲田 だけど先生、僕は運動を年齢の割にやりすぎてると思うんです。どうなんですか。
和田 そこはわからないんです。やりすぎて関節を痛めるお年寄りもいるし、稲田さんのように大丈夫な方もいる。全ての人に当てはまる法則はないんです。稲田さんは元々体が強いのかもしれませんね。ただ、結果論から言うと運動を続けてきたから今の筋肉があることは間違いない。筋肉年齢は40~50代を維持しているはず。そうじゃないと、トライアスロンはできないはずだから。
和田 年を取れば誰だって衰えます。稲田さんのような超人も例外ではありません。そこで大事なのは、衰えるのはしょうがないとして、いかに最小限に留めるか。基本的に老化予防って、今日できることが明日もできることなんですよ。
稲田 ああ、わかります。僕もできるだけ衰えを食い止めて、現状維持をしたい。そのためにはどうすればいいかを日々考えてます。トレーニング中もずっと考えてるわけですよ。
和田 素晴らしいです。
稲田 ここの筋肉が弱ってると感じたら、どうすれば鍛えられるかと考える。今使ってる筋肉とか骨とかをずっと考えてるわけですよ。おかしな話だけどね。
和田 そうやって考えたり気づいたりしたことは、ノートなどに記録したりするんですか。
稲田 はい。どんどんメモをします。人から聞いていいなとか、必要だなと思うこともね。
和田 さすがです。失礼ながら、ご高齢の方は忘れやすくなるのでメモはやっぱり大事だと思います。「忘れちゃった」で終わらず次の行動につながりますからね。それも長寿の秘訣でしょうね。
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和田 トライアスロンは過酷じゃないですか。それを続けられる稲田さんのモチベーションは、どこから来るんですか。
稲田 まず楽しくなきゃやらないですよね。じゃあ何が楽しいのかと言うと……。昔はとにかくやることが楽しかったんです。だけど今はそれ以上に、多くの人の応援がモチベーションになっています。応援してくれる人がものすごく多くなって、それに応えたいという気持ちね。それが強い。
和田 素晴らしいです。結局、応援されるのは、何かにチャレンジしている人ですよね。その応援がハリになって、次のチャレンジができるわけです。だけど多くの人は、年を取るほどチャレンジしなくなってしまう。すると応援もしてもらえないし気持ちのハリもなくなる。ちょっと気の毒な言い方だけど、それが事実だと思うんです。
稲田 そうかもしれませんね。
和田 チャレンジは何でもいいんですよ。スポーツじゃなくても。小説書き始めるとか、新しい仕事をするとか。「応援なんていらない」と思うかもしれないけど、まったくく応援されなかったら、人間はハリが出ないから。
稲田 わかります。僕はアイアンマンというハワイ島のコナでやる大会に何度も出たんですけど。ゴールできたのは応援の力が大きいと思ってます。

