大学進学後、とあるきっかけからアナウンサーの道に進み、順調にキャリアをスタートさせた岩田絵里奈さん。入社4年目、『スッキリ』のMCに抜擢された一方、SNSの心ないコメントに追い詰められ、心療内科を受診するまでになった。そこから岩田さんは、何を学び、どう自分を立て直していったのか。#1/#2

1年間猛勉強し、現役で慶應義塾大学に合格
現役で慶應義塾大学に合格、進学した。
「仲の良かった友だちを含め、周囲がだんだん受験モードになって、『私もやらなきゃ』と、ギアが入ったんですよね。ゼロからのスタートなので、人の何倍もやらないと現役で合格できないだろうなと覚悟を決め、高校3年の1年間は頑張りました」
勉強の習慣はなかったものの、ゴールから逆算してスケジュールを立て、それを効率的に実行するのは得意だった。「このテキストは本番までに5周やろう」と決めたら、1日にこなす分量を計算するだけでなく、記憶を定着させるにはどのタイミングで復習すればいいかも考え、予定通りにやり抜く。
高校3年の1年間は、それまでのゆるい生活が嘘だったかのように無我夢中で勉強に取り組んだ。その甲斐あって、見事、慶應義塾大学文学部の合格をつかみ取った。
そして、大学時代にアナウンサーという職業に出会うことになる。
「大学3年になった時に、中高も一緒だった先輩から『絶対アナウンサーに向いていると思う』と言われて。そこで、アナウンサーはニュース原稿を読むだけでなく、ナレーションもやれば、バラエティの進行をしたり、幅が広いことを知ったんです。
災害報道で口にした言葉で誰かの命を救えるかもしれないし、自分の声や発した一言が誰かの笑顔につながるかもしれない。番組を盛り上げる縁の下の力持ち的な要素もあって、すごい仕事だなと、あらためて思いました。それに、アナウンサーに限らず、大人たちが番組をおもしろくしよう、いいものにしようと本気で取り組んでいるテレビ業界そのものにも魅力を感じました」

1995年東京都生まれ。2018年に慶應義塾大学卒業後、日本テレビに入社。『シューイチ』『スッキリ』など看板番組を担当し、2026年4月からフリーアナウンサーに。『世界まる見え!テレビ特捜部』(日本テレビ)に出演中。
「SNSのコメントがすべてになった」25歳、『スッキリ』で自分の未熟さを痛感
大学を卒業した2018年、4人採用されたアナウンサーのひとりとして岩田さんは日本テレビに入社。5ヵ月後の9月には、ビートたけしと所ジョージという二大大御所芸人を擁する人気番組『世界まる見え!テレビ特捜部』に抜擢されるなど、順調なスタートを切った。
その後もキャリアを重ね、2021年春、入社4年目にして、朝の情報番組『スッキリ』のMCに就任。メインMCを務める加藤浩次のもとで2年間濃密な日々を過ごした。
「『スッキリ』は、アナウンサーに求められるスキルが圧倒的に高い番組でした。加藤さんはストレートな方で、台本に載っていないようなデータをポンと聞かれることもありましたし、コメンテーターの方々との議論もハイレベル。
私の前任が(アナウンサーの)水卜麻美さんと(芸人の)近藤春菜さんだったんですが、25歳で経験値が浅い私におふたりの代わりが務まるわけはなくて。自分の技術のなさを痛感し、毎日がいっぱいいっぱいでした」
追い打ちをかけたのは、SNSでの心ないコメントだった。
「新しいアナウンサー、全然ダメ」「前のほうが良かった」「『スッキリ』はもう観ない」。人気番組だっただけに、誹謗中傷の波は大きく、25歳の岩田さんはそれにのみ込まれてしまったのだ。コロナ禍で人との接触が制限され、視聴者と接する機会がなかったことも、岩田さんを追い詰めた。
「生のお声をいただくことがなかったこともあって、SNSのコメントがすべてになってしまったんですよね。しかも、実力不足を認識しているから、ツラいとわかっていながら、自分からコメントを見にいってしまう。
メンタルが限界までいってしまったんです」
傷ついた心を癒やし、励ましてくれたのは、会社の同僚であり、学生時代からの友人たちだった。
ある先輩アナウンサーは、足りない部分を指摘してくれると同時にどうすれば克服できるかアドバイスをくれ、ある先輩はひたすら励ましてくれた。友人たちは、時に一緒に悲しみ、時に叱咤激励するなど、常に岩田さんに寄り添ってくれた。
「ある時、オフィスの窓から下を見たら、たくさんのビルが見えたんですよ。ビル1棟に300人の人が働いているかもと考えたら、この世界にはたくさんの人がいるんだと、当たり前のことに気づいて。
それからですね、SNSのコメントを客観的に受け取れるようになったのは」
SNSでのエゴサーチは今でもしているが、当時とは受け取り方がまったく違うという。
「コメントのなかには参考になるものも多いんですよ。『こういう表現をすると、こんなふうに受け取られるんだ』とか『声のトーンはもっとこうしたほうがいいんだ』って。学びを得られるものは吸収して、多少流せるようになりました。こうなれたのは、1回とことん“食らっちゃった”からこそですね。
『スッキリ』での大変だった日々にも、加藤浩次さんにも今は心から感謝しています。番組に対する向き合い方や準備の仕方、考え方までガラリと変わりました」
自らの弱さも、抱えていた闇も、こちらをまっすぐ見据え、素直な言葉で語ってくれる。初対面の相手であっても、距離感を自然に詰め、懐にすっと入ってしまうのも、岩田さんの魅力だ。次回は、そのコミュニケーション術について話を聞く。

衣装クレジット:ジャケット¥39,600、スカート¥69,300(ともにルル・ウィルビー TEL:03-5739-3423)

